アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝8
〜覆面の探索者〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝8 〜覆面の探索者〜
    〜第1部・第10話 守るべきもの1〜
    商業都市リューヴィスへ移動。乙女の花園と表される事に、多少なりとも浮き足立つが、
   その本当の姿を知って愕然とした。そこは、野郎共に虐待を受けた女性達が行き着く、最後の
   砦そのものだった。

    地球ではトラガンの女性陣、同じ様な虐待を受けた彼女達が集まり、女性達だけの組織を
   作り上げていた。それ以上に酷い様相である。ファンタジー要素が罷り通るからといっても、
   ここまで酷いのかと我が目を疑った。

    同時に、野郎に対して痛烈なまでの怒りを覚える・・・。同性として本当に恥かしい限りと
   しか言い様がない・・・。

    俺にできる事は、現状での最善の策を行う事だった。ヘシュナ直伝の回復治癒能力を駆使
   して、傷付いた女性陣を全員治療して回った。偽善者だと思われてもいい、何もしないでいる
   よりは遥かにマシである。

    トラガンの女性陣を見ても思ったが、この異世界でも守るべきものができたと確信する。
   何れ故郷に帰る時が来るだろうが、それまでは彼女達を厳守し続けるしかない。それが、俺が
   ここに飛ばされた最大の理由だろう。



    全ての女性を治療してから1週間が経過。絶望の色に支配されていた商業都市だったが、
   今は希望の色に溢れる都市に至っている。しかし、その絶望の色が濃い時の影響で、街並みは
   廃街そのものだった。

    そこで、俺達は増援で到来してくれたトラガンの女性陣と共に、リューヴィスの環境美化に
   徹底して取り組む事にした。地球でも同じ事を行っているため、全く以て違和感はない。寧ろ
   当たり前の行動の1つと化している。

    全ての面からして、笑顔を取り戻せる事ができれば、俺の役目は完遂できたと思う。

ミスT「次は・・・ここからか。」
セラ「了解です、指令を出してきますね。」
サラ「周辺の警戒を行い、その後は討伐クエストを行ってきます。」
ミスT「ああ、気を付けてな。」
    リューヴィスの中央、正に中央の交差点に陣取り、四方八方を見渡しつつ様子を見続ける。
   サラとセラ率いるトラガンチームが率先し、街の美化や身体強化などを行ってくれていた。
   俺は同場所から街を見入り、何かないか警視を続けていた。
テューシャ「一番高い建物で2階なのが痛いですよね。しかも、街中の端に近い方にありますし。」
ミスT「今いるここに監視塔的なのがあればね。」
   監視塔とは名ばかりで、それは街を見守る大切な役割となる。商業都市自体が言わば、捨て
   去られた街と言えるほど悲惨であり、抜本的に見直さなければならなかった。今現在で全てを
   警視するのは難しく、この交差点で陣取るしかないのが実状である。
ミスT「まあでも、東西南北の末端や中継点に面々を配置しているから、何かあった場合の対処は
    し易いのがね。」
テューシャ「本当にそう思います。」
   交差点より見入る先に、転々と配置されたトラガンの女性陣。合図を送ると問題ないという
   返答が手信号で帰ってくる。彼女達は街の全ての区画に配置されており、言わば網の目情報網
   とも言えるだろう。

    ちなみに、妹達は全員リューヴィスの女性陣の修行に携わっている。過去に住んでいた事も
   あり、恩返しの思いで動いているようだ。トラガンの女性陣とも絶妙な連携を取れており、
   異世界版トラガンチームとも言えるだろう。

    妹達との初対面時には、その気質がトラガンの女性陣と似ている事を思い浮かべていた。
   こうした形で類似していると思い知らされたのは実に驚きである。本当に女性は強いわ。


    地上からだが、街中を警視しながら今後を思う。虐待を受けた女性陣が辿り着いた最後の
   砦たるリューヴィス。当初は商業都市という名を聞き、交易が盛んだと思っていた。しかし、
   実際には全く違っていた。

    先日までの俺達の行動は除外するとして、問題は今後の横槍だろう。リューヴィス在住の
   女性陣から伺って分かったのが、ここが別の人物に統括されている事だ。その言動が酷いとも
   伺っている。となれば、今の様相を見れば必ず横槍が入る。

    しかし、ここまで首を突っ込んだのだ。最後まで彼女達を守り抜くのが警護者たる役目。
   今後、どんな横槍が入ろうが、必ず撃退してやる。



スミエ(うーん、嫌な一手が出そうです。)
    警視を続けながら物思いに耽っていると、念話によりスミエの声が脳裏に響く。その声色
   からして、予測していた次の行動が出始めると確信する。
ミスT(・・・リューヴィスへの横槍以外に、妹達への横槍か。)
スミエ(この様子だと、そうなりますね。)
ラフィナ(・・・前者は王城からの侵攻、後者は地位の剥奪でしょうか。)
スミエ(大規模な侵攻になるかは不明ですが、今現在の商業都市の様相を良く思っていない愚物が
    いるのは確かです。それは皆様方で何とかなると思いますが、地位の剥奪が厄介かと。)
ミスT(・・・冒険者ギルドのランクの剥奪、天命的な啓示の撤回、これか。)
   本当にこの手の妨害工作は健在だわ・・・。悪いながら思うが、地球でも頻繁に巻き起こって
   いたのが懐かしいと思える。悪党共は権力を最大限に使い、ありとあらゆる妨害を企てるのが
   通例だな。
ミスT(・・・何処までも救えんカス共め・・・。)
カネッド(兄貴・・・いえ・・姉御、今となってはランクなんか要らんですよ。)
フューリス(本当ですよ。リューヴィスの女性の方々への行為を見たら、正直王城やら組織やらの
      称号的なものなど邪魔極まりません。)
ダリネム(本当の強さとは、声無き声を汲み、その存在を守り通す事。ミスターTさん・・・いえ、
     ミスTさんが言ってらっしゃった事ではないですか。)
   念話を通して、凄まじいまでの怒りを放つ妹達。身内の怒りも相当なものだが、13人の方が
   遥かに強い一念である。憎しみが込められていないのが不幸中の幸いだが。

ヘシュナ(緊急事の移動手段と、臨時待機場所も作っておきますか?)
ミスT(・・・ついにアレを使うのか。)
    ボソッと語るヘシュナの表情が、何時になくニヤケ顔なのが何とも言えない。何時でも使う
   事ができると準備を整えていたと、雰囲気で語ってくる。それに同調するのが、エリシェと
   ラフィナである。
エリシェ(私の予測ですが、この大都会周辺は住めなくなる恐れがあると思います。)
ラフィナ(先のカースデビル群が王城から出ましたからね。最悪は、カルーティアスがラスダンに
     なるでしょうし。それを踏まえると、今も何気なく過ごされている方は現状を把握されて
     いません。非常に危険ですよ。)
オルドラ(マスター、デハラードとシュリーベルも動かした方が良いか?)
ミスT(俺の事か・・・そうだな・・・不測の事態を想定した方が良いかもな。)
   彼からマスターと呼ばれて驚いた。どうやら今は、俺はこの呼び名で呼ばれているらしい。
   妹達だけは普通の言い回しである。その彼が挙げる内容は、リューヴィス以外にシュリーベル
   とデハラードの移動もするのかというものだ。
オルドラ(俺は構わないが、他の面々はここらに愛着があるようだからな。それさえ何とかすれば、
     都市ごと大移動は可能だが。)
エリシェ(早いうちに手を打った方が良いと思います。ドタバタ移動は大混乱を巻き起こす可能性も
     出てきますし。)
オルドラ(そうだな・・・。)
   思い悩むオルドラ。今の彼は相当なカリスマ性を誇っており、デハラード以外にシュリーベル
   や一部のカルーティアスの面々から絶大な信頼を寄せられているらしい。彼が動いてくれる
   なら、後はリューヴィスの女性陣だけとなる。

ラフィナ(そう言えば、カルーティアスより北の造船都市は大丈夫でしょうか。)
オルドラ(向こうは大都会より相当距離があるのと、背後を海に面している。その向こう側が魔王嬢
     達がいる魔大陸だ。それに、造船都市は大都会に継ぐ軍事力を持っている。そう簡単に
     やられはしない。)
ミスT(そうなると、喫緊の問題は3都市と大都会の住人だけか。)
    何か抗争による大移動を余儀なくされている感じだ。しかし、魔王イザリア達よりも、今は
   王城の連中の方が遥かに脅威である。ここから離れた方が良いだろう。
ミスT(各々方、王城連中に悟られないように移動は可能か?)
ヘシュナ(我々、宇宙種族連合を舐めないで下さい。それに、矢面に立って動いているのは、我らが
     同胞ですよ。特にデュヴィジェ様の一族ですし。)
デュヴィジェ(あの娘達は何が何でも守り抜きますよ。全てお任せを。)
オルドラ(説得の方は俺に任せてくれ。それと、先ずはシュリーベルから動いた方がいい。工業都市
     はそれなりに軍備があるから、先に動くと問題が出てくる。)
ミスT(了解した。)
   颯爽と動きだす身内。オルドラ達も含め、今では立派な身内である。今はできる事をし続ける
   しかない。

    俺達の方は、ギリギリまでリューヴィスで女性陣の修行と、王城側の動向をこちらに向け
   させる事にした。プレッシャーを掛ければ、シュリーベルとデハラード、カルーティアスの
   住人の避難も可能と思われる。となると、相当なプレッシャーが必要だが・・・。

ヘシュナ(何ですか、“重装甲飛行戦艦”を出して威圧しますか?)
ミスT(心中読みどうも・・・。)
ヘシュナ(はぁ・・・貴方は周りを過大評価し過ぎと同時に、ご自身を過小評価し過ぎです。あの様
     な力を持っているのですから、もっと自信を持って下さい。)
ミスT(俺の性格上、自信を持ちだすと奢りだすから止めてる。)
    吐き捨てるようにボヤいた。この部分は何度となく苦しめられているもので、それ以降は
   己自身に過剰な自信を持たせる事は一切しなくなった。同時に、力があればどんな事にでも
   使うと決めたのだから。
エメリナ(マスターが何処か自信がなさそうに見えたのは、奢りを防ぐためのものだったと。)
ミスT(ランク制度が一番それよ。そんなものがなくとも、実力で覆せば良いだけの事だ。所詮は
    実力主義、最後は己の力がモノを言ってくる。)
デュヴィジェ(とは言いますが、その考えだと一歩間違うと破滅へと進みますけどね。)
ミツキ(天下無双ちゃんが良い例わぅ。)
   突然介入してくるミツキの一念。近場にナツミAとシルフィアがいるのが感じられた。それは
   完全武装を意味している。
デュヴィジェ(娘達に指令を出しています、次の転送は三女神を送るようにと。)
ミツキ(おういえい♪)
ナツミA(これだけ待たされたのですから、次からは大暴れしますよ。)
シルフィア(それに、喫緊の問題からして、商業都市に向かった方が良さそうだし。)
ナツミA(愚物共を黙らすには、実力で叩き潰す、これに限りますよ。)
   遊び雰囲気丸出しの3人だが、先を見据えた部分には危機感を募らせている。特に商業都市
   への防備を挙げた事は、それだけ近々事変が起こる事を意味している。

    中半へと続く。

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