アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝6
〜覆面の警護者〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝6 〜覆面の警護者〜
    〜第1部・第7話 怒りの一撃3〜
    3日後。全ての準備を終えた現状、後は船に乗り込んで現地に向かうだけである。今回は
   ハリアーU隊の隊員の方も一緒だ。シルフィアの直属の部下とも言えるが、彼女は仲間だと
   言い張っている。

    しかしまあこの船舶は化け物だ。今は東京湾外で待機の通称・超大型豪華客船に向かって
   いる。あまりにも巨大過ぎて港には入り込めないため、小型の船で乗り込む形になる。

    武装は全て貨物船から超大型豪華客船に積み込んだ。この貨物船ですらタンカークラス。
   それをも遥かに凌ぐ巨大さなのだから怖ろしい。ハリアーU郡もクレーンでの搭載である。

ミツキ「実に圧巻わぅ〜♪」
    小型船舶の船首部分に仁王立ちのミツキ。見つめるは先に鎮座する超大型豪華客船である。
   というか彼女、結構揺れる船の上でよくぞまあバランスを保てるものだ・・・。
シルフィア「力強い姿よね。普通この規模だと沈みそうだけど。」
エリシェ「水中には水上の3倍以上の規模の構造物があります。それが言わばフロート代わりに浮力
     を維持している形です。原子力潜水艦も原子力空母も内部に搭載可能ですから。」
   アメリカからトンボ返りしたとあり、物凄い眠そうなエリシェ。ラフィナは時差ボケには非常
   に強いらしく、この場合はエリシェの補佐を買って出ている。
ウエスト「ほぉ〜・・・この規模だと、システム運営はどうなってるんだか。」
サイバー「見てみたいものですよね。」
   滅多に表に出ない四天王は、この現状に非常に湧き上がっている。まるで遠足だ。しかもこの
   4人も姉妹同様、乗り物には滅法強いと言う。本当に心強いものだわ。

ミスターT「だー・・・こえぇ・・・。」
シューム「地上なら無敵なのにねぇ・・・。」
ナツミA「得手不得手ありますからね。」
    小型船舶の壁越しから表を見るも恐怖度が尋常じゃない。この現状でよくぞまあ平然として
   いられるものだ・・・。まあこれは俺だけだろうが・・・。
船員「接船します、少し揺れるのでご注意を。」
ミスターT「早く陸上へ・・・。」
ミツキ「わたが陸上わぅよ!」
ミスターT「はぁ・・・。」
   一際ハシャギまくっているミツキに呆れるしかない。今回はオールスターなため、小型船舶上
   が物凄い事になっている。俺やハリアーU隊の隊員数名以外全員女性という様相だ。それに
   エラい殺気立っているのがナツミYUとシュームである。何ともまあ・・・。

    小型船舶が超大型豪華客船に接船、何とそのまま内部に入っていくではないか。丁度後方に
   ある超大型ハッチからの入船だ。波に揺られていたいたのが嘘のように穏やかになる。

    ちなみにこの小型船舶は超大型豪華客船に搭載船との事。緊急避難用にも用いられるとも。
   これと同じ船が100隻搭載しているそうだ。まあこの規模の船舶なら脱出用の船も多くない
   と意味がない。タイタニックみたいに足りなくなっては大変である。


    超大型豪華客船に乗ってしまえばこちらのもの。その超絶的な船体は超大型の波が来ても
   耐えられる仕様らしく、ちょっとやそっとの波では全くの不動である。これはこれで有難い。

    そう言えば今回はナツミYUの娘アサミとアユミ、シュームの娘リュリアも一緒である。
   本来なら一緒にはさせたくなかったみたいだが、留守番も忍びないという事で連れてきた。
   完全に非戦闘員なので、守る存在が多くなり厳しくなりそうだが・・・。



リュリア「ひろ〜い!」
ミツキ「うぇ〜い! 2回目わぅね!」
    エラいおおはしゃぎのリュリア。ミツキは何時もの事だから問題ないが、リュリアの喜ぶ
   姿を初めて見るわ。アサミとアユミもエラい喜んでいる。何時もは留守番が当たり前なだけに
   新鮮なものなのだろうな。
ミスターT「はぁ・・・一段落だわ・・・。」
シルフィア「こちらの方が戦々恐々だったわよ。」
エリシェ「本当ですね。」
   船だろうが飛行機だろうが、地面が安定している場所なら全く問題ない。そして高々度や水に
   関するもの自体が見えない限り、こちらも全く問題ない。本当に安らぎの一時だわ。

    その中でフラフラなエリシェ。時差ボケで眠気が凄まじいようで、今にも倒れそうである。
   その彼女を呼び寄せ、お姫様抱っこをしてあげた。当然ながら物凄い慌てている。

エリシェ「あ・・あの・・・。」
ミスターT「小切手の礼がまだだったからの。それのホンのお返しさ。」
エリシェ「あ・・はい、すみません・・・。お言葉に甘えさせて頂きます・・・。」
    最初はシドロモドロの彼女も、その心地良さからか直ぐに寝てしまう。推測するに、相当
   眠たかったみたいだ。その彼女に着用していたガウンを被せるシューム。
シューム「見事な采配ね、この場合は君の肩を持つわ。」
ナツミYU「相当眠そうでしたからね。」
   本来なら相当なヤジを飛ばすであろうシュームとナツミYU。しかしエリシェの現状には同意
   できるようで、今は俺の肩を持ってくれた。
ミスターT「この小さな身体に、会社に携わる世界中の人の命が掛かっているんだよな。本当によく
      頑張っているよ。」
ラフィナ「エリシェ様はマスターと同じく、我が身を省みず動く癖がありますので。今回の作戦の
     念入りな準備を寝ずに行っていましたし。」
ナッツ「縁の下の力持ちを労え、ですな。俺達の工場の運営費も、今ではお嬢の力で賄っているとも
    言えますし。」
エンルイ「あ、部屋はどちらで? 先回りして待機していますよ。」
ラフィナ「あ、はい。こちらです。」
   ラフィナ先導の元、ナツミツキ四天王が裏方に動き出す。彼らはこういった裏の行動の方が
   性分に合うとの事だ。また10人の女傑達も同じく裏方の行動に出だした。俺達はゆっくりと
   動く事にする。

ミツキ「そう言えば3人は寝た事はあるわぅか?」
ミュティナ「私達ですか? ここ数年は全く寝た事がありません。」
    ミツキの問いにミュティナが答える。が、その内容に驚愕する俺達。確かに3人は宇宙人と
   あり、人間の常識が一切通用しない。
ミュティラ「僅か数分の仮眠だけでも充分な時間が取れますので。」
ミュティヌ「動きまくりっす。」
リュリア「遊びまくりだねぇ〜。」
   この半永久機関たる3姉妹はモンスターだわな・・・。そしてその彼女達とノホホンとする
   リュリアもまた凄いものだ。ミツキも合わせた5人は本当の姉妹そのものである。
ミスターT「・・・宇宙人と人間の縮図、か。」
ミツキ「むむっ、寿命云々の部分わぅ?」
ミスターT「そう。リュリアはあと10年もすれば、お前と同じ大人になっちまう。ところが3姉妹
      の方は10万年以上経過しないと変わらない。その頃には俺達は既にいないしな。」
シューム「その華奢な身体でどれだけの苦痛を見てきたか、よね。」
   シュームの纏め言葉が正にそれである。ミュティ・シスターズの永遠とも言える生の時間で、
   どれだけの苦痛を味わってきたのか。俺達のそれとは雲泥の差である。リュリアと一緒にいる
   3人を見ていると、居た堪れなくなってくる。

シルフィア「ん〜、でもないんじゃないかな。確かに宇宙空間に出れば、ミュティナさん達の強さは
      発揮されるでしょう。年齢も時の流れもそう。しかし地球にいる限りは、私達と同じ
      時間が流れていると思うわ。」
アサミ「外なる宇宙・内なる宇宙ですね。」
アユミ「私達人間の中にも小さな宇宙が存在している、と。」
    殆ど口を出さないアサミとアユミが明確な一撃を放つ。外なる宇宙・内なる宇宙、人の内部
   にも小さな宇宙が存在するという例えのものだ。
ナツミA「この地球が浮かぶ宇宙空間は、大きな人の体内の中という現れよね。そしてそれは私達の
     体内の宇宙とも繋がっているというもの。」
アサミ「そうですね。理路整然と解釈できるものではありません。しかしそれが感じられる場面は、
    やはり生命を実感した瞬間でしょうか。」
アユミ「皆さん方の中にも宇宙がある。それ即ち、宇宙は1つの生命にも繋がりますから。」
   もはや生命哲学の論理に至るものだろう。現役の学生であるアサミとアユミなら専売特許だ。
   流石の総合学園校長たるナツミYUにもチンプンカンプンのようである。

エリシェ「・・・小宇宙・大宇宙、全ては生命体そのもの。」
ミスターT「すまん、起こしちゃったか。」
エリシェ「いえ、大丈夫です。ただ難しい話に反応する癖は今もありまして・・・。」
    バツが悪そうにするエリシェ。彼女も学びながら大企業連合の総帥をしているようで、双子
   の発言に呼び起こされた形になるという。しかし今も俺の胸の中にいるのは、余程心地が良い
   様子だ。
エリシェ「私達の大企業連合も生命哲学に基づかなければ動く事ができません。数多くの人々を養い
     続けている面から繋がるものもありますから。」
シューム「それだけの大企業を維持し続けられるのも、人としての当たり前の回帰に至り続けるから
     こそよね。」
エリシェ「ですね。じゃないと一歩間違えば破滅をもたらす可能性もありますので。」
ナツミYU「力の使い方も、誤った方向に行くと破滅よね。」
   恒例の一服する面々は自然と一服をしだす。俺は両手がエリシェで塞がっているため不可能
   である。しかし、力も一歩間違えば破滅をもたらすというのが怖ろしい話だ。

ミツキ「命の力ほど最強の力はありませんよね。上辺では資金面の方が速効性があって強みですが、
    根底の部分を見つめると生命力の方が遥かに強いですから。」
ナツミA「私達はそれをあの時に見つめたのよね。人は極限状態に陥らない限り、生命の有難みを
     感じる事ができない。皮肉と言えば皮肉よね。」
    珍しく真面目言葉で語るミツキ。そして結論的発言を語るナツミA。数年前に出会った時の
   ナツミAは病弱で、明日がどうなるか分からない状態だった。それが今ではこの様相である。
ミツキ「姉ちゃんが苦しんでいた時ほど、その生命の有難みを知る事ができた。その後のTさんと
    出会ったのもそう。姉ちゃんが言う様に、人間は極限状態にならないと有難みか感じれない
    存在になってしまったんですかね。」
ミスターT「こうなると心構えの問題に近いがね。常日頃の一念次第で、生きるという歓喜を知る
      事ができる。ナアナアに生きるなら誰でもできる。しかしそこに歓喜は一切ない。」
エリシェ「ですね。私達の社の方針も、とにかく生命尊厳を最優先事項としています。でなければ
     皆さんが仰る様に、超絶的な力の前では堕落するのは言うまでもありません。」
   俺の両手が疲れだしているのを伺ったのか、ミュティナが代わると言い出した。この華奢な
   身体で大丈夫かと思うも、例の重力制御の理で簡単にエリシェを肩に乗せるのだ。これには
   周りの面々は驚愕してしまう。
エリシェ「何かすみません・・・。」
ミュティナ「いえいえ、お気になさらずに。お兄様を支えていらっしゃるお礼でもあります。もし
      それがなかったら、私達は今こうしていません。」
ミュティラ「ミツキさんのお姿が正にそれですよ。」
ミュティヌ「そうだよね。私達が独立行動する事で、諸々が危なそうだとは思っていたけど。でも
      みんなとワイワイしたい。」
ミツキ「そこは任せて下さい。Tさんと同じく、一度守ると言ったからには徹底的に動きますから。
    生半可な考えで動くぐらいなら、最初からこの道には進みません。」
   物凄い気迫のミツキに周りは驚くも、その限りない優しさも含まれる部分に安堵を覚える。
   ミツキが体現する、敬い・労い・慈しみの精神。これがもはや彼女の生き様そのものになって
   いると言えるわな。

ミスターT「そんなお前達を纏めて守り通すのも、俺の役目だわな。覆面の風来坊・・・警護者か。
      俺は伊達じゃないぜ。」
    両手が解放したので、一服しながら内情を語った。ナツミツキ四天王のナッツが名言の、
   “纏めて守り通せば済む”である。俺も彼に心から同調するわ。
シューム「へぇ・・・覆面の風来坊、物凄くいい響きよね。」
ナツミYU「今は覆面の警護者でしょうけど、むしろ覆面の風来坊をコードネームにするのがいい
      かも知れませんね。」
シルフィア「ランジェリーマスターはどうするのよ?」
ミツキ「それはアレわぅ、覆面の風来坊・ランジェリーマスターでいいわぅ。」
ミスターT「俺の名前はランジェリーマスターなのか・・・。」
   ミツキの茶化しで周りは爆笑する。ランジェリーマスターの称号は、今では警護者の世界で
   轟いている様子だ。覆面の風来坊もいいが、嫌な称号だがランジェリーマスターも恐怖度を
   撒くなら申し分ないだろうな。


    会話をしながらも、目的の場所へと向かう。が・・・とにかく広い。先に四天王とラフィナ
   が向かったが、走って向かっても数分は掛かったそうである。

    俺達が到着した頃には、上船から1時間ぐらい経過していた。既に超大型豪華客船は目的地
   のハワイに向けて出航を開始している。この海上とは思えない安定感は見事だわ。

    ちなみにハリアーU隊の面々をシルフィア直々に紹介してくれた。部隊長のエリミナを筆頭
   として、レビリア・セデュラ・ミュデラ・ラシュナ・トーマスMの6人である。まだ10代の
   面々が多いが、その腕は警護者クラスというのだから怖ろしい。

    というか高校に入った辺りから飛行訓練を開始したとか。その後は猛特訓でライセンスの
   取得も至り、最短でハリアーUを扱えるに至ったという。特にエリミナの操縦技術は凄まじい
   らしく、シルフィアしても敵わないと言うのだ。

    やはり時代は若い世代である。今じゃ中堅に至る自分も、何れ彼らの様な若い世代に譲る
   時が来るのだろうな。



ミスターT「へぇ〜・・・お前さんもレシプロ戦闘機が。」
エリミナ「はい。やはり飛行機はプロペラに限りますよ。」
    ハワイに到着するまで、各自自由行動になった。俺はエリミナ達と一緒に、超大型豪華客船
   の超巨大格納庫にいる。ハリアーUのメンテナンスもお手の物らしい。ナツミYUが分解調整
   を行うムルシエラゴよりも凄まじい様相だ。
ミスターT「というか、トーマスMが部隊長な感じがするけど。」
トーマスM「とんでもない。自分は整備士上がりのサポートが本職でしたから。エリミナ達の方が
      操縦技術は凄まじいですよ。」
シルフィア「でもトーマスMさんが年齢トップとしても、君より2歳も若いからねぇ。」
ミスターT「人は見掛けに寄らないという事ですよ。」
   ハリアーUのシステムメンテナンスを行っているシルフィア。ナツミA・ウエスト・サイバー
   も一緒で、身内で最強の頭脳陣だ。ただ機体整備はトーマスMとラシュナが担当しており、
   エリミナや他の3人はパイロット中心との事だ。

ミスターT「しかしまあ・・・この格納庫は・・・。」
    立ち上がって周りを見渡す。シルフィアやエリミナ達の機体が合計7機、上手い具合に鎮座
   している。正しく航空母艦の格納庫そのものだ。しかもハリアーUの性能からして、このまま
   後方大型ハッチから離陸もできるのが見事である。
ミスターT「垂直離脱可能なハリアーUだからこその運用、か。」
シルフィア「そうね。世界最強戦闘機のラプターでも、ハリアーUの様な真上への離着陸は不可能
      だからね。次第点で次期高性能戦闘機F−35ライトニングUが無難かな。」
エリミナ「ただ燃料はガバ飲み状態ですけど。」
トーマスM「ハリアーUも滑走路からの離着陸の方が望ましいのですがね。そっちの方が燃料消費は
      抑えられますし。」
ミスターT「まあ機体自体の能力発揮には前者が正しいと。」
   本当にそう思う。ハリアーUや初期のハリアーは、垂直離着陸を行ってこそ真価を発揮する
   機体だ。それを疎かにしてしまっては全く意味がない。

ラシュナ「むむ、兄貴。ちょっと機体を動かしてくれませんか? 死角で見辛いっす。」
トーマスM「了解、起動させて動かすよ。」
ミュティナ「機体を持ち上げればいいのですか?」
トーマスM「え・・ええ、まあ・・・。」
    ミュティナの発言に苦笑いをするトーマスM。しかし逆にニヤリと微笑む彼女に、その後の
   展開が読めてしまった。前輪支柱近くまで向かうと、そのまま何食わぬ顔で掴んで持ち上げる
   のだ。それに驚愕する周りの面々。
ミスターT「改めてみると、重力制御の力は凄まじいわな・・・。」
ミュティナ「私もそう思います。ただこれは半分のみで、あと半分は私達種族の力ですけど。」
   まるで傘を持つような仕草でハリアーUを持ち上げる様に、身内も格納庫にいる人物の誰もが
   驚愕せざろう得ない。ミュティナの華奢な身体の何処にそんな力があるのか、本当に不思議
   としか言い様がないわな。
シルフィア「この力を連中は狙っている訳よね。」
ミスターT「例のカス共ですか・・・。」
シルフィア「個人戦闘力は最強そのものだからね。」
   何を思ったのか、ミュティナに近付き抱き上げるシルフィア。するとハリアーU共々軽々と
   持ち上げてしまうのだから怖ろしい。これはミュティナ自身は普通の自重であるという現れ
   になる。ハリアーUだけ重力制御で超軽量にしているため、この様な荒業が可能のようだ。
レビリア「そ・・それさ・・・シルフィアさんの方が化け物に見える感じよね・・・。」
ミスターT「元からそうだから仕方がないんじゃないかね。」
シルフィア「酷い言われ様だけど、まあその方がハッタリが効くからいいかもね。」
ナツミA「何事も大事に見せて、相手に威圧を掛けるのが無難ですよ。」
   今度は彼女が空中に浮かぶハリアーUの脚部を掴み、そのままコクピットの方に這い上がって
   行くではないか。ナツミAの場合は十八番の力の作用点の限界を知っているため、その瞬間に
   出せる力のバランスが物凄く良い。腕相撲で彼女に勝てないのが十分肯ける。

ミスターT「これだけの強者がいれば、俺は補佐に回るだけで申し分ないわな。」
エリミナ「いえ、その逆だと思います。マスターが敵の目を引き付けてくれるからこそ、俺達が補佐
     に回れる訳で。あのカーチェイス時なんか正にそうですよ。」
ナツミA「持ちつ持たれつ投げ飛ばす、今はそれが定石になっていますからね。」
    外周作業が終わり、機体を床に下ろすミュティナ。その彼女を抱き下ろすシルフィア。まあ
   見事な様相だわ。その中で平然と作業をするナツミA。彼女の腕からすれば、ハリアーUの
   コンピューターは造作もないとの事だ。何とも・・・。
シルフィア「案外、ミュティナさん達も警護者になった方が安全が確保できるかもね。その超絶的な
      力はあるものの、戦闘訓練はされていないようだし。」
ミュティナ「両親や妹達には既に訳を言ってありますから、後は行動あるのみですけど。」
シルフィア「あらま、お早い事・・・。」
   恩師の発言には驚くが、ミュティナの発言にも驚いてしまう。確かに警護者としての戦闘訓練
   を積んでいれば、彼女達の超絶的な力も合わさって無双そのものだろう。今は守る側に回って
   いるが、その時は守られる側になるのは言うまでもない。
ナツミA「むしろなった方が安全ですよ。まあ駐留は喫茶店でもいいでしょうし。マスターや身内と
     行動すれば問題ありません。」
ミスターT「それこそ、名言“持ちつ持たれつ投げ飛ばす”が合うわな。」
   全ての作業を終えたナツミA。コクピットから降りる様は、本当のパイロットのようである。
   ただまだ6機ほど残っているため、作業は山のように残っているとの事。もはや完全な裏方
   作業である。

    後に駆け付けたミュティラとミュティヌも合わさり、ハリアーU郡の改修作業は続く。例の
   重力制御の理が思う存分発揮できている。本来なら数時間掛かる外周作業が、僅か短時間で
   終わってしまうのには驚愕との事だ。仕舞いにはハリアーUを逆さまにして持つという荒業
   すら披露する。作業効率としては超絶的であろう。

    これ、3姉妹は警護者よりメカニックの方が合うのかも知れないわ。超巨大な物質すらも
   軽々と持ち上げられるため、クレーンやハンガーによる持ち上げ作業が全く必要としない。
   となると最高の作業として、巨大ビルなどすらも持ち上げる事が可能か。う〜む・・・。

    まあここは3姉妹が行いたい事をさせるのが一番だわ。その時こそ真価が発揮するしな。
   何だか陰ながら見守る父親の気分になる、何とも・・・。


    通常、ハワイへの航行は数週間ぐらいは掛かるという。特に海は天候に左右されるため、
   最短で動けても5〜7日と言われている。ただそれは“通常の船舶”なら、だ。

    この超大型豪華客船は海上側に世界最大の豪華客船を3倍程度にした様相。更に海中はその
   船体の3倍以上の構造物がフロートの役目で鎮座している。正に動く氷山そのものだ。また
   規模からして重武装も可能とあり、正に超巨大戦艦といえる。

    よって大波すらも影響を受けないため、手前で挙げた航行日数は最短で5日程度だという。
   恩師が言った通り、1週間でハワイに到着できるか。

    しかしまあ、大波ですら飛沫程度の威力にしかならないこの船体。こんなのを建造できる
   三島ジェネカンの力は凄まじいものだわ・・・。



ミツキ「のどかわぅ〜。」
    翌日の朝にはハワイに到着するという話になった。今は超大型豪華客船の最上部、ここに
   あるラウンジで寛いでいる。寝そべりながら表を見つめるミツキが、ここを普通の自宅にしか
   思わせない・・・。
ミツキ「そうそう、ハワイでの依頼って何わぅ?」
ミスターT「今度は本格的な要人護衛らしいよ。現地で大規模会議があるらしく、それの身辺警護を
      任された形だ。」
ミツキ「そこに下手をしたら・・・ミュティ・シスターズを狙う輩が現れる、ですか。」
   突然の真面目言葉に驚くも、雰囲気が一変している。やはり3姉妹の一件は、ミツキにしても
   激怒するもののようだ。
ミスターT「まあ俺達がいれば問題ない。それに今までの3姉妹だと厳しいかも知れないが、今では
      警護者の触りも得ている。そう簡単には奪わせはせんよ。」
ミツキ「私達が総出なら大丈夫ですよ。それに重力制御の理を特殊ペンダントで得られるようにも
    してくれています。いざとなったらパニッシャーでも使って暴れてやりますから。」
   そう言って胸元にぶら下げているペンダントを見せてくる。ミツキもそうだが、俺や周りの
   面々に特殊なペンダントを分け与えてくれた3姉妹。その効果は彼女達が持っている重力制御
   の力が発揮できるとの事だ。
ミツキ「しかも凄いのが、人のプラスのエネルギーに反応しなければ発揮しないというのも。」
ミスターT「悪心があれば絶対に力は発揮しない、だな。」
ミツキ「正に力の極みですよね。」
   どういった概念で力が発揮するのかは不明だ。しかしそれが実現できているのが何よりの証拠
   である。この力があれば振り回すのも不可能とされる本物パニッシャーも扱えるだろう。

ミスターT「・・・力は使ってこそ真価を発揮する、か。」
ミツキ「非常に奥が深い言葉わぅね。」
    普段の語末に戻る彼女。俺が語った内容に、端的かつ深い意味合いで答えてくれた。力とは
   何か、これはほぼ永遠の課題に近い。
ミスターT「・・・まあ、今は目の前の課題を1つずつクリアしていく事を考えますか。」
ミツキ「うむぬ、楽観主義でいきませう♪」
   徐に立ち上がると、室内に訪れたミュティナ達と合流。そのまま部屋を出て行った。代わりに
   ナツミYUとシュームが入室してくる。2人ともノースリーブにミニスカートという、エラい
   ラフな出で立ちだ。
ミスターT「バカンス気分丸出しだな・・・。」
シューム「息抜きできる時はしないと損よね。」
ナツミYU「本当ですよ。」
ミスターT「はぁ・・・何とも。」
   女性を前面に出している2人。しかしそれこそが彼女達の本当の姿だろう。警護者という殺伐
   とした世界に身を置く故に、何処が現実か非現実か分からなくなる場合もある。バカンス気分
   としているのは、一時でも非現実から現実に戻りたい現われだろうな。
ミスターT「現地で依頼が終わったら、少し息抜きでもするかね。」
シューム「無事終われば、ね。」
ナツミYU「今回の様相は、今までとは異なるもののようですし。油断はできませんよ。」
ミスターT「そうだな。」
   普段の流れからして、自然と一服をしだす。それが3人同時という部分に気付くと、自然と
   笑みがこぼれてしまう。

    その後は雑談をしながら時を過ごした。まだハワイまでは丸1日は掛かるそうだ。水や高所
   が苦手な俺だが、今いる場所からは想像も付かないものだわ。

    まあ今は一時の休息を満喫するとしよう。現地でどんな流れになるか分からないが、人間の
   モラルとして触れてはならない所を触れた報いは受けさせる。

    警護者のトップクラスの面々による、怒りの一撃への下準備だ。

    第8話へ続く。

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