アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝6
〜覆面の警護者〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝6 〜覆面の警護者〜
    〜第2部・第09話 究極の姉妹喧嘩4〜
ヘシュア「さて・・・次の本題に参りますか。」
    そう言いつつ、呆然と眺めていたヘシュナ達に歩み寄るヘシュア。既に毒気を抜かれた感じ
   の彼女達には、ヘシュアの怒りの形相は強烈過ぎたようだ。顔を青褪めて震えている。
ヘシュア「バカ姉の真の意図を察知できなかったのは素直に謝る。だが、アンタがした事は紛れも
     ない迷惑行為。それなりの覚悟はできているんだろうな?」
ヘシュナ「・・・そうだな、行き過ぎた行動だった事は詫びる。何も言い返す事はない。」
ヘシュア「ヘッ、それを聞いて安心したわ。目を瞑れ、一発殴らせて貰う。」
   大丈夫かと周りの女性陣が不安の表情を浮かべるが、その彼女達を押し留めた。多分この展開
   だと本当の殴りじゃない。

    静かに目を瞑るヘシュナに近付き、その額に強烈なデコピンを喰らわせるヘシュア。それに
   周りの面々は呆気に取られているが、ミツキだけはニヤケ顔で頷いていた。どうやらこの粛清
   は彼女の受け売りだろう。

    意外な制裁に驚きながら目を開けるヘシュナ。そこには先程までの怒りの様相ではなく、
   慈愛に満ちた表情のヘシュアがいた。これが彼女の姉への本当の姿だろう。

ヘシュア「本当は強烈なシャイニングウィザードを放とうと思ったが、ミツキ様がデコピンだけに
     しろと言ってくれたんでな。これで全てチャラだ。」
ヘシュナ「そ・・そうか・・・。」
ミツキ「むふっ♪ ヘシュナちゃんが矢面立って全てを担ってくれた事への感謝もあるわぅね!」
    呆気に取られるヘシュナの背中をバンバン叩くミツキ。彼女より3分の2ぐらいしかない
   背丈のミツキのその行動は、シュームがしてくれる慈愛の一撃とも言える。見事なものだわ。
ヘシュナ「・・・全て見抜かれていた訳か。」
スミエ「何も分かっていないと思われていたのなら、それは私達の作戦勝ちでしょうね。Tちゃんは
    貴方を利用する事はしたくないと言っていました。しかし、望んで挑まれている貴方の一念
    を心から汲まれた。その彼の一念を私達も汲んだのですよ。」
シルフィア「正直な所、師匠にまで暴言を言った時は張り倒そうかと思ったけどね。そこはT君や
      師匠に免じて黙認するわ。2人に感謝しなさいな。」
   スミエとシルフィアの言葉でハッと気が付いた様子のヘシュナ。かなり怒り気味に俺を見つ
   めてくる。まあその一念は十分理解できる。
ヘシュナ「・・・灯台下暗しだったとはね。あれだけ毛嫌いしていた貴方が、まさか私の傍らで全て
     支えてくれていたとは。」
ミスT「へぇ・・・お前や貴様とは言わないのか。何時もの悪態を付く姿に慣れたんだがの。」
ミツキ「ウッシッシッ♪」
   態とらしく悪態を付いてみた。出会った時の暴言の流れなどを踏まえて、その部分を指摘して
   みる。すると不貞腐れた表情を浮かべ、むくれだしたのだ。この姿は硬派な彼女には考えられ
   ないものである。もしかしたら硬派な姿は作っていたのかも知れない。

ミスT「まあ何にせよ、並々ならぬ決意がなければ生き様は貫けない。ヘシュナがどれだけの一念で
    動いていたのかは分からないが、結果が良ければ全て良しだ。むしろお前さんを騙す事に
    なったり、利用する事になって本当に申し訳ない。」
    その場で彼女に深く頭を下げ謝罪した。結果が良ければと語ったが、それでも彼女を騙して
   利用した事には変わりない。その部分の謝罪はしっかりせねば。
ヘシュナ「・・・律儀な方です。」
ミュティナ「小娘には丁度良い気付けですよ。もっとドギツイ制裁をすべきですけどね。」
ミツキ「ぬぅーん! 悪態を付くなと言ったろぎゃー!」
ミュティナ「う・・うぇ?!」
   ミュティナの発言に逆制裁を加えるミツキ。その頭を掴まえてヘッドロックを放っている。
   即座に降参のタップをするミュティナだが、構わずに猛攻するミツキだった。それに周りは
   爆笑していた。ヘシュナ達も釣られて笑っている。もしかしたら、ミュティナが場の雰囲気を
   崩してくれたのかも知れない。それを察知したミツキも追随し、ネタという形で締め括ったの
   だろう。
シューム「はぁ、ミツキちゃんの采配には脱帽だわ。」
ナツミYU「ですねぇ。」
デュリシラ「ともあれ、これで一応は片付いた訳ですね。ただ不測の事態は付き物。今後も世界情勢
      を注視していきますよ。」
ナツミA「3大宇宙種族の力を総結集すれば、地球人の邪な一念なんか直ぐに見抜けますよ。」
   今もヘッドロックを放つミツキを見ながら呆れるナツミA。しかし彼女が言う通り、見通しは
   ある程度改善したと言っていい。問題は諸々の流れを構築したヘシュナ達だろう。


ミスT「1つ演出を作ろうかね。ヘシュナ達の宇宙船を衛星軌道上へと離脱していく様を、地球の
    各国家にマザマザと見せ付ける。他の2大宇宙種族と同じく成層圏で鎮座すれば、以後は
    要らぬ火種は起こり難くなるだろう。」
ミュセナ「なるほど、大々的に去っていく姿を演出するのですね。それなら騙せるかも知れません。
     しかしヘシュナ様はどうなされるので?」
    今後をどうするかと悩んでいた面々に提言してみた。すると暗かった表情がパッと明るく
   なっていくではないか。どうやらここまでの演出は考えていなかったようである。問題は諸々
   の当事者になっていたヘシュナ自身だ。
ミスT「俺の元に置くわ。今のお嬢は視野が狭過ぎる。喫茶店経由で世上を見て回れば、本当の人間
    の姿を知れるだろう。それに周りには戒めてくれる存在が数多い。間違った道に進む事は
    絶対にさせんよ。」
スミエ「その方が安心します。Tちゃんならヘシュナ様を心から守ってくれますし。不器用な娘に
    なりますが、よろしくお願いします。」
ミスT「委細承知。」
   スミエにとってヘシュナは思い入れが強い女性なのだろう。実際の血の繋がりはないが、娘の
   様な存在なのは確かだ。それはミュセナにも当てはまる。本当に偉大な祖母だわ。
ヘシュナ「わ・・私はまだ貴方達を信じ切った訳ではないからな・・・。」
ヘシュア「この野郎・・・悪態は付くなと言ってるだろうが。」
シューム「ふぅ・・・完全に立場が逆転してるわねぇ。」
ナツミYU「本当ですよ。」
   直ぐにはヘシュナの意固地気質が変わるとは思えない。恩師たるスミエが語る内容に悪態を
   付いてきた。それを即座に横槍を入れるヘシュア。その姿は姉妹ならではだろうな。

    後始末はミュセナ・ルビナ、そして屈強の精鋭揃いが担ってくれるという。俺達は一度日本
   に戻る事にした。ヘシュナの宇宙船の流れは後日行うとの事だ。

    基地から表に出ると、やはり白銀の世界である。南極大陸だというのを痛感させられた。
   そして驚愕した。俺達の真上には建造中だと思われていた、あの宇宙戦艦が鎮座してたのだ。
   ただその背後にはヘシュナ達の宇宙船があるため、規模の問題では遥かに劣ってはいる。

    にしても、この短期間で宇宙戦艦すら建造してしまうとは・・・。



ミツキ「ウッシッシッ♪ さらば〜ちきゅうよ〜♪」
ミスT「はぁ・・・。」
    レプリカフランベルジュを含めたレプリカ艦隊は日本の護衛に任せたようで、遠方への遠征
   は宇宙戦艦を使うとの事。規模は超レプリカ大和の2倍、つまりレプリカ大和の10倍だ。
   2630mの巨体は、完全に規格外の超弩級戦艦である。
ミスT「レプリカフランベルジュを出してから、直ぐに宇宙戦艦を作れたのか。」
エリシェ「いえ、実際には超レプリカ大和を建造するぐらいからです。空中・海上・海中・深海、
     そして宇宙にまで出るとなると相当な時間が必要でしたので。」
ラフィナ「今までのノウハウを活かした形です。ただ今回はギガンテス一族のテクノロジー以外に、
     ドラゴンハート一族のテクノロジーも加算しましたので。」
エリシェ「2つの大母船で複数に分けて建造し、完成したのを転送装置で直接南極に送りました。
     実際に私達も見るのも乗るのも今回が初めてですけど。」
ミスT「転送装置ねぇ・・・。」
   生粋の地球人からすれば、このテクノロジーは完全に逸脱している。2630mの宇宙戦艦を
   短期間で建造できる自体化け物だわ。オリジナルの大和ですら建造には数年掛かっている。
   しかも規模の問題から数十年は掛かってもおかしくはない。

エリシェ「全て終われば、宇宙戦艦は3大宇宙種族のバトルシップとして運用する事にします。まあ
     ヘシュナ様の用いている宇宙船には遠く及びませんが。」
ヘシュナ「いえ、そうとも言えません。確かに私は長い間、ミュティナ様方やルビナ様方とイザコザ
     をしてきました。しかし実際に戦闘などには至っていません。その理由は皆様方が思う
     一念に回帰するのと、そもそも宇宙船群は戦闘用に開発された訳ではないのが実状で。」
ミュティナ「ですね。レールガン・スーパーレールガンなどの武装はあれど、バリアやシールドの
      恩恵がなければレプリカ大和と対峙しただけで潰されるぐらい脆弱です。マスター方の
      世界で用いられている戦艦群は、最初から戦闘用に堅固な作りをされていましたし。」
ミスT「バリアやシールドの概念を取り払えば、実際の戦闘力はガンシップ群と互角かそれ以上と
    いう訳か。ただレールガンの直撃を受ければ、レプリカ大和も一撃必殺だろうに。」
ヘシュア「まあ確かに。」
    う〜む、バリアとシールドの恩恵は凄まじい事が分かる。レールガンやスーパーレールガン
   ですら弾き無効化させるというのだから怖ろしい。そもそも核兵器や細菌兵器・生物兵器すら
   敵わないレールガン群の武装を防ぐのだ。人類が大きく背伸びしても勝てる訳がない。

エリシェ「そもそも私達は戦争屋ではありません。警護として用いているだけです。全てが終われば
     歴史モニュメントとして余生を送って貰う形になりますよ。」
ミスT「ミリタリーマニアからすれば、これらガンシップは卒倒物だわな。」
    歴史モニュメントか。パール・ハーバーはアリゾナ記念館、広島は原爆ドーム記念館が該当
   する。二度と戦争を起こさないという意味合いで建立されたものだ。それらと同じ次元にこの
   ガンシップ群が加わるのは不謹慎な感じがしてならないが・・・。
ミツキ「Tさんが以前言ってましたよね。どの様な形でもいい、語り継いでこそのものだと。忘却
    ほど怖ろしいものはない、とも。」
ミスT「ああ、そうだな。」
ミツキ「ならば、これらガンシップは見事大役を担ってくれますよ。それらも踏まえて生まれ出た
    戦士そのものですから。」
ナツミA「今後の私達次第という事よね。」
   本当にそう思うわ。全てのものに誕生した意味が存在する。それは人であり・動物であり・
   物にさえあるのだ。行き過ぎた感じのガンシップの建造だったが、それは後の未来に重要な
   役割で活躍すれば問題ない。忘却ほど怖ろしいものはないしな。

ミスT「とりあえず、日本に戻るかの。宇宙戦艦は小笠原近辺で待機でいいだろう。超レプリカ大和
    と同じ運用で問題ない筈だ。」
エリシェ「確かに。この長大な射程距離の兵装なら、日本全土を守る事ができますし。」
ミツキ「レプリカフランベルジュだけで国内を巡回するわぅ?」
エリシェ「ですね。それに空中を移動できるのは、宇宙戦艦とレプリカフランベルジュだけですし。
     その機動力を駆使して活躍して頂きましょう。」
    超レプリカ大和を空中に浮かせた形がレプリカフランベルジュになる。移動速度こそ鈍重な
   感じだが、それでも場所を問わず駆け付けられるのは逸材だろう。しかも空母機能もある。
   中継基地として打って付けだわ。
デュリシラ「では小笠原海溝近くにレプリカフランベルジュを派遣しておきます。現地で合流し、
      そちらに乗り替えて戻りましょう。」
ヘシュア「例の宇宙船帰還プランは何時実行します?」
ミスT「俺達が現地に戻ってからでも大丈夫だと思う。むしろ間接的に行ったのだと演出するのも、
    要らぬ横槍を防ぐ事にも繋がると思う。」
ヘシュア「了解しました。諸々の事を一族全てに伝えておきますね。」
   善は急げといった形で動き出すヘシュア。既に何人かの専属護衛がおり、その面々と色々と
   打ち合わせをしていた。その姿を誇らしく見つめるヘシュナ。


ミツキ「妹の活躍を見守る姉の図、わぅね。」
ヘシュナ「ん・・ああ、確かに。」
ナツミA「自分で言ってれば世話がないですよ。」
    何時の間にか一族全てがヘシュアを中心とした流れになっている部分。それに一安心した
   感じのヘシュナ。どうやら悪役を演じていた時は、仮のリーダーとして君臨していたようだ。
   ・・・となると、この姉妹は全て分かっていたという事か。
ミスT「・・・敵を欺くには味方から、か。」
シューム「あー、ヘシュアちゃんが演出していたという部分ね。それはないと思う。ヘシュナちゃん
     自身が敵勢力を1つに纏めていたのは確かだし。それにあの姉妹喧嘩はモノホンよ。」
ヘシュナ「すみません、お見苦しい所をお見せしてしまって・・・。」
シューム「いいのいいの、気にしないで。T君が言っていた通り、万事全て丸く収まったのだから
     万々歳よ。それにそれだけお互いを信頼している証拠だし。それを見抜いたT君が、貴方
     を利用してまでその思いを汲んだ。それが全てよ。」
ミツキ「見事な采配わぅね。」
   確かにヘシュナを騙し利用した形にはなったが、全てが丸く収まったのも事実だ。それに本当
   の目的は天下安寧。それに一歩でも近付けるなら、俺は鬼にでも悪魔にでもなってやるわ。
ヘシュナ「・・・その並々ならぬ決意が、皆様方を突き進めたのですね。」
ミスT「あら、ヘシュナにも見抜かれたか。」
ヘシュナ「フッ、私達カルダオス一族の真骨頂ですよ。世上はマインドコントロールと言いますが、
     実際には直感と洞察力が一際優れているだけです。ギガンテス一族やドラゴンハート一族
     をしても、この部分は勝っていると思います。」
ミスT「3大宇宙種族のそれぞれの特徴が重なり、1つの大宇宙種族連合的になっているだな。」
   本来はこの姿が当たり前なのだろう。ギガンテス一族・ドラゴンハート一族・カルダオス一族
   の3大宇宙種族が合わさる。その彼らを引っ掻き回した人類は、ある意味怖いもの知らずと
   言えるわ。

ミスT「まあ何にせよ、これで肩の荷が下りたわ。漸く野郎の姿に戻れるわ・・・。」
    性転換ペンダントを取り出し、その能力を切ろうとした。しかし、周りの女性陣の無言の
   圧力がそれを阻害させてくる。仕舞いにはヘシュナから怖ろしいまでの表情で睨まれた。
ヘシュナ「はぁ・・・。」
シューム「そこまで男性が嫌いなのねぇ。」
ヘシュナ「あー・・いや、まあ・・・。」
ナツミYU「マスターは貴方に悪態を付いた男性陣とは全く違いますよ。」
ミツキ「エロス目線は健在わぅけど?」
デュリシラ「暫く久しいので、その目線を感じたら殺気返してやりますよ。」
   うわぁ・・・殺気に満ちた目線は怖すぎるわ・・・。しかし久し振りに感じるその一念に、
   心から安堵感を覚えるのが皮肉な話だわ。それが当たり前だったという事を、長い間の性転換
   状態で忘れていたようである。

    それでも、それだけ俺を信頼してくれている事の裏返しだ。その一念に心から感謝したい。
   まだまだ膝は折れないわな。


    南極から空中移動で小笠原海溝まで進む宇宙戦艦。転送装置でもよかったのだが、大空の
   クルージングを楽しみたいという一同を汲んだ形である。俺はとてもじゃないが表を見る事は
   できない・・・。

    数時間のフライトの後、目的地へと到着する。そこには既にレプリカフランベルジュが待機
   していた。入れ替えにはレプリカブリガンダインを使うようだ。俺達を回収後、宇宙戦艦は
   空中から海上に着水していく。通常のガンシップと同じ扱いをするのだとか。

    ちなみにクルーは躯屡聖堕メンバーが担当してくれている。相当な人数だが、全てエリシェ
   やラフィナが選抜した精鋭中の精鋭達である。異体同心の理が根付いている屈強の面々だ。
   大企業連合が3大宇宙種族に勝るとも劣らないのは、異体同心の理が凄まじいからだろうな。
   それに追随するのが躯屡聖堕フリーランスとトライアングルガンナーの面々になる。

    まだまだ地球人も捨てたものではない。一部の私利私欲に走る愚物が世上に火種をばら撒く
   要因になっているだけだ。調停者に裁定者か・・・う〜む。

    何にせよ、俺達の使命はまだまだ続く。己が定めた生き様を、貪欲なまでに貫いていく事に
   こそ意味がある。今後もその姿勢は貫き続けて行くわ。

    第10話へ続く。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

戻る