アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝8
〜覆面の探索者〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝8 〜覆面の探索者〜
    〜第1部・第11話 海への対策1〜
    商業都市リューヴィスでの抗争。いや、ほぼ逆襲とも言える戦いだった。女性への悪態は、
   野郎の俺ですら激昂するほどだった。それでも、今為せる事をしつつ、部外者たる存在を撤退
   させる。あれだけ徹底的に痛め付けられたのだ、今後は懲りて来ないで貰いたいものだ。

    しかし、悪党とは何処までも執念深いのが特徴。再び、連中が到来しても良いように、対策
   を取っておいて損はない。だが、ここでの俺の出番は終わったと見える。

    抗争終了後の労いパーティー時でも窺えたが、男性に戻った俺への目線が痛過ぎた。大人の
   女性ならまだしも、幼子には今後の成長を思うと非常に良くない。ここは静かに去った方が
   良いだろう。

    それでも、今回の行動全てに後悔はしていない。今後も彼女達が問題なく過ごせるのなら、
   俺の役割も達成できたと思える。むしろ、彼女達が受けた傷の方が遥かに深い。今の俺には、
   このぐらいしかできない。



ミスターT(・・・と言う感じだ、後は任せられるか?)
    労いパーティーも終わり、一同帰路に着いて行く。交差点で仁王立ちのまま、目と閉じつつ
   念話での会話を続ける。
ミツキ(了解わぅ。リューヴィスのみんなは厳守し捲くるわぅよ。)
ナツミA(ポチと私がいれば大丈夫でしょう。シルフィアさんは、スミエさんの補佐に回って貰った
     方が良いかと。)
シルフィア(貴族共に顔が割れてるからねぇ・・・性転換状態で乗り込むのが良いわね。)
   育成のスペシャリストたるミツキとナツミA。今後のリューヴィスの事は、この姉妹に任せ
   れば問題ない。王城に単独潜入中のスミエの補佐に、シルフィアを当てたい所だが。
スミエ(ローブと仮面も用いれば問題ないと思います。それに、ここからでも城下町の様相が分かり
    ますし。)
エリシェ(ええ、スミエ様が仰る通り、物々しさが伝わってきます。)
ヘシュナ(徐々に避難をした方が良いかも知れませんね。)
   王城周辺の様相が、念話でも痛いほど伝わってくる。それだけ、マイナスの力が集まり出して
   いる証拠だ。最悪の場合、ここがラストダンジョンと化しそうで怖い。

オルドラ(マスター、シュリーベルの移動準備は整ったぞ。デュヴィジェ嬢の力で、何時でも大量
     転送が可能になっている。)
ミスターT(了解。問題は移転先だが・・・どうするか。)
イザリア(王城周辺の大陸より南東、ここと同程度の巨大大陸があります。まだ手付かず状態になり
     ますが、開拓すれば住み易い場所となるでしょう。)
ミツキ(流石は現地人の魔王ちゃん、やりおるわぅ♪)
イザリア(フフッ、恐れ入ります。)
    本当だわ。この異世界惑星に降り立って、実質数万年が経過しているイザリア。全ての大陸
   の様相は把握済みのようである。
ミスターT(魔物とかは大丈夫か?)
イザリア(自我や知力が高い魔物は、同士として共に過ごしていますが、野生の魔物はどうしようも
     ありません。個別に対処するしかないでしょう。)
ラフィナ(モンスターテイマーですか・・・それはまた・・・。)
ミスターT(はぁ・・・。)
   イザリアが仲間の魔物達、彼女が説得して同士に迎え入れたと言っていた。つまり、ラフィナ
   が言う通りモンスターテイマー、魔物使いである。それに一際興奮しだす身内の面々。
ミツキ(わたにケルベロスナイトをモフらせろわぅ!)
ナツミA(モフ道介入かしら。)
シルフィア(モフ道介入、懐かしいわねぇ。)
ミツキ(モモフ・モフ・モモフ♪)
   何ともまあ・・・。隙あらばネタに走るミツキに、否が応でも笑わせられる。自然的に繰り
   出すため、為す術がない感じだわ・・・。

イザリア(貴方はどうされるのですか?)
ミスターT(俺か、北東の造船都市に行ってみようと思う。今後を考えて、ミツキTさん達はここに
      いた方が良いだろう。)
ミツキT(でしょうね。あの貴族共がどう出てくるか不明ですし。リューヴィスの皆様方を何とか
     しないといけません。)
    現状を踏まえると、リューヴィスの女性陣の安全確保も最優先となる。例の愚物共は必ず
   襲来してくるだろうしな。しかし、今は造船都市の方の探索も必要だ。
オルドラ(南東大陸への移動の目処が立ったら、こちらに来た方が良いだろう。デハラードの全員も
     移動させるつもりだ。)
ヘシュナ(万事お任せを。デュヴィジェ様と共に、皆様方を完全移動させてみせますよ。)
デュヴィジェ(小母様となら全く問題ありませんね。)
   ニヤケ顔で語る姿が脳裏に過ぎる。デュヴィジェもヘシュナも、己の力を出し惜しみする事は
   一切ない。確実に出来得る行動を取ってくれる。
ミスターT(妹達はどうする?)
アクリス(私達は少々問題があるのですが・・・。)
ミスターT(お前さん達が過ごした孤児院がここにあったしな。それに、ここの女性陣が大変懐いて
      いる。下手に動いていなくなった場合、どうなるかは想像が付く。)
ネルビア(今はここに残った方が良さそうです、すみません・・・。)
   リューヴィスの女性陣の修行を担当していたのは、妹達10人とトラガンチームの面々だ。
   その経緯からして、突然姿を消すのは問題が生じてくる。挙がった通り、ここに残った方が
   良いだろうな。

エメリナ(では、私達がお供致しますよ。)
フューリス(言葉は悪いですが、リューヴィスでは警護側に回っており、皆様方との会話は少ない
      状態でしたので。)
テューシャ(私達は一応、啓示を受けている身。1つの場所に留まる事を許されませんからね。)
ミスターT(そうか・・・。)
    俺との共闘を買って出てくる3人。確かに彼女達は妹達とは異なり、リューヴィスに来て
   からは一歩身を引いて行動していた。皮肉にもそれが意識の分散をさせたとも思える。
カネッド(本当は・・・兄貴と一緒に行きたかったのですけど・・・。)
ジェイニー(本当にすみません・・・。)
ミスターT(大丈夫、気にしなさんな。)
   申し訳なさそうに語る妹達。だが、今は彼女達の力はリューヴィスの女性陣に必要だ。ここは
   我慢して貰うしかない。
ミスターT(サラさんとセラさんに、トラガンチームの面々も警護を続けてくれ。)
サラ&セラ(ラジャー♪)
ミツキ(ウッシッシッ♪ 扱き使ってやるから、覚悟するわぅ♪)
ナツミA(そうは言うけど、率先垂範で動こうとするのは貴方じゃないのよ。)
ミツキ(バレたわぅか?!)
シルフィア(はぁ・・・相変わらずよねぇ。)
   何ともまあ・・・。何時如何なる時でもボケを炸裂させるミツキ。その術中にハマっている
   俺達は、自然と笑ってしまうのは言うまでもない。まあ確かに、彼女の力もリューヴィスの
   女性陣には必要不可欠だわな。


    作戦会議を行った後、静かに目を開ける。既に周りは夜となっており、静まり返っている。
   所々に警護担当のトラガンチームがおり、目が合うと小さく頷いてくれた。徐に歩みを始め、
   そのまま東門の方へと向かった。

    先の伯爵共の戦いの中、性転換状態を解いた。女性から男性に姿が変わったため、ここの
   女性陣には嫌な目で見られている。それに、虐待を受けた事から、今は男性自体を見させる
   事はさせたくない。造船都市への移動は、今から赴いた方がいい。



ダークH「マスター、移動の準備はできていますよ。」
ウインド「よろしくお願いしますね。」
ミスターT「ああ、頼むわ。」
    静かに東門より表に出ると、待機中の荷馬車があった。先程の作戦会議中に、ウインドと
   ダークHが既に準備を整えてくれていた。その傍らにはエメリナ・フューリス・テューシャの
   3人もいる。そして・・・。
イザリア「今回は私もお供します。」
ミスターT「魔王自ら共闘、か。世も末だな。」
イザリア「ふん、言ってて下さいな。」
   態とらしく茶化すと、顔を膨らませてソッポを向く。仮にも魔王の大任を拝している存在だ、
   この姿は実に新鮮である。
ミスターT「それよりも、魔大陸の方は良いのか?」
イザリア「姉と妹が取り仕切っています。それに近々、妹はオルドラ様の元に向かわれますので。」
ミスターT「・・・義父との再会、だな。」
   出発準備が完了したので、音を立てずに商業都市を出て行く。何時もとは全く異なる感じだ。
   今回の旅路は、以前とは異なる流れだわ。

    荷馬車に揺られ、商業都市リューヴィスから離れて行く。その際、同都市の壁門の上部に
   小さく明かりが灯った。それが小さく揺れている。

アクリス(この灯かりですが、お子様方のご厚意ですよ。)
ネルビア(ミスターTさんが出発したのを知られて、感謝の合図との事です。)
ジェイニー(大人の方々はあのままでしたが、お子様方は貴方を気にしていらっしゃいました。)
ミスターT(・・・そうか。)
    妹達から念話が入る。この灯かりは、リューヴィスの幼子達によるものだった。その厚意を
   知ると、自然と涙が溢れてくる。見てくれている者はいる・・・本当に感謝に堪えない。
テューシャ(お子様方の思いを胸に、今は突き進みましょう。)
ミスターT(・・・そうだな。)
   ソッと俺の両手を自分の両手で握り締める彼女。念話は個々の内情を全て窺い知れるため、
   こちらが涙している事を感じ貰い泣きをしてくれていた。

    夜間により周辺への注目もあるためか、灯かりは1つだけ。しかし、俺達が去って行く間、
   ずっと小さな明かりは左右に揺れてくれている。その厚意の灯かりを、荷馬車の中から見つめ
   続けた・・・。

    中半へと続く。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

戻る