アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝8
〜覆面の探索者〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝8 〜覆面の探索者〜
    〜第1部・第5話 秘剣と絆と1〜
    大都会カルーティアスに移動して数週間が経過。その間に魔物達の襲撃や、偽勇者共の横槍
   が多く目立つようになった。特に酷かったのは、エメリナ・フューリス・テューシャへの悪態
   である。

    それもそうだろう。この3人は、王城から正式に啓示を受けた、正真正銘の勇者達である。
   ミツキTがメカドッグ嬢達と共に得た情報の、もう1つの勇者パーティーその者達であった。
   そして、その存在が善心である事も把握できた。

    先の魔物達の襲撃時、3人にバリアとシールドの防御機構を施した。直ぐに同効果が発揮
   された所を窺えば、彼女達が善心に溢れている証拠となる。少しでも悪心があれば、効果を
   発揮する事は絶対にできないのだ。

    同時に思ったのが、王城の啓示は本物であったという事だ。地球でのファンタジー作品群
   の啓示云々は、実際にあるのかどうかと信憑性が薄かった。だが、こうもしっかりとした証拠
   を突き付けられれば、否が応でも認めざろう得ない。

    そして、俺が異世界に飛ばされた理由も分かった。十中八九、彼女達を守り通す事だと。
   ただ、本当に飛ばされた事は分からないため、今はそれなのだと思いたい。



    正式にエメリナ・フューリス・テューシャと仲間になった事で、他の10人の拍車が掛かり
   始めた。今だに冒険者ランクがFである事を憂い、一同して3人のレベルアップを図りだした
   のだ。

    真の勇者達とはいえ、冒険者ランクはF止まりの3人。既にランクBの10人には、表向き
   には敵わない。更に実力も劣っているため、総合的に強化に走る事に決めたのである。まるで
   突然妹ができた姉のようである。

    しかし、問題点もあった。それは偽勇者共の動向が探れないためだ。大都会自体が連中を
   黙認してしまう傾向にあるため、モヤを掴むかのように擦り抜けてしまう。裏方で探索中の
   メカドッグ嬢達も目を光らせているが、雲隠れしてしまって見えない状態だった。

    あそこまで殺人的行為に走るぐらいだ、次は更に過激な行動に出るのは言うまでもない。
   これ以上、妹達を危険な目に遭わせる訳にはいかない。


デュヴィジェ(ふむ・・・一刻も早く、支援部隊を送るべきでしょうね。)
    定期連絡と題して、地球からの念話が届く。今もこちらに来る手段を模索中らしく、地団駄
   を踏んでいる状態みたいだ。身内は早くこちらに来て暴れたいらしく、日に日にその思いが
   強まっているらしい。
ヘシュナ(何処にでもいるんですよね、そういったカスは・・・。)
ナセリス(本当ですよね・・・。)
ミスターT(はぁ・・・。)
   今までの様相を全て一同に語った。当然ながら、我が事の様に激昂しだす。各種事変時でも、
   相手の理不尽・不条理の行動には激昂の嵐だった。特にヘシュナは、非常に重要となる悪役を
   担った事があるため、偽勇者共の言動には超絶的な激昂度を現している・・・。
デュヴィジェ(一応ですが、座標軸が判明しても、飛ばせるのは数人ずつになると思われます。)
ヘシュナ(ゲートの規模が小さいのが原因なのですよね。)
ミスターT(個人兵装として送るしかないのが現状か。)
   悩ましいといった一念を感じ取れる。今も念話は飛ばせても、人物を飛ばす事ができない。
   この異世界の惑星の座標軸が探知できるなら、即座に転送装置で移動が可能との事だ。
デュヴィジェ(しかし・・・何とかしてみせます。現状を伺う所、時間がなさそうに思えますし。)
ヘシュナ(ありとあらゆる準備を整えて、その時を待ちますね。)
ミスターT(すまんな、恩に着るわ。)
   直ぐに暴れさせろという雰囲気は感じるが、それ以外に現状に危機感を募らせだしている。
   いくら、異世界の惑星事だとしても、そこに人の命が掛かっているのなら話は別だろう。

    警護者の理は、目の前の困っている存在を支え抜く事。これは昔も今も変わらないものだ。
   そして、その理を誰よりも理解してくれているのが、5大宇宙種族の面々となる。生命の次元
   から共感を示してくれていた。

    各事変に惑星事変、そして黒いモヤ事変。これらは彼らがいなければ、絶対に乗り越えられ
   なかったものである。今の俺達が存在できるのは、彼らがあってこそなのだから。

    今はその理を、異世界たる惑星に向けるべきである。どの様な環境や境遇になろうが、己の
   示す生き様は全く変わらない。それが警護者魂である。


    地球との念話を終えて、大都会へと意識を戻す。妹達は全員討伐クエストに赴いており、
   俺とミツキTは酒場の屋上で監視を続けている。表面上は監視と言う名の寛ぎに見えるが、
   裏方ではメカドッグ嬢達が縦横無尽に動き回ってくれていた。

    それでも、現段階で一番の災厄とも言える、偽勇者共の消息は掴めていない。俺と2回目の
   対峙の時は、もはや殺人鬼そのものとも言えた。自警団や騎士団が黙認を続けている以上、
   俺達だけで対策をし続けなければならない。

    先の地球との念話でも思ったが、今ほど身内の力が欲しいと思う時はなかった。



    丸1日、討伐クエストに入り浸りだった妹達。レベル差はあれど、13人で挑む姿は驚異的
   とも言い切れる。補佐のメカドッグ嬢達10人は、今では待機しているらしい。

カネッド「いやぁ・・・真の勇者は伊達じゃないわ。」
フューリス「カネッド様も凄い腕前をお持ちですよ。」
    同年代からか、直ぐに打ち解け合う13人。特に姉御肌のカネッドとダリネムが、新顔の
   3人をグイグイ引っ張り回していた。それに弱音を挙げずに付いていっている。
エメリナ「皆様方は、この様な修行を繰り返されていたのですか?」
キャイス「修行とは言うけど、殆ど何時も通りの戦いなんだけどね。」
テューシャ「その挑まれる姿勢が凄いですよ。」
アクリス「お褒めに預かり光栄です。」
   この和気藹々度は凄まじいとしか言い様がない。今時の言葉で言えば、女子力であろうか。
   トラガンの女性陣も同じ気質なため、もし会う事があれば凄い事になりそうだ。
ミスターT「今は力を付け続けるしかない。偽勇者共が何処で横槍を入れて来るか不明だしな。」
ネルビア「バリアとシールドの支援は、続けられて良いのでしょうか?」
ミスターT「それがないと殺される可能性が高い。それに、俺が一番危惧している部分は、女性の
      弱みを突いてくる事だ。同じ野郎として嫌になってくる。」
   吐き捨てるように呟いた。その意味合いは、10人と初めて出逢った時の流れが正にそれだ。
   その内容の意味を知った10人は、同じく怒りの表情を浮かべだしている。

ミスターT「本来ならば、バリアとシールドの防御機構は使い続けるのは得策じゃない。だが、その
      出し惜しみで悲惨な末路に至るのは我慢ならん。ならば、俺は問答無用でこの力を使い
      続ける。後はそれに奢らなければ良いだけだ。」
ミツキT「ですね。地球でもギガンテス一族と合流してからは、バリアとシールドの概念を常に発揮
     していたとの事ですし。力は使ってこそ真価を発揮する。間違った方に使わなければ、
     問題はないと思います。」
    できれば、5大宇宙種族が力は使わずにいたいもの。しかし、現状がそれを許してくれは
   しない。下手をすれば、やられる恐れも十分出てくる。
エメリナ「その地球という異世界でも、同じ様な戦いが頻発しているのですか?」
ミスターT「ここに飛ばされる直前までなら、デカい出来事は片付いた状態だったよ。それに、身内
      には超絶的なプロフェッショナル達が出揃っている。俺がいなくても問題はない。」
ミツキT「士気の問題では、小父様がいなくなった事で、ヤバいかも知れませんけどね。」
ミスターT「ミツキ達がいるのにか?」
ミツキT「あー・・・そうでした。」
   どうやら、ミツキT自身は奮起の自然体の存在を忘れていたようだ。地球では、ミツキ自身が
   正にその役割を担っている。超自然体で繰り出される鼓舞激励と叱咤激励は、一撃必殺の如く
   轟きを放っている。
ミスターT「彼女達や警護者の理を持つ強者がいれば、万事問題はない。あの戦いで経て来た力は、
      確実に彼らの礎になっているしな。」
ミツキT「物事には無駄な事は一切ない、ですからね。」
   全ての物事には意味がある、か。ミツキTが逝去直前に語っていた、言わば遺言的なものだ。
   今では俺達の永遠の指針の1つとなっている。


ミスターT「それで、何か提言があるそうだが?」
ネルビア「あ、はい。実は・・・。」
    俺達の常識離れした内容の会話を見ていて、介入の余地がなさそうな雰囲気の妹達。それに
   気付き、本題とする内容を切り出した。語られた内容は、獲物の強化に関してだった。

    今回までの討伐クエストで、流石に既存武器では限界が来だしている事が判明したらしい。
   同じ武器を使い続けるのも良いが、今後強大な魔物などが出てくるのは間違いない。そこで、
   武器や防具を専門に扱う都市に赴きたいとの事だった。

    獲物自体は戦闘での生死を分ける重要な物品だ。この件に関しては反論の余地は一切ない。
   ただ、その目的の場所まで距離があるため、自分達だけでは決断できなかったらしい。

ミツキT「あー、東にある工業都市ですか。メカドッグ嬢達が偵察済みですよ。」
ミスターT「そ・・そうですか・・・。」
    妹達の内容を聞いたミツキTが、実にアッケラカンと語りだす。それに一同して呆気に取ら
   れてしまう。そう言えば、先のメカドッグ嬢達を出撃させた時、異世界の大多数を知ったと
   言っていたわ・・・。
エメリナ「先日の魔物との戦いや、偽勇者との一騎打ちを踏まえると、既存の武器では心許ない感じ
     でした。それこそ、ミスターT様がお使いの槍と斧ですか、それが一番理に適っていると
     思います。」
ミスターT「携帯方天戟と携帯十字戟か。と言うか、携帯十字戟は斧扱いなのか。」
ミツキT「オーノー。」
   十字戟の属性にも驚いたが、ボソッと呟かされたボケに一同凍り付く。自分で言いながら、
   物凄い表情で同意を求めてくるミツキTに、どう返せば良いのか困惑する限りである・・・。


ミツキ(ごるぅあー! ボケはわたが担当するわぅー!)
    そして、ついに我慢の限界が来たのだろう。念話を通してミツキの叫びが飛び出してくる。
   それに一同して驚愕するしかない。特に驚いているのは、新規加入のエメリナ達だ。彼女達
   にも念話が通じた証拠である。
ミツキ(ズルいわぅ! 卑怯わぅ! 何時になったら暴れられるわぅか?!)
ミスターT(俺に聞くな俺に・・・。)
ミツキ(ムギャー!)
   はぁ・・・相当ご立腹の様子だ・・・。そしてそのご立腹度は彼女だけではない。近場にいる
   であろう、他の身内達も同じ思いを抱いている。
ナツミA(はぁ・・・すみませんTさん。でも、私達も“一部始終”を窺っているだけでは、流石に
     暴れたくなりますよ。)
シルフィア(ゲームの中の世界・・・ファンタジーな様相・・・こりゃ堪らないわね・・・。)
ミツキ(飛ばせぃ我が魂! 異世界で大暴れしてやるわぅ!)
   何と言うか・・・。何時もはツッコミや抑止力になるナツミAやシルフィアが、ミツキに匹敵
   するぐらいに暴走寸前である・・・。この場合はどうすれば良いのやら・・・。
デュヴィジェ(何度も挙げますが、そちらの座標の解明はできたのですが、まだ人を飛ばせるだけの
       座標軸が確定していないのですよ。確定さえすれば、直ぐにでも転送装置で飛ばせる
       のですが。)
ヘシュナ(一歩間違うと、大宇宙に飛ばされて消滅しかねませんし。)
デュヴィジェ(ですが・・・必ず赴けるようにします。私も暴れてみたいですからね。)
   意気盛んに燃え上がる思いを感じる。いや、痛烈なまでに感じざろう得ない。ここまで念話で
   伝わるのだから、当の本人達が来た場合は怖ろしい事になりそうだ・・・。

ミツキ(・・・とまあ、冗談はさておき。13人の勇者の方々、初めまして。ミツキと申します。
    Tさんが大変お世話になっているそうで。)
アクリス(あ・・・す・・すみません、呆気に取られていました。お初にお目に掛かります。私は
     アクリスと申します。)
    声を裏返しながら語るアクリス。まあ、まだ話せるだけマシなのだろう。他の12人は完全
   に呆気に取られており、声を失って呆然としている。こうした突発的な様相に対応できる点
   からして、アクリスの順応力は凄いとしか思えない。

    それからは、念話を通しての自己紹介や雑談が繰り広げられた。俺以外全員女性なため、
   俺の入る隙がなくなってくる。念話に没頭する一同を見つつ、静かに一服をして見守った。

    中半へと続く。

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