アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝9
〜覆面の苦労人〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝9 〜覆面の苦労人〜
    〜第1部・第3話 昇格試験への加勢5〜
    普通の盾を店主に戻し、俺は大盾が置かれた場所へと向かう。盾のスペースの一番端に、
   その場所はある。とにかくデカい盾が多い。しかし、ここでも期待を裏切られる事になった。

ミスターT「・・・マジか・・・。」

    一番手前にあった大盾を持ってみる。すると、すんなり持ち上げる事ができたのだ。これ程
   の重量級な盾を持ち上げられた事に、ただただ驚愕するしかない。

    しかし、流石に片手でブンブン振り回すには重過ぎた。携帯十字戟ほどの重量ではないが、
   振り回すのは間違いなく不利である。だからこそ、ドッカリ構えて使うのだろうな。

ウェイス「・・・ミスター、それを持ち上げられるのか・・・。」
サイジア「・・・見事ですね・・・。」

    一部始終を伺っていたウェイスとサイジアが、驚愕と感嘆の声を挙げている。この体躯が
   良い2人が持つ盾でも、先程リドネイに進められた普通の盾である。それを踏まえれば、俺が
   持とうとしている大盾は規格外に等しい。

    同時に、それだけ防御面では有用である証拠となる。5人の盾となる存在なら、彼らの補佐
   は十全に活躍できるだろうな。

ミスターT「店主、これらの大盾で一番防御面が優れているのは?」
武器屋店主「そうだな・・・一番右端のだな。」

    そう指し示す先にあるのは、試しに持った大盾よりも巨大な大盾だった。それを見た時は、
   流石に怯んでしまう。確実に2mは超えている、超重量の大盾だ。

    ここでも試しに持ってみる。すると・・・先程以上に期待を裏切ってくれた・・・。何と
   先の試し持ちした大盾よりも軽いのだ。拍子抜けするとは、正にこの事を言うしかない。

ミスターT「これ・・・さっきのより軽いんだが・・・。」
武器屋店主「白銀を使っているからな。物理攻撃は無論、魔法攻撃も問題なく防ぐぞ。」

    これが白銀の金属か・・・初めて見た。白銀貨の硬貨は、ティルネアより存在すると伺って
   いる。実際にお目に掛かる事は希だろうが、それだけ希少金属であるのは言うまでもない。

    推測だが、位置付け的にはファンタジー世界で有名なミスリル金属か。身内が言うには、
   各作品で上位に位置する軽量金属との事だ。


    前にも挙げたが、白銀の材質は非常に硬質であり、特に魔力伝達率がズバ抜けて優れている
   という。魔法使いや聖職者が触媒として使う事も多く、別名は神秘的な金属と言う名も付いて
   いる。

    当然、付与魔法との相性も抜群らしく、魔力や魔法を付与すれば魔法武器に化けるという。
   魔法を使う戦士や剣士との相性も良いだろう。

    これも以前に挙げたが、黒銀の金属も存在している。白銀を超える硬度を誇るが、非常に
   扱い難いとされる超希少の材質だ。これの獲物となると、相当な逸品になるだろう。実際に
   この目で拝見してみたいものである。

    他にも、鉄や鋼鉄もあるが、白銀や黒銀には遠く及ばない。しかし、量産品としては秀逸な
   金属で、数多く出回っているため安価だ。冒険者ご用達とも言ってもよいらしい。


ミスターT「・・・店主、これの価格は?」
武器屋店主「それか? 銀貨100枚だな。」
ミスターT「本当か?! 安過ぎじゃないか?」
武器屋店主「構わんさ。試作品で作ったものだしな。」

    聞かされた価格に素で驚愕した。この手の逸品なら、間違いなく金貨100枚はするのだと
   身構えていたからだ。この異世界の金銭事情には、どうも感覚を狂わされる・・・。

    店主は試作品だと言っているが、それでも白銀は相当な価値がある金属だ。硬貨でも一番
   高価な位の額を任されている。まあ硬貨と武器防具に使われる素材は、恐らく純度などの問題
   で異なるとは思うが・・・。

ミスターT「・・・リドネイに見繕ってくれた盾は?」
武器屋店主「向こうは銀貨10枚だな。」
ミスターT「ふむ・・・。」

    リドネイに勧められた盾の価格は、白銀の大盾と7倍差となる。差的に考えれば、案外彼女
   の盾の方が高級感が感じられる。それだけ信頼に富む逸品なのだろうな。

    手持ちの銀貨は201枚ある。白銀の大盾が銀貨100枚、リドネイの盾が銀貨10枚、
   合計で銀貨110枚の出費となる形だ。残りは銀貨91枚だが、これだけあれば他の物品は
   購入可能だと思われる。

    生命を預ける獲物ならば、出し惜しみは厳禁だ。トコトン追求すべきである。それに、4人
   が遭遇したブラックハウンドの様相が掴めない以上、過剰なまでの防御面を考えた方がいい。

ミスターT「リドネイは、それで大丈夫そうか?」
リドネイ「はい。問題なく扱えそうです。」

    そう言いつつ、左手に盾を構えて見せた。店主の見立て通りの性能を有しているようだ。
   これなら問題なく扱えそうである。

    機動力を削がれるかと危惧していたが、彼女の体躯からして問題はなさそうだ。やはり、
   闘士の資本は体躯であると痛感せざろう得ない。

ミスターT「了解した。店主、この2つを頼む。」
武器屋店主「分かった。カウンターまで運ぼう。」

    白銀の大盾を両手で持ちつつ、そのままカウンターへと戻る店主。流石にリドネイが持つ
   盾は持てなさそうで、彼女に頼んで持って来て貰う形になった。

    ここに来て、銀貨110枚の出費か。なかなかの買い出しだろう。それでも、必要である
   から購入する、ここに間違いはない。


    俺とリドネイの盾は済んだが、ナディトとエルフィの盾選びが終わっていなかった。4人の
   うち盾を持っていないのは、この2人だけである。

    先にも挙げたが、ウェイスとサイジアは、リドネイと同じ様な盾を所持している。戦術と
   しては、2人が防御面を担当し、ナディトとエルフィが攻撃面を担当するとの事だ。

    実際に見てはいないが、リドネイ自身も攻撃面を担当する事になると思われる。と言うか、
   俺が白銀の大盾を購入したからには、防御面に徹する以外にない。俗に言う、タンクと言う
   感じだろう。これも出所は身内である。

    4人が一括して持つ資金は結構あるとの事。そこでこの際、盾所持者のウェイスとサイジア
   に買い替えを勧めてみた。防御面の強化は出し惜しみをしない方がいい。鎧などの防具は、
   この後見繕う事で良いだろう。


    しかしまあ、異世界に到来したと思わざろう得ない。改めて武器屋を見渡すが、そこにある
   数多くの武器は非常に輝かしい。警護者という役職に就いているからか、武器関連に関しては
   非常に興味を惹かれる。

    特に剣や盾など、ザ・ファンタジーそのものだ。地球で同物を購入するとなると、レプリカ
   などの劣化版しかない。日本では模造刀が良い例である。いや、刃なしの日本刀にも劣る。

    その手の店に赴けば、西洋の騎士剣などは手に入る。しかしそれらは所詮、調度品程度の
   意味合いでしかない。現実で振り回せば、下手をしたら銃刀法違反で捕まる恐れもある。

    まあ、うちら警護者に属する面々は、そういった法規を無視できる状態だ。でなければ、
   街中を武装状態で出歩く事など不可能である。それに警護者の武装は、警察庁長官殿からの
   お墨付きもあるしな。

    無論、あくまでも警護者という位置付けでの使用になる。闇雲に振り回すのは無粋過ぎだ。


    色々と武器を見て回っていると、4人の方も新たに盾の新調を終えた。彼らもカウンターに
   向かったので、俺も駆け付ける事にした。

    既に俺とリドネイの盾の価格は分かっているので、空間倉庫より銀貨110枚を取り出す。
   それをカウンターのトレイへと乗せていった。案の定、俺が空間倉庫能力を持つ事に驚きを
   示す彼ら。店長すらも目を見張っていた。

    一応、この異世界では空間倉庫の魔法やスキルはあるらしい。だが、俺が用いたのは能力
   扱いだとティルネアは語る。つまり、滅多に見られない能力との事だ。

    そんな優れ物の能力を惜しみなく投じた彼女には、脱帽すると同時に心底呆れるしかない。
   まあ役に立ってはいるので、ここは素直に感謝するしかないが・・・。

    これで、武器面の準備は万端となった。次は防具面である。

    後半3へと続く。

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