アルティメット エキサイティングファイターズ 外伝6 〜覆面の警護者〜 |
アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝6 〜覆面の警護者〜 〜第1部・第3話 暗殺者に愛の手を2〜 ミスターT「のどかだねぇ・・・。」 ナツミYU「ノホホン気分ね・・・。」 昼食を終えると、再びのどかな雰囲気に戻った。俺を段差の少し奥側に座らせると、そこに 彼女が座ってくる。丁度胸の中に収まる形だ。身体の方は俺の胸に寄り掛かってきている。 ナツミYU「・・・こんなに落ち着いた気分になれたのは、生まれて初めてね。」 ミスターT「掘り返し失礼だが、ご主人とは?」 ナツミYU「若さ故の過ち、な感じかな。でもその瞬間は愛していたのは事実よ。シューム先輩も 全く同じ。だから今もこうして付き合えるの。」 ミスターT「なるほどな。」 恋は盲目・若さは勢い、か。当時の彼女やシュームの状況は分からないが、娘達がいるという 現状は大体察しが付く。ただ純粋に恋路に走っているのは今なのだろう。 ナツミYU「そうね、君が思った通りかもね。今が恋路まっしぐらな感じ。」 ミスターT「心中を読みやがった・・・。」 ナツミYU「あのね、女を甘く見過ぎよ。ナツミAさんが仰っていたように、女の直感と洞察力は 半端じゃないからね。君の心境なんか手に取るように分かるわよ。」 ミスターT「怖いのぉ・・・。」 不貞腐れ気味にぼやく彼女。ただ実に嬉しそうにしているのが何とも言えない。それだけの 思いを抱いてくれている証拠だ。本当に感謝に堪えない。 両手を彼女の腹に回し、背後から優しく抱き付く形にした。すると脱力する様な形で身体を 委ねてくる。この華奢な身体があの動きをするとはとても思えない。 ナツミYU「・・・警護者が家庭やパートナーを持つのを嫌う理由が分かる。」 ミスターT「失うものの痛み、か。または足枷になりかねない。」 ナツミYU「そう。娘達を公にしないのは、巻き込まれたくなかったから。後輩やOBの方にずっと 委せ切りにしてしまっている。母親としては失格よね。」 失うものの痛み。それは単に表す事ができない程のデカい要素だ。これを理解できねば、 本当の痛みを知る人物にはなれん。いや、理解しようとする心か。 ミスターT「さっきの弁当もそうだが、母親としてしっかり動いているそうじゃないか。それを娘達 はしっかり見ていると思うよ。それに殺しじゃなく、人助けを主軸にしている。この 生き様は誇れるものだと思うがね。」 ナツミYU「ありがとう・・・そう言ってくれると嬉しい。」 ミスターT「それにお前は誰なんだ? 伝説の二丁拳銃ガンマン、結城奈津美(ナツミ=ユウキ) じゃないのか? 誰もが畏怖の念を抱く凄腕の警護者。しかも殺しをしない戦術を展開 する様はレジェンドそのものだと思うがね。」 あれだけの動きをしながら、急所を狙わずに沈黙させる技術。完全に常識を逸脱している凄技 としか言い様がない。今までどれだけの努力をしてくれば至るのか。俺でさえまだまだ甘いと 感じるぐらいなのに。 ナツミYU「・・・何か貴方に全てを見透かされている感じがする。」 ミスターT「お前が俺自身に近いからかもね。お前に言っている言葉は、俺自身に言い聞かせている 気がするよ。今でも不安さ、この生き様を貫く部分は。」 彼女の顔に当たらないように一服をする。すると俺の煙草ケースから1本取り、同じく一服 をしだした。何度も思うが、この一服する様は本当に魅力的なワイルドウーマン像である。 ミスターT「不安や恐怖は常に付き纏う。獲物は相手や自分を殺害しかねない凶悪なもの。しかし それらを駆使して生き様を示せるなら、後は努力以外に方法はない。」 ナツミYU「不殺生の道を貫くための技術よね。並々ならぬ業物になってくるけど。」 ミスターT「それも俺が選んだ道だ、後悔はしてないよ。お前も同じ思いだと確信している。」 ナツミYU「そこは愚問よ。でなければ、既にこの道から身を引いているわ。」 一服を終えて力強く語るナツミYU。声色からして、これが心の固さだな。俺の方も一服を 終えると、再び身体を委ねてきた。 ナツミYU「フフッ、ミツキさんの言葉が分かる。今の貴方の言葉は誘導尋問ね。」 ミスターT「まあそんな形だろうな。でもお前のここの決意は知れたから安心したよ。」 右手親指で彼女の両胸の間を優しく叩いた。それに小さく頷いている。心こそ大切に、正しく そう思うわ。どんな生き様であれ、一念が据われば絶対不動のものとなる。これだけが俺が 今までに学んだ集大成的なものである。 ミスターT「今後は今以上に大変になるだろうが、恐れるものなどないわ。」 ナツミYU「皆さんいらっしゃるし、貴方もいるし。」 ミスターT「ハハッ、その意気だ。」 ゆっくりと立ち上がり身体を解す。彼女も起き上がり、同じ様に身体を解しだした。ここに 訪れた時の不安げな雰囲気は全く感じられない。真女性は強いわ・・・。 背面を向いていた彼女をこちらに向け、顔を優しく掴む。それに驚くも、後の展開が読めた ようだ。というか彼女の方から唇を重ねてきたのには驚いたが。この積極性は見事だわ。 長い口付けから解放されると、胸に顔を埋めてくる。こちらも優しく抱き締めてあげた。 少しでも彼女の心の隙間を埋められれば幸いである。 ニューヨークでの依頼の報酬を頂く形になったデート。というか逆デートというのだろう。 来る時と帰る時とでは雲泥の差のナツミYU。この姿を見ると、こちらも嬉しくなる。 一時の安らぎを終えて、地元へと帰路に着いた。今度も彼女ご自慢の弁当を食べたいもので ある。それを述べたら、お安いご用だと言われたが。何とも。 しかしまあ・・・このハイパーカーには驚かされる。ランボルギーニ・ムルシエラゴ自体、 数千万はする超高級車である。フェラーリやポルシェなどもそうだが、こういった車両に乗る 機会は滅多にない。 俺の方はハーレーサイドカーとグローブライナーを持っている。警護者をカモフラージュ するために、長距離トラックの運転手を装う事もあった。それが大型自動車と牽引の免許で ある。ハーレーサイドカーは趣味ではあるが・・・。 俺は武骨な車両の方が性分に合う。ナツミYUの愛車には惹かれるが、実際に運転すると いう勇気はないが・・・。 ミツキ「おかえり〜わぅ!」 喫茶店に戻ると、ミツキに出迎えられた。厨房では相変わらずシュームが格闘している。 出で立ちは正しく肝っ玉母さんそのものだわ。 というかカウンターに座る黒髪の女性が2人。俺達が入店して来たのを見ると、頬笑みを 投げ掛けてくる。雰囲気からしてナツミYUにソックリなのだが、もしかして・・・。 ミスターT「ただいま・・・って、奥の方は誰?」 ナツミYU「私の自慢の娘達よ。」 ミツキ「アサミちゃんにアユミちゃんわぅ。」 ・・・ビックリした。29歳のシュームに10歳のリュリアがいるのは自然的な流れになる のだろう。しかしアサミとアユミはそれ以上の年齢だ。となるとナツミYUの何時の頃の娘達 になるのだろうか・・・。 ナツミYU「・・・年齢の事を知りたいようね。」 ミスターT「うぇ・・・。」 エラい殺気だった表情を浮かべだす彼女。しかし言わねば分からないという事で、淡々と語り だすのは何とも言えない。 アサミとアユミはナツミYUが16歳の時に生まれた双子との事だ。双子の誕生前にご主人 は逝去されている。シュームも同じで、身篭ってからシングルマザーを貫いているようだ。 ちなみに双子は今年18歳との事。 アサミ「初めまして、アサミと申します。」 アユミ「アユミと申します。母が大変お世話になっているそうで。」 ミスターT「ミスターTです。いや、逆にお世話になっている気がしなくはないけどね。」 エラいお淑やかな双子だ。ナツミAに近いという感じか。まあリュリアはミツキに近い。 こうも母親と違う娘達の姿を見ると驚愕するしかないわ。 シューム「時期総合学園の校長候補だそうよ。今は教師に向けて努力中との事。」 ミスターT「この母親ありて、この娘達ありか。」 ナツミA「このギャップが何とも言えないけどね。」 カウンターに座ると、紅茶を手渡してくるナツミA。小さく頭を下げつつ、それを受け取る。 ナツミYUは娘達の近くに座っている。雰囲気自体は物凄く似ているが、気質が全く違うのが 何とも言えない。 ミツキ「うむぬ、雰囲気が一変したわぅね。」 ミスターT「ああ。彼女は俺との鏡合わせな感じだったのかもね。」 ナツミA「自分に問い掛けるように、ですね。」 娘達と雑談をするナツミYUを見つめ、一安心といった形で紅茶を啜る。ミツキもナツミA も彼女が落ち着いた事に安心しているようだ。 ミスターT「俺はむしろシュームの方も気掛かりなんだが。」 シューム「あら、ありがと。でも今は大丈夫よ。ナツミYUは相当苦労して今の姿になったからね。 私は君と同じ孤児院出身だから。」 ミスターT「は?! 俺は孤児院出身なのか?」 シューム「あ、ごめん。前の記憶は失われたのよね。」 詳しい話をしだしたい雰囲気を察知してか、ナツミAが厨房を担当しだす。それに頭を下げて こちらに来るシューム。ウェイトレスは引き続きミツキが担ってくれている。 俺の傍らに座ると、徐に一服するシューム。彼女も喫煙するのか。しかもエラい哀愁がある 姿だ。ナツミYUにはない、大人の女性の雰囲気が色濃く感じる。 シューム「まず、どこから話そうかな。」 ミスターT「俺の幼少の頃を知っている、と取っていいのか?」 シューム「そうね。同じ孤児院出身で、幼い頃は一緒に過ごしていたわ。」 懐かしそうに振り返る彼女。シュームも俺が知らない俺を知っている訳か。しかも幼少の頃 になると、彼女も俺の姉に近いと言える。 シューム「私は15歳頃に孤児院を出たんだけど、君はまだ孤児院に残っていたわ。そこに貴方も ご存知の恩人の方がいらして、君を引き取りたいと言ってきたの。」 ミスターT「・・・シルフィアか。というか凄いわな。俺はその時は14歳だろう。彼女は俺より 2歳年下だ。12歳で引き取ろうと言うのは・・・。」 シューム「フフッ、そうね。でもあの方は9歳で警護者の道に走り出したから。6歳頃には既に学業 も戦闘訓練もマスターできたと言っていたわ。」 ミスターT「6歳・・・。」 開いた口が塞がらない。恩師ことシルフィアがそんな経緯を持っていたとは。というか何処で 俺を知ったのかが気になるが。 シューム「周りは子供だと馬鹿にしていたみたいだけど、それを実力で捻じ伏せていた。名実共に 最強の警護者として名が知れ渡っていった。孤児院の資金提供もあの方がしてくれたとの 事よ。」 ミスターT「そこで俺と会った、と取るのが筋か。」 シューム「そんな感じね。雰囲気からして取っ付き難かった君に、何かを感じたみたい。それからは 色々と面倒を見だしてね。君が14歳の時に引き取ると言ってきたのよ。」 ミスターT「12歳の恩師が、ねぇ・・・。」 う〜む・・・年代がその人物の完成系とは言い切れない証拠か。恩師は既に12歳時で、 大人顔負けの実力を得ていたという事になる。人間としても相当な人物だったようだ。そんな 彼女と俺が出会ったのは幸運としか言い様がない。 シューム「ナツミYUが言ったように、君が警護者になったと伺ったわ。彼女と同じく、この道に 進むとは思ってなかったけど。」 ミスターT「まあねぇ・・・。」 シューム「しかし師弟の理は絶対不滅よね。あの方が目指していた道を、弟子たる君も進み出した。 形はどうあれ、そこに師弟の流れを感じずにはいられなかったし。」 ミスターT「記憶があったのなら、そう断言できたんだけどね。現状だと後から育んだ関係としか 取れないわ。でも記憶は忘れても、それ以外の俺の全てが知っている訳になるだな。」 ナツミYUやシュームとの再会は、恩師シルフィアとの経緯があったからこそだろうな。あの 飛行機事変で記憶を失うも、それ以外の俺自身がこの道を進めと指し示したと断言していい。 本当に不思議な流れである。 ミツキ「シュームちゃんにとっては弟の様な存在わぅね。ナツミYUちゃんからも同じ弟の様な存在 になってるわぅよ。」 ミスターT「そうだな。頼り甲斐がある姉がいて心強いわ。」 本来なら真逆の意味合いになるのだろう。俺が2人の兄的存在で支えねば、という流れに なると思われる。しかし実際の年齢は2人の方が上であり、更に経験も彼女達の方が大きい。 ミツキが言った弟の様な存在とは、正しくその通りとしか言い様がない。 シューム「存在感では君の方が遥かに強者なんだけどね。覆面の警護者の異名は、私達裏稼業の人間 からすれば脅威の何ものでもないんだけど。」 ミスターT「そ・・そうなのか・・・。」 シューム「依頼達成率100%以上、しかも貪欲なまでに不殺生を貫いている。更には飛行機事変で 記憶を犠牲に、数々の強者達の命をも救った。これを伝説と言わないで何と言うのか。 他に言い方があったら教えて欲しいわよ。」 ミツキ「覆面のプレイボーイわぅ!」 シューム「ぶっ・・アッハッハッ!」 警護者という概念からだと、俺の存在は凄まじいのだと述べるシューム。しかしミツキが別の 異名を言うと大爆笑しだした。まあある意味こちらの方が合うのかも知れないが・・・。 ミツキ「Tちゃんは異性にモテモテわぅよ。同性からも兄貴分として慕われているわぅし。」 シューム「まあねぇ〜。」 同性から慕われるのは認めるのだろうが、異性からモテるのには納得がいかないといった 雰囲気の彼女。エラい殺気だった表情で俺を見つめてくる。この女性を曝け出す一面は、流石 のナツミYUも敵わないわな。 シューム「ま、でも私もそのクチだから何も言えないけどね。ナツミYUに負けないぐらい、君を 慕っているのは間違いないわ。そこは肝に銘じておいてね。」 ミスターT「う・・心得ておきます・・・。」 今度はエラい妖艶な表情を浮かべつつ俺を見つめてくる。これもナツミYUには出せない、 女性の色気であろう。むしろナツミYUは純然たる恋路を好むようで、シュームの場合は殆ど 我武者羅に突き進むが似合うか。 ナツミA「マスターも罪な男ですよね。」 ミツキ「プレイボーイわぅからね。」 ミスターT「否定できん・・・。」 姉妹から毎度ながらの茶化しを入れられる。ただ今回は事実が多いので否定ができない。落胆 する俺の姿にシュームは小さく笑っていた。 しかしシュームとは同じ孤児院出身だったのか。まあ孤児院を出たのが記憶を失った時の 15歳の時。それ以前は一緒に過ごしていたのだろうな。 ただ同業者として共闘した事は1回もなかった。それはナツミYUもしかり。つい最近の 迷子騒動時にシュームと、その後のニューヨーク依頼時にナツミYUと再会している。 後付けになるが、2人が言うには陰ながら見守っていたとの事。だが俺の方はその気配を 感じる事はなかったが。アレか、姉が弟を見守る一念と。つまり自然体故に気付かなかったと いうのが正しいか。 ともあれ、今後は2人からのアプローチは激しさを増していくだろう。実際に血の繋がりは ないので、男女間のアプローチにも発展しかねない・・・。う〜む、その猛攻を支えられるか どうか微妙だが・・・何とも。 後半へと続く。 |
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