アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝8
〜覆面の探索者〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝8 〜覆面の探索者〜
    〜第1部・第9話 妙技を使う1〜
    大都会カルーティアスで起きた事変。王城が絡んだそれは、もはや国家反逆罪に等しい。
   仮にも英雄と位置付けされた偽勇者共が、黒ローブ共と結託し襲撃を実行してきたからだ。
   しかも、現段階での魔王とされる、カースデビルまで召喚したのである。

    これに反抗しだした俺達。妹達も大暴れするが、極め付けは裏で監視を続けていた女性魔王
   であろう。召喚するという演出で到来してくれた。しかも、イザリアという名の彼女は、何と
   デュヴィジェ達と同じデュネセア一族であった。

    そして、彼女が俺をここへ召喚した理由も明確になった。先の黒いモヤ事変の鎮圧者を、
   この異世界惑星に召喚しようとしたのがそれらしい。同族か、それ相応の実力を持つ人物を
   望んでいたようだが、俺に白羽の矢が刺さったという事である。

    彼女の力も借りて、大都会事変を鎮圧はできた。しかし、問題は山積みである。その中の
   1つとなる、権力者の横暴が何処で炸裂するか。今は静かに様子を見るしかなかった。



オルドラ(そ・・そうか・・・やはり生きていたんだな・・・。)
    大都会事変から数日後。念話により定期連絡を行う俺達。その中で挙がったのが、オルドラ
   の娘の一件だ。それに感情を露わにして喜ぶ彼。
ヘシュナ(ですが、避け難い事実もあります。お嬢様は我々と同じ宇宙種族、人間ではありません。
     どうやら、モヤに吸い込まれたというのは演出のようで、態と死んだと見せ掛けたとの
     事でした。)
オルドラ(何だって良い、生きてさえいれば・・・。それに、宇宙種族だろうが関係ない・・・。
     確かに不思議な巡り逢わせだったが、彼女は俺の娘なのは間違いない・・・。)
ミスターT(そうだな。)
   涙ぐんでいた様相から一変し、気持ちを切り替えていくのを感じる。イザリアが、時が来たら
   娘ことイザネアを会わせるとも語っていた。ならば、先を見据えて動くしかない。
オルドラ(ミスターT殿、本当にありがとう・・・。)
ミスターT(礼なら、戻ってきた娘さんにしてあげてくれ。経緯はどうあれ、その行動には意味が
      あったのは間違いないしな。)
オルドラ(・・・ああ、分かった。)
   もう大丈夫だと、雰囲気が物語っている。一念が据わった人物ほど、力強い者はいない。彼も
   その境地に至ったと思える。

ラフィナ(マスター、軍団の再編成なのですが。)
ミスターT(以前挙げたプランで良いと思う、実行してくれ。)
ラフィナ(了解です。)
    落ち着いた頃に切り出す彼女。既に次のプランを考えており、それの承諾を伺ってきた。
   今回からは、少々防御面を固めなければならなくなる。
デュヴィジェ(では、直ぐにでも三姉妹方とルビナ様をお送りしますね。)
ミスターT(分かった。だが・・・ミツキさん達はどうしてる?)
デュヴィジェ(気分転換するのだと、アキバに赴かれました・・・。しかもコスプレで・・・。)
ミスターT(ぶっ?! ハッハッハッ!)
   何と言うかまあ・・・。一番こちらに来たがっていたミツキ達が、気分転換にと秋葉原か。
   それを聞いて爆笑してしまった。周りの面々も釣られて爆笑している。
エリシェ(はぁ・・・ミツキ様の突拍子の言動には、本当に呆れるしかありませんよね・・・。)
ナセリス(私達の常識は、一切通用しませんし・・・。)
ミスターT(・・・これ、コスプレのまま来そうな気がするな・・・。)
   俺のボヤきに十分有り得ると頷く一同。とにかく、インパクトがある行動をしたがるのが彼女
   である。赴く先が異世界惑星とあれば、十分やりかねない・・・。
デュヴィジェ(それと、お4方を飛ばした後、直ぐに私も駆け付けます。)
ミスターT(司令塔はどうするんだ?)
デュヴィジェ(そこはご心配なく、娘達が担ってくれますので。)
ミスターT(そうですか・・・。)
   ついに、出番が到来といった雰囲気の彼女。娘達も娯楽に精通しており、今ではヲタク気質
   バリバリの女傑である。しかも、プログラミング関連もできるとあり、母のデュヴィジェに
   負けず劣らずの腕前を持つに至っている。

デュヴィジェ(まあ・・ウキウキ度はさておき、本格的に雲行きが怪しくなってきましたからね。
       私達の方も本気を出す準備をしませんと。)
ヘシュナ(例の巨大兵装などは既に準備万端です。皆様方も、何時でも出撃できると意気込んでいる
     状態ですので。)
ミスターT(実に皮肉な様相だわな。)
    娯楽的な内容を止めて、本格的な内容を語り出す。確かに、今後の様相は非常に危ない感じ
   に思えてくる。だが、今の身内には全く以て問題ない。
ヘシュナ(ともあれ、シュリーベルとデハラードの防衛は全てお任せ下さい。カルーティアスの方は
     皮肉にも、王城自体が防衛をするでしょうし。)
デュヴィジェ(小父様方は、次の行動を開始して下さいな。)
ミスターT(分かった。)
   気質からして、本気モードになる身内。特にデュヴィジェやヘシュナ達宇宙種族が本気を出す
   場合、それは完全無欠を意味してくる。後方の憂いは確実に断ってくれる。
エメリナ(マスター、次はどうされますか?)
ミスターT(再び探索に走るか。ここから商業都市へは、どのぐらい掛かる?)
オルドラ(ん? 商業都市か? カルーティアスから馬車で約1日だな。北西の方角にあるぞ。)
ミスターT(流石は工業都市の市長、博識で助かるよ。)
   先の魔王撃退の一件から、名誉市長にまで至ったオルドラ。実際には何もしていないのだが、
   エリシェやラフィナの計らいでそうしたらしい。悪い意味ではないが、権力とはこうした使い
   道もあったりはする。

    エリシェとラフィナは、“権力の出し加減の触り”を把握していると言えるだろう。これは
   ミツキとナツミAが十八番、“力の出し加減の触り”に近い。ありとあらゆる力を持つ存在が
   集い逢っているのが、俺達警護者軍団となる。

    ちなみに、ヘシュナは“場力の出し加減の触り”を熟知している。エリシェとラフィナと
   トリオを組んだ際は、その属性からして無類の力を発揮するのは言うまでもない。

オルドラ(ただ、問題があるが・・・。)
ネルビア(ああ、確かに・・・。)
ヘシュナ(・・・ほむ、その流れなら問題なく解決できますよ。)
    懸念を挙げるオルドラとネルビア。それを念話で察知するヘシュナ。何だか嫌な予感がして
   ならないが、解決策があるなら挑むしかない。

    後の話になるが、俺はこの時、その内容を伺うべきだったと後悔する事になる・・・。



    下準備を終えて、商業都市リューヴィスへと向かう俺達。荷馬車は遠方のオルドラが手配
   してくれた。その理由は、全ての冒険者ギルドが信用できなくなったからだ。

    先の大都市事変での流れからして、ギルドより要らぬ情報が王城に流れる恐れがあった。
   偽勇者共を野放しにしているのに加担しているのだ、信用できなくなるのは言うまでもない。
   ちなみに、工業都市の冒険者ギルドは、一切の汚職を断ち切っている。完全独立のギルド運営
   となっているとの事。オルドラとエリシェ達の実権によるものだ。

    ミツキがエリシェ達を先に飛ばした理由が、ここで顕著になって現れだしている。権力的な
   力があれば、この異世界惑星で問題なく活動が可能になる。エリシェとラフィナの手腕なら、
   問題なく実権を握る事ができるしな。

    ちなみに、シュリーベルの防衛はナセリスだけになっていたが、増援部隊としてギガンテス
   三姉妹とルビナを派遣した。ヘシュナはウインドとダークHと共に、カルーティアスの警視に
   当たっている。まるで異世界の警察官である。

    デハラードはエリシェとラフィナがいるが、今では実務の覇者となったデュヴィジェが増援
   として向かった。地球での司令塔は、彼女の5人の娘達が担当してくれている。この場合、
   母のデュヴィジェが現地の司令塔となった感じだろう。

    更に、ミツキTとメカドッグ嬢達を“元の姿”に戻した。最初は精神体での到来だったが、
   地球との相互移動が可能となった今は、機械兵士の筐体を運び入れた。某映画のサイボーグ
   筐体に似たそれで、人工皮膚を被せた様相は人そのものである。あの有名なテーマソングが
   聞こえてきそうで怖いが・・・。

    それに、機械兵士の筐体こそ、ミツキTやメカドッグ嬢達の力を最大限発揮させる事が可能
   となる。メカ式ワンコの筐体もあり、そちらは機械兵士筐体にドッキングも可能だ。

    何だかもう、地球での活動をそのまま異世界惑星に持ち込んだみたいで混乱してくるわ。
   しかし、今はこれら力を駆使せねば、愚物共にいいようにされるのは言うまでもない。力は
   使ってこそ真価を発揮する、それを実践する時は今なのだからな。


カネッド「・・・それが、奥の手の1つですか・・・。」
    妹達の絶句する表情が何とも言えない。その理由は、今の俺の姿だ。傍らにいるミツキTは
   ニヤニヤしっ放しであるが・・・。

    出発前にオルドラが挙げた問題点、それは商業都市の状態である。何と男子禁制の乙女の
   花園らしいのだ。ネルビア達がレディガードと名乗りだした切っ掛けも、このリューヴィスの
   運営体制によるものとの事。実際に彼女達はここに訪れた事があるらしい。

    現地の様相を伺った時は驚いたが、地球でのトラガンの様相と酷使している点に、悪いと
   思うも笑ってしまった。そこで、同場所に潜入捜査をした時に使った戦術を使う事にした。
   そう、性転換の技だ。

ミツキT「何時見ても惚れ惚れしますよ、“ミスT”小母様。」
ミスT「トラウマの1つなんだからやめれ・・・。」
    ニヤケ顔でニヤニヤしっ放しのミツキT。完全に弄ばれている・・・。それに、身内は全員
   この姿を知っているため、念話やら何やらでニヤニヤな様相を感じずにはいられない。ただ、
   妹達の方は絶句しっ放しであるが・・・。
ファイサ「あー・・・どう接すれば良いのか・・・。」
ミスT「何時も通りで良いんじゃないのか。」
ルマリネ「と・・とは言いますが・・・。」
   どうやら、女性状態の俺にどう接してよいか分からないようだ。これは過去に、身内も同じ
   対応をしていたのが懐かしい思い出である。まあ、ミツキ達は直ぐに慣れ、以後は茶化しの
   連続となったが・・・。
ミスT「まあ何だ、これなら商業都市にも問題なく入れるだろう。」
キャイス「それで入れない場合・・・私達も無理じゃないですかね・・・。」
ミスT「んー・・・俺より遥かに美人なお前さん達がか?」
   態とらしくニヤケ顔で茶化してみる。すると、反論するどころか、顔を真っ赤にして俯いて
   しまった。これが野郎の時だと、間違いなく殺気に満ちた目線で睨まれそうだが。

ミスT「どんなに見繕ったって、俺は野郎の域から出る事はできない。性転換力を使おうが、生粋の
    女性たるお前さん達には絶対に敵わないしな。」
アクリス「ですが・・・何と言うか、気質的な部分だと私達よりも女性っぽいのですけど・・・。」
ミスT「ああ、それは女性の姿でいる時が長かったからの。」
    徐に一服しながら、性転換状態の姿が長かった件を語りだした。それに興味津々に聞き耳を
   立てだす妹達。

    先の黒いモヤ事変では、カルテット・キャノンが決め手となった。しかし、それは俺自身が
   男性では成し得ていない。最後の戦いが発覚しだした頃、性転換ペンダントが自ら効力を発揮
   して、俺を女性へと変化させたのだ。以後は黒いモヤ事変が終わるまで、永延と女性の姿で
   いる事になる。

    アクリスが俺を女性らしいと語ったのは、その期間が半年以上も性転換状態でいたからだ。
   これは、身内からも同じ事を言われている。特に女性陣からは、最初から女性の俺が当たり前
   だったのだと言ってくる。

    そもそも、生命体の素性の性別は女性らしい。そこに突然変異的な要素が加わり、男性へと
   変化するとの事だ。“X・X”の女性と、“X・Y”の男性の様相である。言わば、野郎は
   突然変異で至る性別であり、悪い言い方では出来損ないそのものだ。それを踏まえれば、女性
   が根本的に強い理由が痛感させられる。

    野郎の俺が、性転換状態でこの理を知る事となったのだから、実に皮肉な回帰であろうな。

ミスT「この姿になって、本当に女性が偉大だと痛感させられてる。新しい生命を産み育て、次の
    世代へと繋げていく。対して野郎は、破壊と混沌しか生み出さない。数多くの戦乱も、その
    大多数は野郎が引き起こしているしな。」
ミツキT「偶に、女性が引き起こす場合もありますけどね。」
ミスT「ほぼ野郎が淵源よ、女性と子供が泣かされる事が数多い。これだから男は・・・。」
    再度一服しながら、吐き捨てるようにボヤく。最後の一言は、恩師シルフィアの名言だ。
   俺によく言ってくる言葉だが、それが今は痛烈なまでに理解できる。
エメリナ「でも・・・貴方は男性ながらも、女性の痛みを知っていらっしゃいます。私達を助けて
     くれる姿勢から、それを痛感しますし。」
ジェイニー「そうですよ。だから、自己嫌悪はなさらないで下さい。」
ミスT「・・・ありがとう。」
   まるで同性に語るかの様な雰囲気の妹達。今は女性状態の俺であるから、そこに姉がいるかの
   様に語るのだろう。身内も同じ雰囲気になると言っていた。

メラエア「ちなみにですが・・・女性特有の痛みも出るのですか?」
ミスT「あー・・・。」
    メラエアの言葉に、それなりに起こった痛みを振り返る。それは、どれも野郎の俺には筆舌
   し尽くし難い痛撃で、とてもじゃないが耐えられるものではなかった・・・。
メラエア「す・・すみません・・・相当キツかったようで・・・。」
ミスT「・・・お前さん達の方が、遥かに偉大だと分かって貰えればね・・・。」
   身体が震えだしている事に気が付く。それに慌ててフォローをしてくれる妹達。彼女達も相応
   の経験をしているからか、それがどんな苦痛なのかを知っている故のものだろう。俺には到底
   理解できる領域と概念ではないが・・・。
ミツキT「フフッ、そこまで女性の概念を知れているなら、申し分ないと思いますよ。お嬢様方も
     女性の痛みを知っていらっしゃる。小母様も全く同じです。だからこそ、そこまで女性を
     演じる事ができるのですから。」
ミスT「演じる、か・・・。それこそ、本当の女性に対して、烏滸がましい事この上ないがの。」
   本当にそう思う。生まれてこの方野郎である俺には、性転換ペンダント効果がなければ絶対に
   理解できない領域だ。その一端を知れたとしても、本当の痛みには程遠い。
エメリナ「本当に優しいのですね・・・。そこまで女性の事を思ってくれているとは・・・。」
ミスT「そうでもしないとな・・・身内に何と言われるやら・・・。」
   考えただけで恐ろしい・・・。そこまで長期間、性転換状態になっても何も学んでいないと
   一蹴されそうで怖い・・・。身内の大多数が女性であるため、この点を把握しないと大変な
   事になりかねない・・・。

ミスT「まあ何だ、女性状態になろうが、俺は俺の生き様を貫くだけだがね。」
ミツキT「小母様、その話し方をそろそろ変えた方が良いかと。」
ミスT「・・・失礼しましたの。まあでも、この女性の姿になろうが、私は私の生き様を貫くだけ
    ですの。」
    彼女に指摘され、女性言葉で言い返す。某ゲームで有名な、吸血鬼姫の語末を用いた独特の
   言い回しである。それを聞いたミツキTは爆笑だし、釣られて妹達も爆笑しだした。それだけ
   インパクトがある証拠である。俺としては、遣る瀬無い気分で一杯だが・・・。

    とりあえず、身内にも妹達にも太鼓判を押された性転換状態。これなら、男子禁制とされる
   商業都市への入場は問題ないだろう。一応・・・。

    中半へと続く。

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