アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝8
〜覆面の探索者〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝8 〜覆面の探索者〜
    〜第1部・第9話 妙技を使う2〜
    数時間後、商業都市リューヴィスに到着。流石は女性の花園と言われるだけあり、他の都市
   よりも各段に防備が厚い。幸いにも、女性の状態の俺は問題視されないようである。しかし、
   何故に男子禁制に至ったのか。ここを探る必要があるかも知れない。

    荷馬車ごと都市内へ入れたのだが、内部を窺って驚愕した。それは、余りにも劣悪な環境
   だったからだ。妹達も黙ったままでいる。そして、何故ここが男子禁制に至ったのかを、今の
   俺自身の状態からして、文字通り身を以て思い知った。

ミスT「・・・淵源は野郎から逃れるため、か・・・。」
ネルビア「はい・・・。」
カネッド「一部で花の都と揶揄されるも、実際には男性に虐待などを受けた女性達が辿り着いた、
     最後の砦です・・・。」
    カネッドの話を聞き、怒りが湧き上がってくる。当事者の野郎共もそうだが、俺も1人の
   野郎なのだと思い知らされた。性転換ペンダントで形作ったところで、本当の自身を変える
   事はできないのも思い知らされる。
ダリネム「貴方は絶対に違いますよ。そうして、まるで我が事の様に怒ってくれるではないですか。
     同じだと言う方がいたら、絶対に違うと言い切ります。」
キャイス「心構えの時点で、雲泥の差そのものですよ。」
   心配するなと訴えてくる妹達。それに心から頭を下げた。俺の今までの行動を見て来てくれた
   何よりの証だ。本当に感謝に堪えない。
メラエア「ちなみに、私達もここに住んでいた事があります。」
ミスT「孤児院があるのか。」
ネルビア「正確にはあった、ですが。」
   妹達が静かに語り出す。辛そうな表情だが、今は内情を知らねば意味がない。

    10人が物心付いた頃、リューヴィスの孤児院で過ごしていたと言う。今はカルーティアス
   に移築したが、幼少期の頃を過ごして来たのはこことの事だ。何故廃園になったのかは、王城
   が絡んでいるらしい。

    過去に一時的だが、商業都市は隆盛を極めていたが、男性に虐待を受けた女性を招く事に
   より、都市としての質が低下したらしい。ただ、それは男性や私利私欲を貪るカス共からの
   視点であり、女性からすれば正に花の都となっていた。

    孤児院もそうらしく、かつてはその名に相応しくないほどの名家的な感じに至ったとの事。
   丁度妹達が過ごしていた頃らしい。それらに横槍を入れだしたのが王城との事だ。

ファイサ「ここで育った女性達が、シュリーベルやデハラード、遠方の造船都市へ進出し、劇的な
     活躍をしだしたのが気に食わなかったようで。」
ルマリネ「王城は男尊女卑が根付いているので、正に目の上の瘤だったと思われます。」
ミスT「・・・何時の時代も、野郎はカス共ばかりだな・・・。」
    淡々と語るその内容に、再び怒りが湧き上がってくる。この様相は、地球でのトラガンの
   女性陣と全く同じだ。怒りが湧かない方がおかしい。
アクリス「・・・私的な解釈なのですが、恐らくミスターT様が現状を打開すると思われます。」
ジェイニー「男性ながらも、まるで女性の如く振る舞われるその姿は、ある意味女性らしいと言い
      切れますし。」
ミスT「・・・トラガンの女性陣に、心から感謝しないとな。」
   徐に一服をしつつ天を仰ぐ。トラガンへの潜入捜査を経て、今の俺の境涯に至っている。彼女
   達が俺を育ててくれたとも言ってもいい。もし、リューヴィスの現状改善に一役買えるなら、
   そこにはトラガンの女性陣の一念があると言い切れる。
ミスT「・・・ミツキTさん、地球から彼女達を呼べないか?」
ミツキT「フフッ、既に手配済みですよ。何時でもこちらに呼べます。」
   現状打開策には、トラガンの女性陣の力がいる。それをミツキTに述べると、何と既に手配
   済みらしい。

    そう言えば、ここの様相は既に彼女は知っているらしく、ヘシュナを通して行動を取って
   いると言っていた。出逢った頃のトラガンの女性陣は弱々しかったが、今では一騎当千の女傑
   達にまで至っている。凄腕の警護者であり、独立戦闘部隊でもある。

    その彼女達の力を以てすれば、商業都市の現状改善に一役買えるだろう。同じ境遇を経て
   いる者同士、物凄い効果があると思われる。

ミスT「・・・何だか、現状改善とか、部外者の野郎の戯言に聞こえなくないがな。」
ネルビア「ご冗談を。そこに私利私欲が絡んでいるなら論外ですが、貴方のその姿勢は本当の現状
     改善ですよ。例え今は憎まれようが、後に花の都へ戻るなら良いと思います。」
カネッド「兄貴の生き様は、男女問わず刺激を与えますからね。特に今は女性の状態。特効薬なのは
     間違いありませんぜ。」
    カネッドの言葉を聞いて、ニヤッと笑いながら頷く妹達。その彼女達に深々と頭を下げた。
   本当に、真の女性は強いわな・・・。
アーシスト「とりあえず、今後はどうします?」
ミスT「・・・作戦と言ったら大変失礼だが、行動すべき事は1つだけしかない。」
   実際に何をするのかと尋ねる彼女達に、小さく微笑みながら語る。今は部外者たる自分に可能
   な行動は1つしかない。


    荷馬車を壁門近くに停車させ、徐に同車を降りる。マデュース改は空間倉庫に収納中で、
   獲物は携帯状態にしてある。言わば、丸腰の状態に近い。そのまま、商業都市の奥へと歩みを
   進めた。

    先ずは情報収集といきたかったが、近場で蹲る女性達の安否を確認していく。その誰もが
   傷を追っており、表情が死人の様相だ。その目は、絶望の色を醸し出している。

    その時、この場にいる傷付いた女性陣の姿に、逝去直前のミツキTの姿がダブりだした。
   あの時は、為す術無く彼女を失ってしまった。しかし、今は女性陣を救える力がここにある。
   ならば・・・何振り構っている時ではない。

エメリナ「お話を伺っていましたが・・・ここまでとは・・・。」
ミスT「・・・今から自分が行う行動は、偽善者かも知れないが・・・。」
    小さく呟きつつ、目の前の傷付いた女性に右手を掲げる。カルダオス一族の女王ヘシュナが
   目覚めた能力、身体完全回復と治癒の力を繰り出した。これも各ペンダント効果が成せる技の
   1つである。

    この能力は、ファンタジー世界観にある回復魔法や治癒魔法とは異なる。ヘシュナ曰く、
   生命の次元から揺さ振るため、遺伝子レベルからの治療が可能との事だ。過去に陽動作戦で、
   右肩と右腕を撃ち抜かれた事があったが、それを見事なまでに治癒してくれた事がある。

    目の前の傷付いた女性の全ての傷が、見る見るうちに回復していく。自身の傷が消え失せて
   いく様相に驚きの表情を浮かべている。その彼女の頭を優しく撫でた。

    その後も、目に留まる傷付いた女性を治療して回る。外面的な傷は全て残さない、それを
   念頭にいれつつ、今は最善の策を繰り返し続けた。

    後半へと続く。

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