アルティメット エキサイティングファイターズ 外伝8 〜覆面の探索者〜 |
アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝8 〜覆面の探索者〜 〜第2部・第2話 私利私欲の罠1〜 新大陸へと移住してから数週間。現地の開拓は続いている。未踏査の大陸だったため、その 荒々しさはなかなかのものらしい。野生の魔物は数多く、複数のダンジョンが発見された。 イザリア達もこの様相には驚いているとの事だ。 そもそも、地球型の居住可能な惑星の発見が、超絶的に奇跡的であったという点が挙がる。 しかも、魔力や魔法の概念がある事自体、理路整然と物事を解釈する宇宙種族達からすれば、 有り得ない環境だとも言い切っている。 偶然的に発生した惑星だったのか、そこはイザリア達をしても不明との事だ。しかし、全て が偶然で片付けられるほど、物事は生易しくはない。必ず意味があっての今に至るのだから。 俺達がこの異世界に訪れたのと同じ様に・・・。 ナッツ「よくよく考えれば、地球側も居住可能な惑星の発見に躍起になってますよね。この異世界を 知ったら、移住しようとしてくるかも知れませんし。」 ウエスト「地球と全く同じ環境であれば、だがね。魔力や魔物などの概念がある以上、地球人には 到底理解できない惑星になるしな。」 エンルイ「それに・・・今は落ち着いていますが、地球での各紛争を必ず持ち込むでしょう。己が 新惑星の王だと言い出す者も。」 サイバー「人は、歴史とは、繰り返されるもの。シルフィア嬢が口癖のそれが痛感できますよね。」 屋外で新たな武器開発に挑んでいる四天王。その彼らがボヤいている。俺も懸念していた ものだ。しかし、現状は俺達だけしか来れていないため、問題は皆無ではある。 ミスターT「・・・まさかとは思うが、王城側が召喚で地球の愚者を呼ぶ事はあるか?」 ルビナ「有り得ないと思います。この異世界惑星と地球とは、数億光年離れています。王城側の魔術 を用いようが、届かない距離だと思いますし。」 イザリア「そもそも、連中は悪の権化です。小父様も仰っている概念、善悪判断センサーの手前から して、転送装置を操作する事自体不可能です。更に、私の転送召喚も、奇跡的なもので マッチングした感じでしたし。」 ミツキ「トランジットげふんげふんは伊達じゃないわぅ。」 ラフィナ「本当ですよね。」 茶化しとボケを入れるも、至って真面目な顔のミツキとラフィナ。ここへ大規模転送が可能に なったのは、ラフィナの機転によるものだった。マンガやアニメの概念がなく、それも余裕 すら無さ過ぎる異世界惑星の悪党共には、到底理解できない概念そのものだ。 イザリア「しかし、お兄様方のご意見はご尤もです。人の歴史、特に地球人の歴史を窺いましたが、 争いや私利私欲から逃れられない業に支配されているとも見えます。内在している力とも 言えるのかと。そしてそれは、ここの住人達にも十分当てはまりますし。」 ナツミA「ノホホンとしている感じの4人ですが、誰よりも世上を憂いて行動してくれてますので。 重要な懸念材料として、以後の世上を見守って下さい。」 彼女の発言に、頭を下げる4人。ミツキを含めた6人は、恐ろしいほどの強い絆で結ばれて いる。その度合いだけなら、身内の中で最強である。誰も敵う者はいない。その彼らが言い 切るのだから、挙げられた懸念材料は一番強力な壁となってくる。 ミツキ「しかし、魔王・大魔王・魔女が揃い踏みで、善側に動いている現状は見事ですよね。私達が 知るファンタジー世界観では、魔王側は敵対する存在ですし。」 ミスターT「そうだな。まあでも、聖側となる存在が悪党と化した現状、3人が切り札の1つになる のは言うまでもない。そもそも、三姉妹は異世界の創生者だ。魔王などのマイナスの 概念は絶対に当てはまらないしな。」 エメリナ「偽勇者共が正に魔王そのものですよね。」 ミスターT「本当にそう思う。」 出来上がった武器の試し振りをするエメリナ達。完成度を測ってから、それらを全ての移住組 に渡していく形になる。オルドラの方は、その彼らの指揮を担っていた。 ミスターT「さて・・・今後どう出るか、嫌みたらしく見守ってやろうかね。」 ミツキ「フッフッフッ。」 俺の呟きに、周りの面々が不気味に微笑みだす。しかし、その奥底にあるのは、痛烈なまでの 怒りである。ただ、それを表に出すと、マイナス面の感情に支配されかねない。ここはこの 程度の茶化し的な対応でいい。 その後も武器開発は続く。武器以外に防具や道具もしかり。異世界の鉱物資源での作成と あってか、そのクオリティは相当なものだと4人は語っていた。鍛冶屋のオルドラも太鼓判を 押すほどの完成度である。 この場合だが、その製造技法が地球仕込みなため、材料に関しては異世界惑星の物を使って いる。仮に俺達の武器などが奪われても、鉱物資源さえ解析されなければ問題はない。それら の製造技法に関しては、オルドラでも実現できないほどの手法を使っている。真似は出来ない 逸品揃いなのだ。 これらを踏まえると、改めてマデュース改などや携帯シリーズの獲物を作り上げた四天王 には、とにかく脱帽するしかない。その補佐をするミュティ・シスターズもしかり。職人魂が 熱く燃え上がる熱血漢達だわ。 それから数日後、懸念していた事が起こった。しかし、それは新大陸ではなく、王城周辺 での出来事だ。そう、人間のエゴ的部分から発生した、略奪などの醜い争いだ。 これは現地にて、ヒドゥン状態の機械兵士メカドッグ嬢達による情報だ。機械兵士に筐体を 変えている面々もいるため、こちらと同じ行動ができる。その背中にメカドッグ筐体を合体 させたなら飛行も可能となる。 ともあれ、この流れにより、造船都市側に難民が流れて行かないかが気掛かりだ。 オルドラ(こんな事を目指していたんじゃないだろうが・・・。) カネッド(本当っすよね・・・。) メカドッグ嬢達からの念話を窺い、この上なく怒り心頭の2人。またそれは、移住した面々 の誰もが怒りの表情を浮かべていた。 ウインド(地球での暴動などは、警察や軍隊が出動するのですが、今の王城の警察・軍隊機構は全く 機能していません。皆様方が移住された後、3大都市が蛻の殻となったのを良い事に、 土地の独占や権力との結託などが横行しだしています。) ダークH(失礼な言い回しになりますが、皆様方は清らかな心の状態で移住されたのが幸いでした。 今の王城の様な心で新天地に赴いていたら、同じ火種を持ち込むのは想像に難しくない でしょう。) ヘシュナ(人を守る意味はあるのか、と。) 一際怒りの表情を浮かべているヘシュナ。その暴動の発端者が人間であったからだ。他の種族 などは、偏見や差別による暴行対象にもなっている。人間の醜さを垣間見て、怒りと共に遣る 瀬無さが込み上げてくる。 ミスターT(アルドディーレの方は問題ないか?) ナセリス(全く問題ありません。それに、王城からは50km以上離れているので、直ぐに到達する 事はないでしょう。ただ、油断は禁物ですが。) ミスターT(・・・王城の面々も助けたいが・・・。) 俺の思いは、念話を通して誰もが抱いている一念と同じだった。 現状は、どうする事も出来ない。仮に助け船を出したとしても、ここまで火種が増加した 人物を新天地に入れるのは、明らかに危険過ぎる。 特に新天地は8割以上が女性陣だ。暴徒の火種を持った野郎が押し入った場合、その後の 結末は火を見るより明らかである。過去には、それらに近い境遇から逃げ出すために、商業 都市リューヴィスに逃げ込んできたのだから。 彼女達にはもう、あの悲惨さを絶対に味あわせたくない・・・。 中半へと続く。 |
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