アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝8
〜覆面の探索者〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝8 〜覆面の探索者〜
    〜第1部・第12話 海上対決5〜
エメリナ(マスター、ここは大丈夫そうなので、一度レプリカ大和の方を見て来ては?)
    粗方撃滅してきた頃を見計らって、エメリナより提示をされた。ここもリューヴィスも人員
   は足りているので、今は人員が足りないレプリカ大和への様子見を促された。
ミスターT(そうだな・・・では様子を見てくる。デュヴィジェさん、レプリカ大和へ転送を。)
デュヴィジェ(了解。)
   既に転送移動を確立した現状、即座にレプリカ大和へ転送をしてくれるデュヴィジェ。一度
   訪れた場所か、知っている人物がいる場所であれば、即座に転送が可能なのだ。これは瞬間
   移動などと同じ概念である。

    飛ばされた先は、レプリカ大和の艦首部分。目の前に広がった光景は、夥しい数の海賊船が
   迫り来る様相だった。数百隻はいるだろう。凄まじい光景である。しかし、俺達を取り囲む
   だけで、まだ攻撃はして来ない。

エリシェ(あら、マスターもお出でです?)
ミスターT(エメリナさんの提言よ。向こうは押しているから、こちらの様子を見るべきだと。)
ラフィナ(ありがとうございます。ただ、完全に一触即発の状態ですけど。)
ミスターT(そのようだわ。)
    周りを見渡すと、とにかく夥しい海賊船がレプリカ大和を取り囲んでいる。新大陸の方への
   上陸はないとの事だ。まあ、今まで見た事がない鋼鉄の船が目の前にあるのだ、警戒しない
   方がおかしい。
エリシェ(拡声器などがあれば、投降とか呼び掛けて来そうですけど。)
ミスターT(それよりも、相手の搭乗員は人間か?)
ラフィナ(残念ながら、全て人間が乗っています。こちらは無差別攻撃はできません。)
ミスターT(なら、動かなくさせればいい。)
   小さくニヤリと笑って見せると、その意図を窺い知り2人も小さくニヤリと笑う。致死に至ら
   ない一撃であれば、問題なく撤収できるだろう。

    頃合いを見計らったのか、全ての海賊船が一斉に大砲を発射しだした。地球では大航海時代
   で活躍した、あの大砲群である。鉄球を飛ばすタイプだが、人間が当たれば即死しかねない。
   だが、当然ながらレプリカ大和にもアレが施されている。

    数千以上の砲弾が艦体へと飛来するも、手前に張られているバリアとシールドに阻まれる。
   どうやら、この異世界の大砲は着弾爆発タイプではないらしい。放たれた砲弾のどれもが、
   ただ打ち落とされるだけという散々な結果となっている。

ラフィナ(う〜ん・・・間違いなく青褪めてますねぇ。)
エリシェ(あの程度の砲弾など、直撃しても掠り傷すらも受けないのですがね。それ以前に、バリア
     とシールドの防御機構の前では、全て無力化しますし。)
    恐ろしいまでにニヤケ顔の2人に、ただただ呆れるしかない。しかし、相手の攻撃は間違い
   なくこちらを殺しに掛かって来ている。ならば、宣戦布告と取っていい。
ミスターT(さて、反撃しますか。ルビナさんや、お前さんの出番だ。海賊船の帆やマストだけを
      撃ち抜いてくれ。)
ルビナ(了解〜っ!)
   今まで聞いた事がないような、嬉しそうな声色で返して来た。ルビナもデュヴィジェ達の影響
   により、アキバの色に染まりつつあると伺っている。今が正に最高潮となるのだろうな。

    ルビナの号令により、レプリカ大和の各砲塔が旋回していく。何度見ても、46cm主砲の
   旋回する様は実に格好いい。この間にも、海賊船群からの砲撃は続いているが、どれもバリア
   とシールドに阻まれて無効化されていた。

    準備ができた砲塔から、独自に攻撃を開始しだした。放たれた砲弾は、ルビナの超能力に
   より、誘導制御されている。それらが海賊船の帆やマストを正確に撃ち抜いていく。そして、
   撃ち抜いた後の砲弾は海面に着弾し、凄まじい水飛沫を発している。

    超絶的な規格外の攻撃を目の当たりにしたようで、海賊船群の攻撃が一瞬止まった。そう、
   海上が完全に静まり返ったのだ。過去に地球で、実際にオリジナルの戦艦大和が、一瞬だけ
   大海原の覇者となった時がある。正にそれを彷彿とさせるかの様相だ。

    次の攻撃を行うべく各砲塔が旋回をしだすと、何と海賊船群が撤収を始めだした。たった
   一度の砲撃だけで、相手の戦意を喪失させてしまったのだ。それに呆気に取られるのだが、
   優越感が出てしまうのは浅はかな証拠だろうか・・・。

    ただ、完全には引き上げない海賊船もおり、そこには対空銃座による威嚇射撃を行った。
   主砲や副砲よりは各段に弱いのだが、相手の装甲を踏まえれば致死性は非常に高い。木造の
   船体などバラバラにしてしまうだろう。

    海上に着弾する弾丸が、海賊船群の撤退を促していく。効果がない船には、副砲による威嚇
   射撃も行いだしている。仕舞いには、大空へ向けて主砲を放ちだしていた。端から見れば、
   無駄撃ちに近い様相だが、相手にとっては見た事もない攻撃だ。驚異的な一撃であると判断
   するには十分効果があるだろう。

    ちなみに、レプリカ大和の各砲塔は、その殆どが全自動で動く。地球でのイージス艦にも
   搭載されている、自動追尾制御装置も施されている。狙われたら最後、その砲弾から逃れる
   術はない。更にルビナの超能力もあり、一撃必中の弾丸を飛ばす事ができる。

    外見こそ、第二次世界大戦の遺物だが、その中身や使われている素材は、地球の現段階の
   技術力では太刀打ちできない。空や宇宙こそ挑めないが、正に万能戦艦そのものである。

ミスターT(・・・何だか哀れに見えてきた・・・。)
エリシェ(死亡者が出なければ、何でもござれですよ。今現在の広範囲生体レーダーの反応だと、
     海上に投げ出された海賊はいなさそうです。ルビナ様が上手く狙った証拠でしょう。)
ルビナ(当てようと思えば、幾らでも当てられますのよ、ウッフッフッ♪)
ミスターT(はぁ・・・そうですか・・・。)
    再び、今まで見た事がない言動をするルビナ。その様相は、完全に悪役だと言うしかない。
   まあ、相手を殺さずに済むのなら、安々しい攻撃なのだろうな。
ミスターT(・・・あの大戦時は、こうした艦船同士での攻撃が多かった。致死性の一撃は、搭乗者
      を即死させる事もあっただろう。その瞬間戦われていた、英霊の方々の勇気の行動には
      脱帽するしかない・・・。)
ラフィナ(それが戦争でしたからね。殺し殺されが当たり前の様相。人間の最も醜い姿が殺し合いに
     なりますし。しかも、それは間違いなく、エゴから発生したものでしたから。)
ミスターT(人殺しの道具で、人を生かす戦いをする、か。烏滸がましい事この上ないわ。)
   艦首部分から、周りの様相を窺いつつボヤく。これら兵装を使わなくても良い時代、それが
   訪れる時が来て欲しい。そのために、これら兵装を使い続ける、実に皮肉な話だわ。

    ちなみに、46cm主砲の第1砲塔の射撃時の爆風は、バリアとシールドの防御機構により
   相殺されている。爆音の方は凄まじかったのだが、両耳の鼓膜を破る程ではなかった。これも
   防御機構の恩恵らしい。俺には理解できない概念だが・・・。

ミスターT(とりあえず、ここは大丈夫そうだな。デュヴィジェさんや、リューヴィスへと頼む。)
デュヴィジェ(了解。)
エリシェ(後始末は全てお任せを。)
ミスターT(程々にな・・・。)
    最後の最後まで一気盛んなエリシェとラフィナ。ルビナも同じ気質であり、それが躯屡聖堕
   メンバーにも飛び火している。しかし、不殺の精神を心得ているため、どれも威嚇射撃や致死
   に至らない攻撃ばかりだ。

    レプリカ大和の方は一切問題がなくなったので、最後は商業都市リューヴィスに転送移動
   して貰った。デュヴィジェの能力は、本当に凄いとしか言い様がないわ。



ミツキ「?! うにゃー! ビックリさせないでくれわぅ!」
ミスターT「す・・すまん。」
    今正に相手と交戦中のミツキの目の前に飛ばされてきた。それを見た彼女は驚愕している。
   しかし、3つの人工腕部にマデュース改を持った人物が現れた事で、相手側は超絶的に驚いて
   いるのが何とも言えない。
ナツミA「念話で全て窺っていましたが、圧巻だったようですね。」
ミスターT「ああ、本当にそう思う。レプリカであろうが、戦艦大和の攻撃はヤバ過ぎる。」
ミツキ「ぬぅーん! 波動砲を発射するわぅか?!」
ナツミA「艦首のスーパーレールガンが無難だと思うけど。」
ミツキ「イスカンダ・・・むぐっ?!」
ナツミA「おやめなさい。」
   何とも・・・。ボケとツッコミの応酬は、戦闘中の場でも行われているとは・・・。その2人
   に襲い掛かる相手を、笑いながら蹴散らしているサラとセラが何とも言えない。

    そして、侵攻して来た相手を見て呆れ返った。リューヴィスへ到来した軍団は、ゾンビや
   スケルトンではなく人間の男性だったからだ。しかも、騎兵や重装兵と以前と変わらない人員
   である。これには呆れ返ると同時に、怒りの方が出始めてきた。

ミツキT「小父様も来られたのですね。まあでも、この様相を見せたくはなかったのですけど。」
ミスターT「ああ・・・見たくなかったわ・・・。」
    近場の女性に襲い掛かろうとしている兵士を、マデュース改でぶん殴る。大盾で殴られた
   相手は、凄まじい勢いで吹き飛んでいった。そして気付いたが、庇った女性はリューヴィス
   在住の戦士である。しかし、以前の様な嫌な目を向けられる事はなかった。

    むしろ、不意に現れた俺に対して、リューヴィスの女性達が小さく頭を下げだしていた。
   ナツミAが以前語っていた通り、感謝の一念を出しているようだ。感謝するのは俺の方だと
   いうのにな。

    俺は小さく頷きながら、彼女達に襲い掛かる兵士共を片っ端から叩き潰して回った。以前は
   後手に回り立ち尽くすのみだったが、今回は徹底的に攻撃に回り続けた。自然と湧き上がって
   来た、怒りと憎しみを込めつつ、致死に至らない程度の一撃で。

カネッド「おおぅ、兄貴も頑張りますな!」
ミスターT「お前さん達には気苦労を掛けっ放しだわ、本当に申し訳ない。」
アクリス「何を仰いますか。貴方の考えは分かりますので、お気になさらないで下さい。」
キャイス「今回もどうせ、裏ではあのカス馬鹿野郎が手を引いているに違いないですし。」
    久方振りに妹達と会うのだが、以前よりも逞しくなっている事に気が付いた。僅かな期間
   ではあるが、相当鍛錬を積んできたのだろう。同時に、リューヴィスの女性陣の力強さも十分
   肯ける。
ルマリネ「皆さん、滅茶苦茶強くなりましたよ。連携の方も、相当上手くなりましたし。」
ファイサ「もう、私達がお教えする事はないぐらいで。」
ミスターT「努力家だわな。」
   迫り来る攻撃をトリプルマデュース改で防ぎつつ、その合間を見て攻撃に転じていく女性陣。
   身内や妹達が得意としていた戦術を、リューヴィスの女性陣も難なくこなしていた。相当な
   鍛錬を積んできた証拠だわ。
メラエア「ここは私達に任せて、遊撃を行って下さい。街中にも入り込んだ賊徒がいますし。」
ミスターT「ハハッ、賊徒か。良い言い回しだわ。」
アーシスト「肝っ玉が据わらない賊徒共ですよ。」
ミスターT「いざと言う時は、女性の方が力強くなるからの。俺も見習わないといけないわ。」
   本当に痛感させられる。いざと言う時の女性力は、計り知れない程の力を発揮しだす。対して
   野郎の方は萎縮するのが関の山だ。これが本当の対比である。

    中央道路を妹達に任せて、俺は遊撃を担当する事にした。すると、自発的に共闘を申し出て
   来るリューヴィスの女性陣。その姿を見て、自然と涙が溢れてくる。あそこまで追い込まれて
   いた女性陣が、ここまで立ち直れるようになったのだ、感極まるしかない・・・。

    共闘を買って出てくれた女性陣を守りつつ、商業都市に入り込んだ賊徒を片っ端から倒して
   回っていった。こうして彼女達の輪の中に入れた事に、心から感謝したい・・・。

    第13話へ続く。

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