アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝9
〜覆面の苦労人〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝9 〜覆面の苦労人〜
    〜第1部・第3話 昇格試験への加勢2〜
ミスターT「・・・はぁ、冒険者になるにはどうすればいい?」
受付嬢「あ・・ありがとうございますっ!」

    訓練場の使用料金を支払う中でも、俺達に向けられる目線が突き刺さってくる。これはもう
   逃げる事はできなさそうだ。そこで、こちらから冒険者になる事を宣言した。

    それを伺った受付嬢は、恐ろしいまでに輝かしい笑顔を浮かべだした。無意識に、俺の両手
   を握り締めて来たのが印象深い。淑女的な感じの彼女だと思ったが、どうやら違ったようだ。

    ちなみに俺だけではなく、リドネイも冒険者の登録を行う事にした。表向きは主人と奴隷の
   位置付けだが、実際には師匠と弟子の間柄だと彼女が豪語してきた・・・。

    まあでも、常に共に行動をするなら、共に冒険者になる方が良い。もし、彼女が本当に高貴
   なる人物なら、目の見える範囲内に居てくれた方が大いに助かる。


    ちなみに、冒険者登録に関してだが、呆気に取られるほど簡単だった。各作品では、色々と
   力量を測る事をしたりしていた。だが、実際には簡単な身分証明の発行と、手数料の銀貨1枚
   を支払うだけに過ぎなかった。リドネイの分も含めて、銀貨2枚の出費である。

    ただし、奴隷制度と同じく、罰則に関しては物凄く厳しかった。違反する行為の内容による
   のだが、その度合いによってはライセンスの剥奪は無論、永久に冒険者に登録する事が不可能
   になるという手厳しいものだ。

    しかもこれ、全ての冒険者ギルドに情報が行き渡り、二度と冒険者になる事が不可能になる
   と言う。魔物の素材を売却する際も非常に酷い。一定額の罰則金は発生するが、それ以外に
   手数料を9割取られるらしい・・・。

    こうなると最早、冒険者や狩人としては生活が成り立たなくなる。それ故に、今の所は違反
   行為を行う冒険者は皆無だそうだ。

    まあ、どの世界でも阿呆はいるものだ。何れその違反者が出てくるのは言うまでもない。

    ちなみにこの予感が、何れ当たる事になるとは、今の俺は夢にも思わなかったが・・・。


受付嬢「ライセンスに関しての詳細は、今お話した通りとなります。」
ミスターT「了解した。」
リドネイ「お姉様の顔に泥を塗る真似は、絶対に致しません。」

    発行されたライセンスこと、冒険者カードを受け取る。オマケなのか、専用のケースに挿入
   してくれた。ケースにチェーンが付着されており、それを首から下げる形になるようだ。

    冒険者カード自体はかなり小さい。それ故に、この様にぶら下げるタイプの方が紛失しない
   のだろう。また、紛失した際の再発行の手数料は、非常に高額を支払う必要がある。

    とにかく、マイナス面となる行動に重罪を施し、それらを徹底する事で防いでいるようだ。
   非常に高圧的ではあるが、殺伐とした異世界であれば、このぐらいの徹底振りは必要だろう。

    ちなみに、リドネイが受付嬢をお姉様を呼んだからか、顔を真っ赤にして恥じらいでいる。
   初見時の淑女的な様相は、一体何処へ行ったのやら・・・。



ミスターT「そうだ、1つ質問があるんだが?」
受付嬢「はい、何でしょう?」

    冒険者登録を終えた後、気になる事を伺った。それは、他の冒険者の昇格試験に加勢する
   事ができるかどうか、である。

    些細な事ではあるが、受けた恩には報恩で返さねばならない。その点を踏まえて、この質問
   は非常に重要な事になる。

受付嬢「その場合ですと、加勢される側の冒険者の総合目標達成数が倍化します。討伐目標となる
    魔物の数と、素材の獲得数が2倍になります。」
ミスターT「加勢する側の人数による倍化は?」
受付嬢「その場合は、人数により更に増加します。1人なら2倍、2人なら3倍、3人なら4倍と
    なりますね。」

    なるほど、恐ろしいまでの追加要素だわ。ただし、それだけ安全に昇格試験を遂行する事が
   できるとあってか、加勢する冒険者は多いようだ。

    当然ながら、加勢する側の冒険者への報酬は一切ない。全て自腹で行わなければならない。
   言わば、ボランティア活動そのものだ。まあ、異世界にはボランティアという言葉はないとの
   事だが・・・。

    まあでも、昇格試験に加勢する事は、何れ加勢する側が同じ立場になった際に非常に役立つ
   と言われている。討伐対象や依頼内容は、その試験により変わってくる。予め、試験の内容を
   踏まえておけば、いざ本番の際はスムーズに進めると言う。

    更に暗黙の了解として、加勢された側の冒険者が、加勢した側の冒険者にお零れを贈呈する
   そうだ。冒険者ギルド側も黙認しているようで、この恩恵を得ようとする冒険者が多いとも
   言われている。


受付嬢「ミスターT様は、何処かの冒険者に加勢するのですか?」
ミスターT「ああ、先日お世話になった“4人”にね。」

    そう言うと、酒場のテーブルの方に目を向ける。酒場ブースの一番端側で、項垂れている
   彼らを目にした。昨日知り合った、ウェイス・サイジア・ナディト・エルフィの4人だ。

    あの様子からして、昨日の昇格試験は失敗したのだろう。ミスは1回だけなら許されるが、
   2回目は許されない。次の試験で失敗した場合、再度申請をし直さなければならないらしい。
   それに、昇格試験を受けるためのポイントという数値を、再度溜めねばならないのだとも。

    これに関しては、昇格試験を受ける冒険者に対し、その実力が備わっているのかを再確認
   させる意味合いが込められているとの事。2回も失敗するのなら、相応しい実力が備わって
   いないと見なされても致し方がない。

    と言うか、その仕様を伺って、地球での運転免許試験の時を思い浮かべてしまう。俺も学科
   に関しては2回ほど落ちており、その際は非常に落胆した・・・。

    ただ、世の中には更に落ちている方がいるようなので、俺の場合は優しい感じにはなるが。
   俺の場合はある意味、幸運だったのだろうな・・・。

受付嬢「なるほど、“四重の壁”の方々ですね。」
ミスターT「あの様子だと、昨日失敗した感じか。」
受付嬢「はい。目的の討伐自体は成功されたのですが、乱入された魔物を見て撤退されたのです。」
ミスターT「ふむ、討伐証明が出来なかったのが原因か。」
受付嬢「そうなります。相手が相手だったもので。」

    小さく呟きつつ、簡単な内容を語ってくれた。どうやら、目的の魔物以外に乱入者がいたと
   言うのだ。その乱入者が恐ろしく強いとあり、大事を取って撤退したのだと言う。

    普通のイケイケな冒険者なら、何としても遂行しようと突っ走るのだろう。しかし、彼らの
   モットーとするのは、五体満足で完遂する事だ。これは、先日伺った事により知っている。


ミスターT「諸々、了解した。ありがとな。」
受付嬢「いえいえ。今後とも、よろしくお願い致します。」

    会話を終えて、深々と頭を下げてくる。受付嬢の様相を踏まえれば、俺達の冒険者への加入
   が有難かった事が窺えた。何だか悪い気がしてならない・・・。

    恐らく、昨日の初対面時に同じ事を思っていたのだろう。それでも切り出さなかったのは、
   こちらの様子を見てくれたからと思われる。

    まあ、予約無しで訓練場を借りれたという部分もあり、彼女の輝かしい笑顔という圧力も
   相まって、押された感じではあったが・・・。

    ともあれ、次の目標は報恩感謝の戦いだ。酒場のカウンターに向かいつつ、今後の流れを
   脳内に思い浮かべた。

    中半2へと続く。

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