アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝8
〜覆面の探索者〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝8 〜覆面の探索者〜
    〜第2部・第2話 私利私欲の罠3〜
シルフィア(・・・君さ、ここまで届くぐらいの殺気と闘気を放つのは止めた方がいいわよ。)
スミエ(黒いモヤ事変を彷彿とさせますよね。)
    言われて気が付く。メカドッグ嬢達からの情報で、無意識に怒りと憎しみが増大し、殺気と
   闘気の心当てが出ていたようだ。それが念話を通して、伝わる面々全てに飛来している。
シルフィア(そこまで悩んでいるなら、極論を言いましょうか。ここまで愚かな存在は、救う価値
      すらないわ。傍観より無視しなさいな、当然の報いよ。)
スミエ(餓鬼と畜生そのもの、地獄絵図とも。言わばこれらは悪い見本、我々が同じ境遇に至らない
    ように、彼らが実演してくれているようなものでも。烏滸がましい考えですけどね。)
シルフィア(師匠も甘いですよ、ハッキリと言い切る時は言い切るべきです。)
スミエ(ハハッ、相変わらず手厳しいです。)
   達観的な解釈をする2人。これに関しては、もはやどうする事もできないと言うべきだろう。
   いや、できたとしても、それこそ偽善者そのものになる。本当にどうする事もできない。
ミスT(・・・今の世上に憎まれようが、未来の世上に感謝される行動をせよ、か。)
シルフィア(それこそが警護者の理よ。まあ、君は最初からそこに帰結しているけどね。)
エリシェ(本当ですよ。それなのに、上辺の右往左往で自己嫌悪に陥って・・・。)
ラフィナ(毎度毎度の自問自答には呆れます・・・。)
シルフィア(アハハッ、そうは言うけど、しっかり付き合っているじゃない。)
ミスT(何とも・・・。)
   最後の最後で締められた。そう、既に進むべき道は定まっている。だが、こうも悲惨な現状を
   見せられると、右往左往してしまうのが実状だ。人として当然の結果だろう。

    地球でも、異世界惑星でも、同じ様な苦悩を味わう事になる。しかしそれは、生きる上で
   絶対に避けられないものだ。特に警護者は、この概念からは絶対に逃れられず、更に傍観する
   しかない時も出てくる。今が正にその時だ。

    前に身内達も言っていたが、それら苦悩や苦痛が嫌なら、最初から警護者の道など進むべき
   ではない。警護者の生き様は、完全に損なものばかりだからだ。それでも、この道に進んだ。
   全てを覚悟の上で突き進む、そう決意して至った道なのだ。

ネルビア(マスターのその警護者の職業は、冒険者や勇者などの職業とは掛け離れていますよね。)
エメリナ(勇者などの啓示の概念は、魔王や魔族などを打ち滅ぼし、世界を救う者になる。しかし、
     魔族側からすれば、人間側が身勝手に決めた啓示そのもの。酷いものですよね。)
カネッド(冒険者は自由気ままに生きる職業とも言えますが、自由故に全て自己責任として帰って
     くる。最近の冒険者は、その概念を棚に上げて、身勝手極まりない事をする者が多い。)
テューシャ(最初、マスターの警護者という職業が、一体どういうものなのかと思っていました。
      軽い気持ちで行う職業なのかと。ですが、実際はここまで己を追い込むものだったとは
      思いもしませんでした。)
    妹達が語る内容を伺って、己の生き様が途方もなく厳しいものであると痛感させられる。
   同時に、それがどれだけ重要な行動である事も痛感させられた。調停者と裁定者を担うとは、
   本当に烏滸がましい事この上ない。しかし、誰かが担わなければならないのもまた事実。
オルドラ(俺には、お前さん達の様には戦えない。だが、目の前の存在なら守り通せる。それに、
     警護者という存在が調停者と裁定者を担う必要があるなら、お嬢方が言う通り傍観する
     時も必要だ。)
ミスT(・・・すまない、何時もの悪いクセが出てしまって。)
エリシェ(お気になさらずに。貴方と共に歩みだした時から、覚悟の上のものですよ。それに、その
     愚痴的な事を言い放つも、後の行動への起爆剤になるなら安いものです。)
ラフィナ(愚痴を聞かされる度に思いますが、そのバリエーションの多さには呆れますけどね。)
ミスT(ハハッ、そうだな。悪かったよ。)
   俺の言葉に、周りが安堵するのを感じた。地球でもこうして、数多くの愚痴を言ってきた。
   しかし、この異世界惑星では、その度合いがかなり強く出ている。それだけ、殺伐とした世上
   であると言える。何時の間にか、かなりのストレスが溜まっていたようだわ・・・。


シルフィア(そう言えばさ、最近休んでないんじゃない?)
ミスT(ん? 睡眠は例の効果で無効化させてるから、ここに来てから一睡もしてない。)
シルフィア(はぁ・・・馬鹿よね。)
ミツキ(元からだから仕方がないわぅ。)
    不安定な精神状態を見抜き、休息を取っていないのかと聞いてくる。ここ異世界惑星に来て
   以来、睡眠欲を打ち消すペンダント効果で一睡もしていない。それを挙げると、呆れの一念を
   放ってくる一同。特にその様相を知らなかった面々は、相当呆れ返っている。
シルフィア(そのツケはどうしようもないけど、休息はしっかり取りなさい。今の君には休息が必要
      だろうし。)
ミュティナ(普通の生命体が行う行動を度外視するから、要らぬ考えとかが出るんですよ。お姉様
      からもキツく言って下さい。)
シルフィア(そうは言うけどねぇ・・・分からないでもない一念だし。)
ミツキ(寝ないで暴れられるなら、永遠にモフり放題わぅ!)
ナツミA(モフられ続ける方は、たまったもんじゃないけど。)
ミスT(はぁ・・・少し休むか・・・。)
   過度の力の使い様は危ないと諭されていた。特にミュティナからは、痛烈なまでに戒められて
   いる。実際に効果を切った後は、数日は睡魔に襲われ動けなくなった。今この効果を切るのは
   自殺行為なため、このままで進むしかない。

    それでも、異世界惑星に来てからは、色々な考えが脳裏を過ぎり捲くる。地球では考えも
   しない事を考えさせられるからだろう。改めて、警護者とは何なのかというのを、異世界惑星
   での紛争を見て思い知らされた。



    異世界惑星に来てから、休みらしい休みを取らずにいたツケが回ってきたようだ。それを
   窺い知った一同は、俺に強制的に休息を取らせてくる。とは言うものの、新大陸での探索が
   終わっておらず、探索部隊の一員として動く事を勧められた。

    どうやら、この新大陸はダンジョン的な洞窟が数多くあるらしく、非常に危険度が高いとの
   事だ。何れ火種をとなるなら、ダンジョンの完全攻略を破壊を行うべきだが、そこから発掘
   できる物資も非常に魅力的らしい。宝箱や鉱物資源がそれに当たる。

    と言うか、鉱物資源なら分かるのだが、誰も立ち入った人物がいない様子のダンジョンに、
   未取得の宝箱がある自体おかしい。自然的に生成されるものでは絶対にないので、魔物が強奪
   したのを隠したと取るべきだろうか。ここは、異世界惑星の創生に携わった三姉妹も不明な
   点だとの事。

    更に、新大陸の南東には、朽ち掛けの塔らしき建物もあるらしい。その周辺には、遺跡と
   思われる建物もあるらしい。どれも、あるらしい、と言うのは、メカドッグ嬢達の探索で得た
   情報に過ぎないからだ。

サラ「今日は何処のダンジョン攻略で?」
ファイサ「現状で未踏査なのは、南東の塔や遺跡でしょうか。」
セラ「ダンジョンと言うより建物ですよね。」
メラエア「ワクワクしますよ。」
    今回の探索メンバーは、サラとセラに妹達13人である。護衛は、俺とリューヴィス女傑陣
   の面々となる。俺は先の愚痴会議的な流れの後、性転換状態が解けたため男性の姿である。
   しかし、今は俺を見ても怖がる素振りは見せて来ない。
ルマリネ「皆さん大丈夫そうですね。」
ミスターT「逆に俺の方が緊張してるんだが・・・。」
   彼女達とは久方振りの共闘とあり、俺自身かなり緊張している。リューヴィス女傑陣が男性に
   虐待された過去があるため、そのトラウマは今も残っている。俺自身の今の姿が男性なので、
   下手に刺激しないかどうか非常に心配だ・・・。
アーシスト「初対面の男性であれば、それは警戒もしますよ。しかし、マスターは皆さんの身体を
      完全に治療されたのも事実。貴方は救世主なんですよ。」
ミスターT「俺はそんな大層な奴じゃない。あの瞬間は、何振り構っていられなかった。自然的に
      出たもので、そこに私利私欲など一切ない。」
   そう、あの瞬間の女性陣の姿が、逝去直前のミツキTの姿とダブっていた。そして、もう二度
   と失わせないという強い一念が突き動かしてもいた。その後は、ヘシュナ直伝の治癒力で、
   全員を完全治療させるに至る。

    中半3へと続く。

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