アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝8
〜覆面の探索者〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝8 〜覆面の探索者〜
    〜第1部・第5話 秘剣と絆と3〜
    夜が明け掛かった頃、目的の工業都市デハラードに到着した。シュリーベルよりも堅牢な
   壁や壁門を見れば、その防備の凄さを痛感させられる。壁門近くの兵士達には、行き着けの
   冒険者ギルドの証文を見せると一発入場となった。

    早速、ミツキTがヒドゥン状態のメカドッグ嬢達を出撃させていく。ちなみに、100人
   ほど大都会の警戒に配置し、工業都市の探索には50人ほど回したようである。念には念を
   入れる姿勢は見事だわ。

    まあ、流石の偽勇者共も、この工業都市にまでは横槍を入れては来ないと思うが・・・。


    時間も時間なので、到着後は直ぐに宿屋へ直行となった。賑やかだった妹達も、眠気には
   敵わないらしい。俺はペンダント効果の睡眠欲無効化耐性があるためか、眠気が一切起こら
   ない。地球でも半年以上眠らなかった事がある・・・。

    ミツキTやメカドッグ嬢達は精神体なため、眠る事など皆無に等しい。食事摂取すらしない
   ため、完全に無尽蔵で動ける。恐ろしいまでの存在である・・・。

    妹達が起きるまで、ミツキTと共に工業都市の酒場で時間を潰す事にした。



    翌朝・・・ではなく、寝に入ってから起きるまでが同日だった妹達。正午過ぎに起床し、
   普段通りの行動を開始しだす。恐ろしく眠たそうな表情である・・・。

    朝食兼昼食を取ってから、工業都市の冒険者ギルドを見て回る。ここにも行き着けの冒険者
   ギルドの系列店があり、引き続きお世話になる事となった。顔が利くというのは有難いわ。

テューシャ「ほむ・・・こちらのクエストは、資源採取のご依頼が多いですね。」
ジェイニー「工業都市なので、開発などに必要な物資の獲得でしょうか。」
    依頼のどれもが、鉱物資源の採取が多い。討伐クエストは非常に希である。ただ、工業都市
   周辺で出没する魔物の討伐はあるようだ。
ミスターT「機械兵・・・。」
ミツキT「そんなモンスがいるんですかね。」
ミスターT「この世界の技術レベルがどのぐらいかは分からない。だが、工業都市ともなれば、その
      名前に合ったモンスが出てもおかしくはないが・・・。」
   実に気掛かりである。この場合は、太古の昔に創生された機械、と取るべきか。

    今まで見てきた異世界の総合レベルだが、とても地球のそれとは雲泥の差である。しかし、
   魔法などの超常的な概念がある以上、ほぼ互角とも取れるだろう。5大宇宙種族の力がそれに
   近いとも言える。

    それに、俺をここに飛ばした要因が転送装置の類であれば、それ相応の技術力を持っていて
   もおかしくはない。問題は、一体誰がその技術力を持っているか、になる。

カネッド「おっ? これ・・・武器や防具に使う資源の採取・・・。」
ダリネム「見た事がない鉱物ですよね・・・。」
ミスターT「受けてみては? 俺は武器屋と防具屋を見て回ってくる。お前さん達に合うようなのを
      見繕ってくるよ。」
エメリナ「あ・・・私もお供してもよろしいですか?」
ミスターT「構わないが・・・。」
    妹達とは別の行動をすると言いだすエメリナ。俺としては彼女達と行動をして、少しでも
   レベルアップに励んで欲しいものなのだが・・・。
ミツキT「なら、私が皆様方に同伴します。不測の事態はお任せを。」
ミスターT「そうか、分かった。」
   何かを感じたのだろう、直ぐに代役に名乗りを挙げるミツキT。その直感と洞察力は、俺が
   生前時の彼女を鍛え上げた業物である。身体の自由が利かなかった故に、精神面での修行しか
   できなかったからだ。

    鉱物採取のクエストを受注し、現地へと向かう妹達とミツキT。メカドッグ嬢達10人も
   付き添いで赴いてくれた。23人もの大パーティーは、見ていて恐ろしいものだわ・・・。

    俺はエメリナと共に、デハラードにある武器屋と防具屋を見て回った。流石は専門業の都市
   と言えるのだろう。他の街や都市では見当たらない逸品揃いだ。


エメリナ「この強度なら、今後の戦いで引けを取らなさそうですね。」
ミスターT「例の機械兵とやらが相手の場合、斬るよりは叩く方が合うからな。刃こぼれしては話に
      ならなくなる。」
    自分の獲物と販売品を見比べるエメリナ。彼女が持つ獲物は、何処にでもある普通の剣の
   ようだ。故に先の偽勇者と対峙した時は、獲物全体の耐久力を維持するために、鞘ごと相手の
   獲物にぶつけたのだろう。
ミスターT「俺が知るゲームの作品では、勇者専用の物凄い獲物があったりするんだが。」
エメリナ「専用装備ですか・・・。私はその様な武器は、余り好きではありません。それに誰でも
     使えてこその武器ですし。」
ミスターT「ハハッ、お前さんの考えは俺と同じだったか。」
   うーむ、見事なものだわ。彼女自身も、獲物の柔軟性というか、その部分を見ているようだ。

    俺が思うに、各作品の専用装備などはどうも好かん。専用装備となれば、扱う以前に手に
   持つ事すらできないとも取れる。それに、自分に装備できない獲物でも、実際にそれを持ち
   暴れる事はできるはずだ。

    しかし、加護やら真の力やらは発揮されない、それが本当の意味での専用装備だと思う。
   扱うだけなら誰にでもできておかしくはない。

エメリナ「店主さん、こちらで扱っている最高峰の武器はありませんか?」
武器屋店主「最高峰? ここにある全ての武器が最高峰と言いたいんだが・・・。」
エメリナ「す・・すみません・・・。」
武器屋店主「・・・まあでも、特殊的なものはあるにはある。」
    暫くエメリナの目を見つめてから、付いて来いと言った雰囲気で店の奥に案内される。俺も
   どうだと案内された。

    店の奥には、表には出されていない獲物が複数あった。獲物に疎い俺でも分かるぐらいの、
   相当な逸品揃いである。それらには、何らかの力が宿っているのを感じた。

    ちなみに、この店主の名前はオルドラとの事。強面ではあるが、気前の良さが感じられる。

ミスターT「・・・店主、これは隕石武器か?」
オルドラ「凄いな、その通りだ。この工業都市がある場所は、遥か大昔に“巨大な隕石”が落ちて
     きた跡に作られたんだ。大量の鉱物が採取できてたようたが、今では殆ど見掛けない。」
エメリナ「未知の鉱物となれば、凄い力を発揮しますね!」
オルドラ「そうだな。だが、俺が言うのも何だが、これら武器は使う者を選ぶらしい。作る事自体は
     できたが、扱う事ができない。」
ミスターT「それでも、獲物を作る探究心には敵わない、だな。」
オルドラ「ほほ、分かってくれるか、兄ちゃんよ!」
    実に嬉しそうに笑うオルドラ。この人物は、とにかく作る事が好きなのだ。地球では四天王
   やミュティ・シスターズがそれに当たる。携帯方天戟やマデュース改も、彼らの力作である。
オルドラ「これら武器が欲しいなら、金は一切いらん。だができれば、使った感想を聞かせてくれ。
     俺が作った武器が、どんなものなのかをな。」
エメリナ「よ・・よろしいのですか?」
オルドラ「俺に二言はない!」
   気にするなとエメリナの背中をバンバン叩くオルドラ。それに呆気に取られるも、深々と頭を
   下げる。

    ここに鎮座される、秘蔵品に近い獲物群。そのどれもが相当な力を秘めている。言わば秘剣
   こと秘武器だろうか。ここは妹達も呼び寄せ、彼女達に合う獲物を選んで貰うべきだろうな。

    そこで、オルドラに現状を語り、これら武器を使わせて貰えないかを尋ねた。結論は即決で
   OKとなったのは言うまでもない。この店主、相当な人の良さである・・・。



    鉱物採取クエストを終えて戻ってきた妹達。念話により、今現在いる場所を話したため、
   依頼の報告を終えた後に武器屋へと訪れてくる。

    当然ながら、妹達とミツキTもオルドラの気前の良さには呆れ返った。しかし、その人柄
   には何か共感するものがあるのだろう。滲み出る厚意に心から感謝していた。

ネルビア「あの・・・どうしてそこまで厚意的なのでしょうか?」
オルドラ「・・・お前さん達には期待しているのさ。この嬢ちゃんの目を見た時、本当に何かをする
     のだと直感した。それに・・・娘の仇も取ってくれるともな。」
アクリス「そうだったのですか・・・。」
    獲物を選びつつ、店主が語る内容に耳を傾ける妹達。その内容に、同じ境遇のエメリナ達は
   一際共感している様子だ。
オルドラ「最初は復讐のためにと思って、只管武器を作り続けていた。だが、俺の個人的な思いで、
     コイツらや使い手にその思いを押し付けるのは良くないと思ってな。」
フューリス「気が付いたら、武器を作る事にだけ集中していた、ですか。」
オルドラ「ああ、そうなる。娘も武器が好きでな。その存在だけで己を示すものはないと言い切って
     いた。武器自体は殺しの道具だが、使い手によっては守る事にも繋がる。」
   オルドラの考えは、四天王や三姉妹が思っていた事と全く同じだ。武器自体は人殺しの道具に
   過ぎないと言い切っている。しかし、使い手の一念により、人助けの獲物にも化けるとも。

オルドラ「俺が武器屋を続けられるのは、娘との絆のお陰なのかも知れない。そして、皮肉にも、
     アイツがお前さん達と出逢う切っ掛けを与えてくれた。魔物に殺され、連中を許せない
     思いはあるが、今は娘に感謝している。」
ミスターT「・・・人は些細な切っ掛けで変革する、か。」
    店主の内情を知り、涙を流している妹達。年代的には彼女達の父親とも言える。そして、
   殺された彼の娘は妹達と同年代との事だ。
オルドラ「お前さん・・・相当な殺しをして来たと思えるが?」
ミスターT「俺か? まあ・・・警護者という役柄、護衛対象を守るためなら、相手が誰であろうが
      容赦なく殺してきた。警護者の行動に私情は禁物だったしな。」
オルドラ「そうか・・・。」
ミスターT「だが、無益な殺生は好まない。立ち塞がる相手や、確実に敵対する存在以外、不殺の
      精神で突き進んでいる。」
オルドラ「・・・俺にも、お前さんみたいな決意があればな・・・。」
   近場の獲物を持ち、静かに語る店主。その手に持つ武器には、確かに力が存在している。後は
   持ち手の一念次第で化けるという事だ。

ミスターT「俺は今のままで良いと思うが。オルドラさんの一念では、相手を殺す事はできない。
      何よりも、娘さんがそれを望んではいまい。」
    徐に一服しながら、腰の携帯方天戟を展開する。それを床に突き刺さないように立てつつ、
   妹達にも言い聞かせるように語った。
ミスターT「お前さん達が胸中に抱く、表に出す事ができない思いと無念は、俺が全て受け持つ。
      だから、お前さん達はお前さん達の進むべき道だけを進むんだ。」
ミツキT「フフッ、小父様らしいですね。ならば私も、それに応じねばパートナーと言えません。
     皆様方の思い、確かにこのミツキTが全てお引き受け致します。」
   背中の携帯十字戟を分離させ、1つに纏めて右手に握る。そこに込められた思いは、俺と全く
   同じである。
オルドラ「・・・お前さん達は、何処までもお人よしなんだな・・・。」
ミスターT「お前さんも同じだろうに。」
オルドラ「・・・ヘッ、違いない。」
   涙を流していたオルドラだが、最後の一言で笑顔になる。今の今まで抱いていた思いから、
   解放された感じだわ。しかし、同時に彼の胸中には、亡き娘の思いも根付いているのが分かる
   感じがする。

エメリナ「・・・絆の力、それがこれら秘剣・・・秘武器を強くさせる、と。」
ネルビア「これら武器の秘めたる力は、絆の力なのですね。」
オルドラ「よせやい、そんな特殊な力など込めてないぞ。」
テューシャ「そんな事ありませんよ。貴方様の胸中には、娘様がいるではないですか。」
    テューシャの言葉を聞き、静かに右手を胸に当てるオルドラ。先程も思ったが、彼の胸中
   には亡き娘の思いも根付いている。エメリナとネルビアが語った秘めたる力とは、父娘が一体
   で作り上げた獲物に他ならない。
オルドラ「・・・常に共にあり、か。」
カネッド「大丈夫っすよ。淋しかったら何時でも言って下さいな。私達が駆け付けますから。」
ダリネム「娘さんには敵いませんが、私達を娘と思って下さい。」
オルドラ「・・・ありがとう・・・本当にありがとう・・・。」
   妹達の言葉で号泣しだす。彼女達の言葉は、そこにオルドラの娘がいるかの様に聞こえた。
   思いは時として、時間や空間を超越する、正にそれである。

オルドラ「・・・よしっ! 隕石はまだある。お前さん達の獲物を作り続けるとするか!」
アーシスト「おおぅ! まさかのオーダーメイド品っすか!」
オルドラ「お前さん達が選んだ武器は分かった。同じ様な武器を今後も作り続けておくとするよ。
     今後、武器で困った事があったら、何時でも尋ねてきてくれ。」
    豪快に笑うオルドラに、居たであろう父親を重ねる妹達。エメリナは実際にいた養父を思い
   だしているようだ。

    人は何処で、どの様な巡り逢いをするか分からない。悲惨な結末、不幸な出来事、それすら
   も全て切っ掛けとなる場合がある。全てが全てマイナスとは限らない、俺が地球での警護者の
   行動で学んだ、大切な理の1つだ。

    妹達とオルドラとの出逢いは、彼の娘が作り出したものだと言い切れる。仮に健在だった
   としたら、別の流れとなったであろう。それでも、人生にはどうしても抗い切れない出来事が
   付き纏うのだ。

    それら、理不尽・不条理の概念を避けるために、俺は徹底的と言えるほど力を付けて来た。
   技術力の弱体化に至りそうなバリアとシールドの防御機構すらも、惜しむ事なく使い続けた。
   悲惨や不幸な末路に至ってからでは、何もかも遅いのだ。

    ならば、目の前の悲惨や不幸を全て根絶し続けてやる。俺の目が黒いうちは、その役割を
   徹底的に演じ切ってみせる。そのための“覆面の警護者”なのだからな・・・。



    工業都市デハラードに来てから数日後。技術者オルドラの助力もあり、劇的なパワーアップ
   を成し遂げる妹達。防具の方もそれ相応の逸品を作っていたとあり、武器防具に関しては全く
   問題がなくなった。

    本来なら鍛冶職人と言うべきだが、その探究心は技術者に近い。ここ工業都市からして、
   その呼び名の方が相応しいだろう。

    ちなみに、彼はこの工業都市の市長だったのだから驚きだ。先の探究心以外に、献身的な
   行いを買われて、市長に抜擢されてしまったようだ。だが、普段は技術者としているようで、
   都市の市長邸には副市長達が雑務に追われているらしい・・・。

    オルドラも、一同の頭に立つような存在ではないと、その気質から言い放っているようだ。
   何ともまあ・・・。


    すっかり意気投合した妹達とオルドラ。彼女達の素性も語った事から、伝説の勇者の到来
   だと街を挙げて盛り上がりだしている。流石の彼女達も呆れ顔だ。

    同時に、彼が持つ情報網は凄まじいものがあり、シュリーベルやカルーティアスの様相は
   直ぐに察知できるとの事だ。そして、嫌な情報も入って来る事となる。

オルドラ「大都会の仲間から嫌な情報が入って来た。」
    オルドラ武器店に入り浸りの妹達。看板娘的な感じになっており、何と喫茶スペースすら
   作り出している。これはミツキTの助言らしく、今では有名店となっていた。そんな中、店主
   のオルドラが不穏な表情を浮かべて語り掛けて来る。
エメリナ「何かあったのですか?」
オルドラ「昨日、再び襲撃事件が発生したとの事だ。大都会自体には被害はなかったが、あれ程の
     巨大都市に連日襲撃とあり、自警団や騎士団への信頼度が揺らいでいるらしい。」
ネルビア「それ、例の偽勇者共が絡んでいる可能性がありますね。」
オルドラ「偽勇者共? ああ、貴族のボンボンの連中か。貴族とは名ばかりで、平民からコネで今の
     地位に這い上がった愚物だ。」
   吐き捨てるように言い切るオルドラ。彼の熱血漢な心情からして、連中の様な存在は許せない
   のだろう。痛いほど雰囲気で物語っている。
オルドラ「しかし、連中の実力は確かなものだ。自警団も騎士団も、そこを突け込まれて手出しが
     できていない。国王すらも手が出せない状態らしい。」
ミスターT「一応だが、警護者自体・・・暗殺家業も請け負っているが?」
   ボソッと呟いて見せると、ゾッとした表情を浮かべて青褪めだす一同。普段からノホホンと
   している俺から、殺意に関連する語句を挙げられると驚くみたいである。

フューリス「・・・どんな悪党でも、流石に殺しは良くないと思います。」
ミスターT「無論、その通りよ。しかし・・・もし連中がモンスと繋がりがあるなら、一連の襲撃
      事変は意図的に仕組まれた事になる。それにより、オルドラさんの娘さんの様な被害者
      が出た場合はどうする?」
    俺の言葉に黙り込む一同。目の前の個人の殺害は良くないとは俺も思う。しかし、その凶刃
   により多くの人物に被害が及ぶ場合は別となってくる。被害の拡大を防ぐためには、元凶と
   なるものを抹殺すれば良いだけの話だ。
ミスターT「もし、連中が世界に影響を及ぼすような行動をし出すなら、問答無用で殺害する。」
ミツキT「そこは私も賛成です。目の前の人物に忌み嫌われようとも、総意が安心できる世上にする
     のが警護者の使命。それが嫌であれば、警護者の道など進むべきではありません。」
ミスターT「そうだな。あの時、お前さんを救えなかった事もそれに当たる。オルドラさんの娘さん
      の様な存在は、絶対に出したくない。」
   確固たる信念と執念を一同に語る。これはミツキTが逝去した時に誓った、絶対不動の原点
   である。故に、忌み嫌われる警護者の道に足を踏み入れたのだからな。
ミスターT「何度も言うが、お前さん達はお前さん達の生き様を道を進むんだ。そのお前さん達の
      背後に迫る不安や恐怖は、全て俺が刈り取り続ける。」
ミツキT「ですね。今では私も一介の警護者の1人。同じく、皆様方の背後は厳守し続けます。」
   改めて、己の使命を確認する。何度も挙げねば、折れてしまうからだ。本当に、警護者の役割
   は損極まりない。

オルドラ「・・・分かった。アンタがそこまで決意しているなら、俺から言う事はない。俺は技術者
     として、お前さん達の裏方に回るとしよう。武器や防具は全て任せてくれ。」
ミスターT「すまない、恩に着る。」
    静まり返る店内の沈黙を破るはオルドラの一声。彼自身も確固たる信念と執念があるため、
   俺達の決意を汲んでくれたようだ。生き方は異なれど、進むべき道は全く同じである。

    意気盛んに振る舞うオルドラの娘とは、一体どんな人物だったのだろうか。彼の気質から
   して、相当な淑女であったのは間違いない。ミツキTの逝去を経験している手前、彼の娘の
   事は我が事の様に思えてならない。

    しかし、もしかしたら、ミツキTみたいな精神体で父親を守護しているのかも知れない。
   人知を超えた力に触れ続ければ、否が応でも特殊な能力に目覚めていく。この異世界での理を
   痛感させられている気がしてならないわ・・・。

    第6話へ続く。

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