アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝8
〜覆面の探索者〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝8 〜覆面の探索者〜
    〜第1部・第6話 魔王の力2〜
オルドラ「・・・ここからは俺の推測だ。お前さんがここに来た理由は、連中を阻止するためだと
     直感している。連中の超絶的な力に抗うなら、同じ力を持つ者を呼べばいい。」
ミスターT「そこまで偉い奴じゃないんだがな・・・。」
オルドラ「ハハッ、偉い偉くないではない、目の前の人物を救えるかどうかだ。どんな力を使って
     でも、その生き方を貫き通す。先日、お前さんが言っていたじゃないか。」
    オルドラの言葉は、もはや格言的であろう。物事を見定める眼により、先の先を見定めた
   感じだと取れる。いや、彼自身の生き様そのものだ。

    俺がここに飛ばされた理由、か・・・。もし、彼の言う通りであれば、俺をここに飛ばした
   人物は、魔王か大魔王という事になる。オルドラの推測側なら、王城が召喚する筈がない。
   となれば、魔王と大魔王は一体誰なのか・・・。

オルドラ「まあ何だ、今は一歩ずつ進むしかない。お前さんが言う自然の摂理だったか、それらは
     無常にも俺達に突き付けられてくる。生きるか死ぬか、それすらも自然的だ。」
ミスターT「悪いが、俺はそのクソッタレな概念にはNOを突き付けるがな。」
オルドラ「ハッハッハッ!」
    今では俺の絶対不動の原点を語ると、豪快に笑いながら背中をバシバシ叩いてくる。彼の
   生き様は、地球の身内のそれと全く同じである。異なるとすれば、それが同性か異性かの差に
   なるが。

    獲物を見定めつつ、男同士の雑談は続く。ここ最近は周りが異性ばかりだったため、同性
   同士の語り合いは気軽に話せて非常に楽だ。しかし、癒しの雰囲気からすれば、流石に異性
   たる女性には絶対に敵わないが。

    ともあれ、オルドラの情報は非常に役に立った。下手をしたら、この異世界の惑星全体で、
   俺が想像していた事よりも厄介な流れになっている。この場合は、直接当事者に聞ければ一番
   楽になるのだが・・・。



    それから数日が経過。妹達は工業都市の討伐クエストを、片っ端から攻略し回っている。
   大都会よりも冒険者自体少ないため、シュリーベルと同じ様な独占状態が続いていた。

    当然ながら、規模が小さい街ほど、その名声的な流れは浸透していく。先の街シュリーベル
   やこの工業都市デハラードでも、妹達の人気度は凄い勢いで上がっている。それでいて、無欲
   の塊なのだから、余計人気が出るのは言うまでもない。

    ちなみに、10人の妹達は冒険者ランクAになり、エメリナ達はランクBまで至っている。
   どうやら、ランクBまでは簡単に行けるそうだが、それ以上はかなりの経験を積まないと至れ
   ないらしい。俺とミツキTは今だにランクFの最下位だが・・・。


オルドラ「そう言えば、お前さんが持つその槍。」
ミスターT「ん? 携帯方天戟か?」
    酒場での入り浸りから、オルドラ武器店に入り浸りの俺達。今では一端の家族的な感じだ。
   そんな中、彼が俺の獲物について尋ねてくる。腰の獲物を取り出し展開し、それを手渡した。
オルドラ「うーむ・・・見た事がない金属が使われているな・・・。」
ミスターT「地球では、有り触れた金属らしいよ。これは、身内が製造してくれた逸品になる。」
オルドラ「なるほど・・・。」
   マジマジと獲物を見つめるオルドラ。近場にあった隕石で生成した槍を手に取り、それを見比
   べだす。隕石製の槍の方が遥かに重厚度があるが。
オルドラ「・・・コイツは複合材料か、複数の鉱物を使っている。お前さんが格納している事から、
     本来なら展開時の強度はこの槍よりも劣るはずだ。」
ミスターT「そこは何か、色々と試行錯誤をしてたみたいよ。」
   過去に俺も思っていた事を語る彼。携帯方天戟は格納式のため、従来の槍などよりも強度の面
   でかなり劣ると思った。仕込み刀が通常の刀には敵わないのと同じ類だ。

オルドラ「・・・暫くコイツを借りてもいいか?」
ミスターT「複製してみるのか。」
オルドラ「技術職からして、この様な逸品を見たらのなら、興奮しない方がおかしいわ。」
    比べれば比べるほど、携帯方天戟の魅力に取り付かれだすオルドラ。俺の獲物と隕石製槍を
   手に持って、店の奥へと駆け込んでいった。技術職故の探究心、か。羨ましいわ・・・。

    店の入り口に店内の椅子を運び、そこに座り一服をする。店主が作業中とあり、臨時の店主
   を買って出てみた。とは言うものの、ここ最近は武器屋を利用するお客さんはいないのだが。


    そよ風が心地良い・・・。異世界の抗争を忘れさせるような居心地だ。ここ最近は、色々な
   思いやら巡らせていたため、精神的に疲労があったのだろう。

    特に慣れない世界に飛ばされたため、地球での疲れとは別の疲れを感じずにはいられない。
   それに、一気に13人もの妹達ができたのだ。気苦労が堪えないのは言うまでもない・・・。

    それでも、今の俺にできるのは、この異世界の惑星の抗争を解決する事だ。表向きは魔王
   討伐とあるが、実際にはそれ以上に深い暗躍が行われている。魔王や大魔王は、その尖兵に
   すらなっていない。

    最後の敵は人、か。地球でも同じ考えに帰結したが、本当に人は業深い存在だわ・・・。



ミツキT「囲まれていますね。」
    展開するメカドッグ嬢達が、工業都市を取り囲む魔物達を察知する。それは突然現れたと
   言って良い。つまり、転送魔法による出現だ。

    この事態は、店先で寛ぎだしてから数時間後に至った。討伐クエストから帰ってくるなり、
   事態の深刻さを語り出す彼女達。

ミスターT「連中の狙いは、妹達と捉えるべきか。」
ミツキT「それもあると思いますが、最大の目標は多分・・・。」
    自然と俺を見つめてくる。それは、相手の目的が俺であるという事だ。シュリーベルでの
   一戦により、相手に目を付けられたと捉えるべきだろう。
ネルビア「マスターはエメリナ様方と行動を。魔物は全て私達に任せて下さい。」
カネッド「残党掃討で大盛り上がり・・・痺れるわぁ・・・。」
ミスターT「お前さん・・・段々身内に似てきてるわ。」
   本当である。その豪快な気質は、身内の女性陣にドンドン似だしてきている。それでいて、
   しっかり実力も据わるのだから恐ろしい限りだわ。まあ、女性とはこう豪快である方が、俺は
   好みだがな。
ファイサ「・・・豪快な女性の方が好みなのですか・・・。」
ミスターT「だー・・・心中を読むのはやめれ・・・。」
ルマリネ「読むも何も、ダダ洩れ状態でしたし・・・。」
   向けられる一念に、顔を赤くしている妹達。それを見て、呆れ顔のミツキTである。無意識に
   出た一念なため、その思いに邪念は一切ない。純粋に思った事だからこそだろうな。

エメリナ「フフッ、こうも自然に接して頂けると、本当に嬉しいです。」
フューリス「啓示を受けてから、特別な存在を見るかの様な目線には、本当に参りものでしたし。」
テューシャ「それに、普通の女性として見られるのは、本当に有難い事です。」
    顔を赤くしながらも、女性として見られた事に嬉しがる3人。それは、他の10人も全く
   同じ思いのようである。そう言えば、地球でも同じ事を言われていたな・・・。
ミツキT「小父様の生き様がそこにある、ですよ。分け隔てない付き合い、それに魅入られたのが
     皆様方ですし。そして、今のこの異世界に必要な癒しの一念です。」
ミスターT「ミツキ流の敬い・労い・慈しみの精神、だな。」
   話しながらも準備を怠らない。討伐クエスト後だったので、獲物の再調整をする妹達。俺は
   武器を貸し出しているため、空間収納に収めてあるマデュース改を取り出していく。久方振り
   のトリプルマデュースシールドである。
カネッド「何時見ても、化け物染みた力ですよね。」
ミスターT「変人と言って貰った方が気が楽なんだが。」
ダリネム「・・・変態気質の変人と言っていたのは、その所以ですか。」
ミスターT「そう、その方が遥かに気が楽だわ。」
   俺の変な異名に周りは爆笑している。確かにこの異名は、異名ではなく貶しそのものだろう。
   だが、それだけ化け物染みた力を持っている証拠だ。それを変人と言い換えてくれている。

メラエア「とりあえず、メンツを分けて攻略で?」
ミスターT「北門と東門は閉鎖されているから、西門にネルビア・ファイサ・ルマリネ・アクリス・
      アーシストを、南門にカネッド・メラエア・キャイス・ジェイニー・ダリネムで。」
10人「了解っ!」
    こちらの指令に即座に分かれる妹達。こうして指令を出したのは、今回が初めてだろうか。
   指令など実に烏滸がましいが、今は出来得る手段を投じるしかない。
ミスターT「ミツキTはメカドッグ達を率いて、外周部のモンスの掃討に当たってくれ。」
ミツキT「10人方には、メカドッグ様方を護衛に着けますか?」
ミスターT「その方が良いだろう。彼女達の実力からして、要らぬ護衛になりそうな気がするが、
      不測の事態には備えた方がいい。」
ミツキT「了解!」
   具現化したメカドッグ嬢達を、10人に各1人ずつ護衛として着けていく。ミツキTは他の
   メカドッグ嬢達を率いてくれる。

    ちなみに、追加で10人ほど具現化した姿に化けさせた。先の10人と同じく、筐体に付与
   する感じでの具現化だ。今では実体化しているのは20人となる。

ミスターT「エメリナ・フューリス・テューシャは、冒険者ギルドへの報告を頼む。終わったら、
      俺と一緒にいてくれ。」
3人「了解です!」
    本丸と題して、俺と3人で街中に鎮座する事にした。トリプルマデュース改の防御壁なら、
   3人を守り切る事は容易だろう。その前に、冒険者ギルドへの報告を任せる事にした。
ミスターT「・・・申し訳ない、呼び捨てで言っちまったわ。」
アクリス「何を仰るのですか。むしろ、敬語で呼ばれる方に違和感があるのですけど。」
ジェイニー「本当ですよ。私達を呼び捨てにして頂いて構いません。」
ミスターT「そうは言うがな・・・。」
   簡単な作戦会議後に、自身の言動を振り返ってしまう。今の今まで“さん”付けで呼んでいた
   ため、呼び捨てに違和感が生じだしている。だが、妹達は気にするなと言ってきた。一時期は
   呼び捨てで呼んでいたが、今は敬語語りの方が性分に合う。
アーシスト「・・・本当に優しい方ですね。」
アクリス「優しいを通り越して、お節介焼きそのものですよ。」
ミスターT「何とも。」
   俺の言動がお節介焼きになるのかは不明だが、周りへの気配りに関してであると思いたい。
   この姿勢は、幼少期の頃から続いていると言われていた。ミツキTも良く知っている。

    この言動がなければ、警護者の行動に折れていたかも知れない。警護者の最終形態が、結局
   の所は殺人者である所以だ。真の力を発揮する際は、相手の殺害も厭わない、それが警護者
   である。

    そこに明確な否定を突き付けるのが、お節介焼きと世話焼きだろう。敬い・労い・慈しみの
   精神も同じである。これら概念があったからこそ、俺は道を踏み外さずに済んでいるのだ。

ミツキT「マスターは1人ではありません、私達がついています。それに、全てを押し付ける事など
     絶対にさせません。持ちつ持たれつ投げ飛ばす、この気概で進みますよ。」
ミスターT「・・・ありがとう。」
    彼女の言葉に力強く頷く妹達。出逢った頃の初々しさはなく、一介の戦士そのものである。
   いや、一介の警護者と言うべきか。
カネッド「さあ、兄貴! ご指示を!」
ミスターT「ああ、作戦を開始してくれ。ただし、不要な戦いは避ける事。連中を街中に入れさえ
      しなければいい。」
一同「了解!」
   号令と共に颯爽と散開していく彼女達。一切の迷いがない行動には、地球での身内の行動を
   垣間見ているかの様な錯覚になる。何時の時代でも女性は強いわ・・・。


    それぞれの行動を開始しだした一同。俺は街中の中央で、静かに待ち続けた。オルドラとの
   雑談で挙がった通り、目的が俺にあるとするなら1人が良い。護衛でエメリナ達がいれば安心
   である。問題は、シュリーベル時の様に大規模な襲撃を繰り出してくるかどうかだ。

    そして、1つの懸念があるとすれば、俺が挙げたあのボヤきだろう・・・。

    後半へと続く。

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