アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝6
〜覆面の警護者〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝6 〜覆面の警護者〜
    〜第1部・第10話 骨董品の威力1〜
    トラガンへの性転換潜入捜査の完了から数日後。今は普段の流れに戻った。女性化を止め、
   今は男性の姿に戻っている。その姿を初めて見たビアリナとデュシアLに絶句されるという
   事があったが・・・。まあこれが本来の姿なのだ、黙認して貰うとしよう。

    そう言えば、驚いた事があった。例の特殊部隊が世界各国で出現し、無差別に襲撃を繰り
   返したのだ。ただハワイでの国家間外交にて、連中への対策が全会一致で賛成可決された。
   これにより奇襲はどうしようもないが、何時何処に攻撃を仕掛けられても問題はないレベル
   まで至っているという。当然両者とも死者は皆無である。

    また正規軍を持たない日本や他の国々では、シークレットサービスや警護者が活躍するしか
   道がない。表立って軍隊を動かす訳にはいかない、これが国家としての限界である。よって
   最近は警護者への物資提供が凄まじい。非常に有難いものだわ。

    単独で軍備を持つ警護者は忌み嫌われる存在だった。戦争屋やテロリストだと扱いを受けて
   いた。その偏見は見直されつつある。今や俺達が切り札的要素になっているのが現状だわな。



ミスターT「骨董品ねぇ・・・。」
    カウンターに座り、紅茶を啜るエリシェ。今し方来訪し、今度の依頼内容を提示してきた。
   その傍らではビアリナが喫茶店の雑務を一気に引き受けてくれている。俺の方は厨房に専念
   できる訳だ。
エリシェ「今度の海上ショーで使う模造品の代物がありまして。それを広島から東京に運輸するのを
     守るのが目的です。」
ビアリナ「広島から東京を海路だと、大体1日程度ですね。」
ミスターT「1日も缶詰か・・・。」
   警護者内でトップクラスの実力を持つ故に依頼が来るのは分かる。しかしその場が大問題だ。
   高所と水は勘弁して欲しいものなのだが・・・。
エリシェ「多分ですが・・・その苦手な部分は払拭されると思いますよ。」
ミスターT「運輸するブツに興味を惹かれる、という事か・・・。何時ぞやのTa152Hとかを
      運ぶんじゃないだろうな。」
エリシェ「フフッ、大きさが更に凄いですけど。」
   意味ありげに微笑む彼女に、変な興味が湧いてくる。第2次大戦時の遺物となれば、それは
   確かに骨董品のレベルである。しかもTa152Hよりもデカいとなると、爆撃機などになる
   可能性もあるが・・・。
ミスターT「・・・広島か、まさかとは思うが・・・。」
エリシェ「まあ楽しみにして下さいませ。」
   広島となれば造船で有名である。第2次大戦時の遺物、しかも日本・・・まさかな・・・。
   そもそも本物レベルまで造船する必要があるのかと思うが・・・。う〜む・・・。

エリシェ「しかし・・・やはり男性の姿の方がお似合いですよ。」
ビアリナ「ですです。初めて拝見させて頂いた時は絶句しました。」
ミスターT「あれから暫くは野郎時に女性の言動が出掛かったんだけどね・・・。」
    実に大問題である。女性化している時なら、野郎の言動があっても様にはなる。しかし元の
   野郎時に女性の言動をしようものなら、変態まっしぐらそのものだ。それが実際に出掛かった
   のだから怖ろしい。この場合だと常に女性化している方が有利なのかも知れないが・・・。
ミスターT「ただ不思議な事に、女性時で培った直感と洞察力は受け継がれるのね。」
エリシェ「ほ・・本当ですか?」
ミスターT「ビアリナにも言ったんだが、女性化していた時の先見性ある目線などが今でも発揮して
      いるよ。直感と洞察力は手前通りで。」
ビアリナ「実際にマスターの女性化する前のお姿を見た事はありませんが、おそらく前よりも活性化
     している感じでしょうか。」
エリシェ「それで体躯のパワーが戻るとなると、正に無双な感じですね。」
   彼女が言う様に、野郎に戻ってからの溢れるパワーには驚いた。前々から思っていたが、女性
   の場合だとパワーが抑えられるのは確かだったようだ。その代わりに直感と洞察力、そして
   女性ならではの先見性溢れる目線が備わる。野郎がパワーなら女性はスピードだろうな。


ミスターT「何度も言うが、本当に女性は偉大だわ。次の世に新しい命を誕生させ育む。野郎なんか
      破壊と混沌しか生み出さない最低のものだしな。」
エリシェ「まあそれは一部に過ぎませんよ。マスターの様に女性の目線を持たれて動かれる方々も
     多いのが実状です。特にマスターは実際に女性化して、女性ならではの力を会得した。
     それが今の礎になっていると思いますので。」
    サンドイッチセットを完成させて手渡した。それに頭を下げて頬張りだす彼女。何度も言う
   ものだが、野郎が罪深き存在である事を本当に痛感させられる。特にそれが思い起こされる
   のはトラガンだろう。所属する殆どの女性陣が野郎から虐待を受けていたという事実だ。
ミスターT「・・・今度トラガンに正式に謝罪しに行くわ。いくら潜入捜査とはいえ、女性化という
      仮の姿で接していたから・・・。」
ビアリナ「ああ、それですか。全く問題ないと思います。ミツキ様が貴方の男性時の写真を何度か
     見せて回っていましたよ。今は今後あるであろう、潜入捜査の礎を築くための修行をして
     いると仰っていましたし。」
ミスターT「はぁ・・・。」
   見事と言うか何と言うか・・・。そう言えば俺がトラガンの女性陣と接していた時、何処と
   なくソワソワしていたのはそのせいか。幾ら外見が女性でも中身が野郎だと知れば、過去に
   トラウマがある彼女達には痛いものだろう。ナツミツキ四天王は実際に対面して慣れた経緯が
   あるだけに、俺の場合は全く別の流れからそれに至っているとも言える。
ビアリナ「それにトラガンでも青髪の鬼神の話は有名ですよ。シルフィア様の直系の弟子たる貴方の
     事も知っていらっしゃいますし。その貴方が盟友と位置付ける四天王の方々です。直ぐに
     打ち解けたのは敬意を以て、もあると思いますので。」
ミスターT「恩師様々だよな・・・。」
エリシェ「逆を考えれば、女性化してまで自分達に関わろうとした。ここに少なからず恩義を抱いて
     いると思います。まあ発案は私でしたけど、実際に行動をされたのは貴方ですし。」
   ギガンテス一族のテクノロジーがあってこその業物だわな。性転換なんか普通できる事では
   ない。衣服により女性の変装もあるが、俺の野郎の体躯からして不可能なものである。先日の
   女性化での関わり合いは、本当に奇跡とも言えるものだったのだろうな。

ミスターT「・・・奇っ怪な跡、奇跡か・・・。」
エリシェ「文字としては奇妙ですけど、言葉としては素晴らしいものですよ。まあ奇跡は自分自身の
     手で引き起こすのも1つの例ですけど。」
ビアリナ「だからこその実力ですよね。警護者としての力も、それ以外での力も。」
    食べ終わった食器を手渡してくるエリシェ。それを洗って棚に戻す。今度はビアリナに同じ
   サンドイッチセットを手渡した。それに同じく頭を下げて頬張りだす。
ミスターT「今後の俺達次第という事だな。」
エリシェ「そうですね。幸いにも私達には超絶的な力もあります。それらを用いてでも、ミツキ様が
     仰っていた誓願に近付ければ幸いですよ。」
ミスターT「世上から悲惨と孤児の二文字を無くす、だな。恩師がそこに回帰しようとしているの
      だから、弟子たる俺も同調せねば失礼極まりないわ。」
   シルフィアも大切な恩師だが、今ではミツキやナツミAも大切な恩師である。彼らが思う誓願
   に少しでも近付けるのに一役買えるなら、俺は何でもする決意だ。


ミスターT「しかし、ナツミYUとシュームがザ・シークレットサービスに至るとはねぇ。」
エリシェ「私やラフィナ様の補佐をして頂いています。」
    トラガン潜入捜査時に代理で動いてくれていたナツミYUとシューム。その毅然とした態度
   や実務能力を買われ、今では三島ジェネカンなどのオブザーバーを担うまでに至っている。
   本来ならシークレットサービスを担いたいと言うが、あの2人だと社長クラスの実力はある。
エリシェ「シューム様は主婦上がりでしたが、ナツミYU様は総合学園の校長を担っていますので。
     それらが役立っている感じでしょうか。」
ビアリナ「学園の運営も企業の運営も、殆ど変わりありませんからね。」
ミスターT「今の学園は弟子のメルアが担っていると言ってたな。」
   警護者の道がなければ、ナツミYUは総合学園校長を担っていただろう。シュームに至っては
   普通の主婦である。本来ならその道が彼女達の安寧なのだろうが、自らを過酷な警護者の道に
   進ませるのも皮肉な話である。
ミスターT「それでも、己が生き様を刻み続ける。男女問わず、その姿勢は貫き通したいものよ。」
エリシェ「愚問です。貴方の生き様が正にそれですよ。それに少なからず惹かれましたし。」
ビアリナ「今の世上はメンタル面の力が左右される。貴方が常日頃から心構えをしている一念は、
     私達の模範となるものですよ。」
ミスターT「ますます頑張らねばの。」
   こうやって共に切磋琢磨できる盟友がいるのは幸せな事だ。だからこそ負けられないのだ。
   道は厳しくとも、彼らとなら必ず乗り越えられるわな。

エリシェ「さて、そろそろ向かいますか。こちらの方は・・・。」
    そう言うと、丁度入店してくる複数の面々。躯屡聖堕チームのメンバーだ。出張時の喫茶店
   の運営は、全て彼らに任せてある。顔馴染みとあって大助かりだわ。
エリシェ「武装は色々と見繕いますので、簡単な身なりで大丈夫ですよ。」
ビアリナ「一応、医療キットっと・・・。」
ミスターT「お前は医者の鏡だわ・・・。」
   雑務道具よりも医療道具を優先する部分に脱帽する。ビアリナの腕は先日のトラガン遠征部隊
   への襲撃事変だ。その時の治療技術は目を見張るものがあった。身内に医療関係の強者がいる
   だけで、これ程安心するものとはな・・・。

    喫茶店の方はメンバーが運営してくれるそうなので、俺達は簡単な道具を持って出発した。
   ただ東京から広島への移動に飛行機を使うとの事・・・。新幹線か車でよかろうに・・・。
   まあ急ぎに近い様なので、今は飛行機で我慢するしかない・・・。

    これ、今度の広島から東京へは船と言ってたな。行きも帰りも地獄とは勘弁して欲しいもの
   だわ・・・。



    数時間後、広島は呉の港に来ている。造船業で盛んな地域だ。何より広島と聞けば、俺の
   世代だと史上初の核攻撃を受けた場しか浮かばない。原爆ドームが最もたるものだ。長崎も
   同じである。

    不思議な事に、先日のハワイはパール・ハーバー。太平洋戦争の始まりの地で依頼を受け、
   後日に太平洋戦争の決着に近い一撃を受けた地にいるとは。ミュティ・シスターズにとって、
   俺達地球人はどう見えるのだろうか・・・。

    しかしながら、今は己が使命を全うするのみだ。それが今を生きる俺自身の生き様である。
   それに俺達には力がある。これらを駆使してでも、世上から悲惨と孤児の二文字を少しでも
   無くせれば幸いだ。


ミスターT「・・・海上ショーって、そう言う事か・・・。」
    開いた口が塞がらない・・・。予想していたものが的中した形になった。Ta152Hの
   話が出て、それに近いものと伺っていた。更には船舶と広島と・・・。

    目の前に鎮座しているのは、旧日本海軍の最強戦艦“大和”そのものだ。実際に現物を見る
   のはこれが初めてだが・・・。と言うか何時建造して何時完成したのか・・・。

エリシェ「実はこれ、宇宙空間で建造したものでして。」
ミスターT「・・・ギガンテス一族のテクノロジーか。」
エリシェ「はい。宇宙空間なら重力の影響は受けません。更にペンダントの効果があれば、建造効率
     は劇的に向上しますので。」
    なるほど、宇宙で建造して地球に運んだ形か。以前ミュティナが言っていた、転送装置を
   使ったのだろう。地球人の技術力では、これだけの超重量の戦艦を短期間で運べる訳がない。
ミスターT「・・・で、何故にこれなんだ・・・。」
エリシェ「以前、大和ミュージアムに実物大モックアップがありましたよね。当時の応用を活かし、
     実際に建造した次第です。ただ建造は前述の宇宙空間でしたが。」
ミスターT「海上ショー・・・海上ショーねぇ・・・。」
   確かに俺の世代や他の世代でも、戦艦大和となれば惹かれない訳がない。それが実物大となる
   なら惹かれるのがオチだ。Ta152Hの時もそうだったが、この変人染みた行動には本当に
   恐れ多いわ・・・。

ビアリナ「そう言えば、ハワイには戦艦ミズーリ号が駐留していますね。数多くの戦火を潜り抜けて
     来た生き証人でも。日本だと横須賀の三笠が唯一の生き残りですが。」
ミスターT「当時の大多数の艦船は撃沈されているからな。多くの乗組員の方々と共に、今も深い
      海の底で眠っている。長門などの一部の戦艦は生き残るも、ビキニ環礁の核実験で沈め
      られているからの。」
エリシェ「海上ショーは一時的ですが、後にこの大和で数多くの艦船が沈む海域に向かおうと思って
     います。今の私達が存在できるのも、当時の先人の方々が戦ってくれたからこそです。
     それは日本もアメリカも他の国々という隔たりは全く関係ありません。全ての英霊方を
     弔えれば幸いです。」
    これがエリシェの本音だったか。第2次大戦で亡くなられた方々を弔う旅路と。しかしその
   旅路の船舶を大和にしたのには合点がいかないが・・・。
エリシェ「多分思われていると思います。それなら超大型豪華客船などでもいいのではないか、と。
     ですがあちらだとデカすぎて目立ち過ぎます。いくら模造品でも戦艦なら防御力は高い
     ですので。」
ミスターT「・・・特殊部隊の連中との交戦を視野に入れているのか。」
エリシェ「この大和は言わば私達の決意の現れです。何処にどう出るか分からない特殊部隊への、
     完全な宣戦布告そのものですから。それに現行兵器でも目立ち過ぎですし、更に武装が
     強力過ぎます。戦艦大和なら仮に本武装したとしても、それは第2次大戦時のものでしか
     ありませんし。脅威とまではならないでしょう。」
   う〜む・・・考えが逸脱している・・・。しかしあの超大型豪華客船だと、確かに目立ち過ぎ
   でありデカすぎる。それに相手が武装勢力となるなら、こちらも武装を維持した方がいい。
   完全なガンシップそのものだろう。

エリシェ「海底では特殊潜水艦が護衛に当たってくれてます。というか大和の船底にドッキング可能
     でもありますが。」
ミスターT「超大型豪華客船の縮図な感じだな。」
エリシェ「別プランではハワイのミズーリ号を用いようかと思いましたが、あちらは列記とした記念
     遺物ですので。」
ミスターT「なるほどねぇ・・・。」
    会話しつつ桟橋から乗船する。文献でしか伺った事がない伝説的戦艦に乗れるとは・・・。
   見える範囲だとほぼ寸分狂いなく再現されている。これを短期間で建造してしまう大財閥の
   力には恐れ入るわ・・・。
ミスターT「ただ本来なら武力に武力で応じるのは、戦乱を助長する最悪のケースだ。それがこの
      レプリカで引き起こされるのは困るが・・・。」
エリシェ「そこは今後の私達の生き様次第です。全ての兵器も扱い手により変わりますし。それに
     警護者専用のガンシップと捉えれば、ほぼ黙認させる事が可能ですよ。」
ビアリナ「確かに。今の世上、警護者の力が絶対的な地位まで登り詰めてますから。押し通す形で
     進む事は可能でしょう。」
ミスターT「押し通す、か・・・。」
   警護者という概念を出すのなら、ほぼ何でも罷り通るのがこの世界。それだけ警護者に掛かる
   期待は大きいという現れだろう。既存の軍隊や国家では担えない行動を全て引き受ける存在。
   傭兵と違う点はそれが大々的に認められたからだ。でなければこの奇想天外な発想を実現する
   事など出来る筈がない。

ミスターT「まあこのレプリカ大和の件は分かった。本題は同艦に乗りつつ、東京まで護衛すると
      いう事だな?」
エリシェ「何事もなければ、ですが。ハワイとトラガンの一件を考えると、何時何処で襲撃を受ける
     か分かりません。最低限の武装で問題ないと述べたのは、この艦の武装を用いれば良いと
     思った次第です。」
ミスターT「レプリカなのに本物仕様という訳だな・・・。」
    怖ろしい話だ。オリジナルの大和と寸分狂いなく創生された同艦は、その全てがオリジナル
   に準拠するレプリカのようである。つまり本当に戦える艦という事だ。日本は先の大戦後に
   最低限の武装しか持たないと決めたのが覆される。まあレプリカ大和自体をガンシップとし、
   警護者専用の戦艦とするなら話は変わるが。う〜む・・・。
エリシェ「全てが片付いたら、この艦はミズーリ号の近場に停泊させようと思います。モニュメント
     としての余生を送れれば幸いです。」
ミスターT「武装云々を除けば、このレプリカ大和を使えば観光地化させる事も可能だしな。」
ビアリナ「ハワイが一大艦船記念館になりますね。」
   今の混沌とした世上に一撃を加えるための要素、か。現存する老中たるミズーリ号ですら敵わ
   ない巨漢の大和だ。観光地としてなら物凄い盛り上がりになる。過去の大戦の戒めとしての
   存在以外ではなく、次の世代へ語り継ぐための存在。それが担えるのなら、新たに誕生した
   レプリカ大和は重要な大役を任される事になるだろう。

ミスターT「分かった。お前の決意とこの戦艦の使命、確かに受け取った。それら全て守り通すのが
      警護者たる俺の役目だ。俺にできる事は限られるが、可能な限り使命は全うしよう。」
エリシェ「ありがとうございます。もちろん貴方だけに押し付ける訳ではありません。今では警護者
     の端くれとなった私です。共に荒波を乗り越えるパートナーとなりますよ。」
    ・・・なるほどな、彼女の本当の狙いはこれだったようだ。出逢ってから約1年が経過し、
   今では絶大な信頼を寄せてくれている。それが何時しか好意へと発展していったのだろう。
   ナツミYUやシュームと同じである。しかしそれは純粋無垢の一念だ。野郎としてはそれに
   応じねば失礼極まりない。

    それに彼女の場合はその両肩に物凄い重圧が掛かっている。三島ジェネカンの全ての支社と
   従業員達、そしてその家族達を養っているのだ。並大抵の心構えでは担えるものではない。
   更には警護者の道にも走り出した。重圧が相当なものなのは言うまでもないわな。

    それでも己の生き様を貫き通す、その姿勢に心から敬意を払いたい。生き様推奨派の俺から
   すれば、可能な限り補佐してあげたいものだ。そのための警護者としての力でもある。生き様
   を明確に示せる人生は本当に素晴らしいものだわ。


    既に出航準備は整っているようで、俺達の乗船が最後の積荷的感じになった。このレプリカ
   大和の処女航海は大々的に広めたようで、桟橋には物凄い見物客が溢れ返っている。俺自身も
   ミリタリー好きの気質もあるため、レプリカであれ伝説の戦艦大和に乗れる事は本当に光栄の
   極みだわ。

    ちなみに驚いたのが、船尾の偵察機の搭載である。従来の仕様なら、零式三座水上偵察機と
   零式水上観測機になる。合計7機らしいが、実際に見たのはプラモデルや文献のみなので詳細
   は不明だ。

    で、レシプロ偵察機がある場所には何と恒例のハリアーUが3機鎮座していた。確かに同機
   なら狭い場所でも難なく離着陸が可能である。ただ第2次大戦時の戦艦に近代的な戦闘機の
   搭載、この様相はどうもパッとしない・・・。

    更に驚いたのが同艦の兵装である。確かミズーリ号も近代兵器を搭載していたと思ったが、
   レプリカ大和にも同様の追加武装が施されている。トマホーク32基・ハープーン16基・
   ファランクス4基との事。また船体装甲・レーダー各種・動力機関なども大幅に超強化されて
   いるようで、オリジナルのスペックを遥かに超える様相になっているとか。

    この手の兵装には疎いのでよく分からないが、確かなのはイージス艦などの現行兵器に引け
   を取らないという事だろう。決め手はアレだな、46cm主砲9門か・・・。

    多くの見物客に見送られ、広島は呉港を出港するレプリカ大和。このまま太平洋へと出て、
   東京に向かうようである。流石は戦艦なだけあり、少々の波では微動だにしない。水が苦手な
   俺でも、あの超大型豪華客船の様にドッシリといられるのは有難いわ・・・。

    中半へと続く。

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