アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝9
〜覆面の苦労人〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝9 〜覆面の苦労人〜
    〜第1部・第03話 昇格試験への加勢 受付嬢(テネット)の視点〜
    〜受付嬢の視点〜

    私は、冒険者ギルドの受付嬢をしております。名前はテネットと申します。

    今思いましたが、懇意にさせて頂いているミスターT様に、この名前をお話していません。
   何だか失礼な感じがしてなりませんね・・・。今度、正式に自己紹介をしませんと。

    しかし、彼の言動には驚きです。初対面の時からも驚かされました。


    先ずは、何故に覆面を着用しているのか。更にその上から仮面をしているという。本当に
   不思議な方です・・・。

    ただし、その不思議さは実力で覆しているかの様に思えます。特に、空間倉庫能力を持つ
   者は非常に希です。それを出し惜しみせずに使う姿勢に、強者の気質を感じ取れました。

    この手の特殊能力を持つ方は、他の冒険者から異質に見られるでしょう。必要以上の力を
   持つ人物に対して、嫉妬心を抱くのが常ですし。まあ、彼の場合は一蹴しそうですが・・・。

    とにかく、初対面からも分かる通り、実に不思議な人物としか言い様がありません。


    ところが、更に異質の存在であると痛感します。それは、普通であれば、目立った関わりを
   持たない冒険者に語り掛けたのです。しかも、お酒にお摘みも持参しての、実に念の入り用
   でした。そして、何気なく接しだしたのです。

    どうしてそこまで、他者に関わり合いを持とうとするのか。それでもその行動を貫くのは、
   何らかの意味があるのだと思えました。


    逸脱した行動は続きました。冒険者達との対話をされた翌日には、見知らぬ女性を連れて
   現れたのです。身体の色付きに尖り耳を窺えば、ダークエルフ族であると思われます。ただ、
   首元の首輪を見れば、彼女が奴隷である事が分かりました。

    本来、ダークエルフ族やエルフ族は、人間に対して良い印象を持っていません。冒険者でも
   その様な方がいらっしゃいますが、どうしても一定の距離を置いています。しかしこの方、
   リドネイ様は違いました。誰とでも分け隔てなく接していらっしゃった。

    奴隷の身分であるため、そういった対応をされている。当初はそう思いましたが、どうやら
   そうではなさそうです。それに、ダークエルフ族はプライドが高い種族ですし。その彼女の
   心を砕いた彼には、ただただ脱帽するしかありません。


    そして、極め付けが“四重の壁”のパーティーへの介入。先日、昇格試験を仮失敗したの
   ですが、その彼らに加勢を申し出てきたのです。リドネイ様もご一緒でした。その介入に、
   彼らの方も断る事をしなかった。

    介入する人物が1人増える毎に、討伐対象となる相手が増えていく。これにより、昇格試験
   に加勢する人物を断る傾向があります。それ故に、加勢するのを嫌う冒険者が多いのが実状
   です。

    ところが、四重の壁のパーティーは一切嫌っていなかったのです。まるで彼は、昔から4人
   と顔見知りだったかのように・・・。本当に不思議としか言い様がありません。


    今も酒場の橋のテーブルで、全く分からない娯楽に興じている彼ら。ダウドという、全く
   知らない遊びを窺い、不謹慎ながらも私も興味が惹かれています・・・。

    突然、旋風の如く現れたミスターT様。彼はこの先、一体どんな事を巻き起こすのかと、
   一介のギルド職員ながらも期待してなりません・・・。

    この時の私の直感が、後に私自身の人生すらも変えるとは思いもしませんでしたが・・・。


    人生とは、本当に不思議な出来事が多く起こるのだと、改めて思い知らされました。それに
   気付かせてくれた彼に、心から感謝するしかありません・・・。

    〜受付嬢の視点、終了〜

    第4話へ続く。

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