アルティメット エキサイティングファイターズ 外伝9 〜覆面の苦労人〜 |
アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝9 〜覆面の苦労人〜 〜第1部・第05話 修行と武具作成1〜 ウェイス達の“四重の壁”のパーティー。彼らの昇格試験が無事終了した。 今回は、パワーベアー達を一定数討伐するのが目的だった。ところが、そこに乱入者が到来 する。一度目の試験を失敗に追い込んだ、宿敵ブラックハウンドである。しかも、1体では なく2体だった。 更には、途中で加入したトーラの宿敵たる、愚物冒険者共も乱入してきた。最早、プロレス ではないかと思ったが、その愚物共は2体目のブラックハウンドに瞬殺されてしまう。正に 一撃必殺そのものだった。 だが、上には上がいるものだ。即座に展開した戦術により、辛くもブラックハウンドを倒す 事ができた。ウェイスとサイジアとリドネイの3連携である。俺とエルフィの速度の増減や、 リドネイの命中と回避の増加支援もあった。 何の対策も行わなければ、間違いなく劣勢に立たされていただろう。愚物冒険者共は何ら 問題なかったと思われるが、ブラックハウンドは完全に異常枠だったしな。 残りのブラックハウンドは、パワーベアー達が集団戦法で倒している。数の暴力である。 幸いにも、そのパワーベアー達とは睨み合うものの、戦わずに去ってくれた。こちらとしては 倒すつもりでいたが、これはこれで本当に一安心と言った所である。 その後、ナディト達が街に赴き、テネット達を呼び寄せて現状の報告をした。これは、昇格 試験の問題ではなく、愚物冒険者共に関してである。 冒険者の概念からして、下手に事を行えば罰せられる恐れがあった。そこで、ナディト達に テネット達を呼んで貰う事にしたのである。ついでに、パワーベアー達の討伐の様相も知って 貰えたため、一石二鳥的な感じとなった。 テネットや他のギルド職員、そして護衛の冒険者達も、愚物冒険者共には苦渋を飲まされて いたようだ。遺体をその場に放置するという事から、どれだけ嫌われているのかが窺える。 それに、俺達が直接手を下した訳ではない。ブラックハウンドの逆襲撃を受けて瞬殺された のが筋だ。警戒を怠っていたのもあるが、冒険者であれば不測の事態による死亡は致し方が ないとも。 そう、これが異世界の仕様。生きるも死ぬも、ごく自然と隣り合わせに存在している世界。 ベイヌディートの異世界は、それだけ殺伐としていた。 この世界で生き抜くのに、警護者の生き様が非常に役立っている。恐らくこれを見越して、 創生者ティルネアは俺を呼んだのだろうな。実に不思議な流れである・・・。 昇格試験の翌日。俺は冒険者ギルドへと足を運んだ。昨日は打ち上げとして、大いに盛り 上がった。テネットは無論、他の職員達や冒険者達も巻き込んでの飲み会である。 下戸である俺は、彼らに酒を注ぐ役割を担った。と言うか、周りの様相からして、そうして いなければ絡まれたであろう。一種の逃げ道である・・・。 驚いたのが、幼子に見えたトーラが成人に至っていた事だ。しかも彼女、この場にいる全員 よりも酒豪であった。どれだけ飲もうが、全く酔わなかったのだ。 次いでリドネイも酒豪に近く、トーラと共に恐ろしいまでに酒を飲み捲くっていた。他の 男性陣が降参するぐらいの様相である。ちなみに、テネットは早々にダウンしている・・・。 ミスターT「・・・おはようさん。」 テネット「あー・・・ミスターTさん・・・。」 冒険者ギルドに入り、カウンターへと向かう。そこには、辛そうに職務を行うテネットの 姿があった。昨日の酒が抜け切れていないようである。 ミスターT「酒は程々にな・・・。」 テネット「慣れないだけですよ・・・。」 ジョッキ一杯にも充たない酒で、あそこまで酔い潰れた彼女。慣れる以前に苦手だとしか 言い様がない。それでも、一同してドンチャン騒ぎをしてくれた事に感謝せざろう得ない。 1つ詫びるとすれば、下戸として酒を飲まなかったこちらの対応だろう・・・。 ミスターT「昇格試験の方はどうだ?」 テネット「文句なく合格ですよ。」 昨日の昇格試験を訊ねてみた。彼女自身、実際に現地に赴いて、その様相を窺っている。 討伐対象のパワーベアー達の数に、乱入者たるブラックハウンド達。そして、冒険者ギルドが 手を焼いていた愚物冒険者共の始末。 魔物達の討伐でも申し分ない結果だったが、最後の悪党たる愚物冒険者共の始末が大きいと 彼女は語る。冒険者ギルドとしても、討伐対象とするまでの輩だったという訳だ。 ミスターT「はぁ・・・悪党の末路、ねぇ・・・。」 テネット「もし、あのまま倒されずに街に戻って来たら、それこそ討伐対象となったと思います。」 ミスターT「俺達を背後から急襲しようとしてたしな。」 近場にある椅子に腰を掛ける。当日の様相の報告は後日となる。しかし、今現在で語れる 事は、簡単ではあるが伝えておこう。 人間は時間が経てば、当日の様相を忘れていく種族だ。記憶が鮮明な時でしか、詳しく様相 を語る事はできない。まあ、昨日のあの事変は、ブラックハウンドの独壇場ではあったが。 ミスターT「ともあれ、ウェイス達はAランクに無事昇格、と。」 テネット「それと、貴方とリドネイさんはEランクに昇格ですよ。」 ミスターT「・・・は?」 我が耳を疑う事が告げられた。ウェイス達の昇格試験により、彼らの冒険者ランクがBから Aに上がるのは分かる。だが、俺とリドネイは成り立てのFランクのままだ。それが、一段 上位のEランクに昇格したのだと言う。 更には、トーラのCランクもBランクに昇格したらしい。それだけ、先日の昇格試験の様相 は凄かったと言う事だ。 ミスターT「・・・昇格試験を受けていないんだが・・・。」 テネット「貴方とリドネイさん、それにトーラさんがいなかったら、今回の昇格試験も失敗だったと 思います。加勢による参戦でしたが、それを上回る結果となりましたので。」 ミスターT「そうなのか・・・。」 テネット「それに、下手をしたら全滅していた恐れも。」 彼女の言う通りかも知れない。再度のブラックハウンドの襲来があったとしても、それが 1体ではなく2体だとしたら更に変わっていたと思われる。 愚物冒険者共に関しては、俺達をターゲットとしていた。だが、もしウェイス達にも横槍を 入れていたら、最悪の事態に至っていたかも知れない。 それに恐らく、先にも挙がったが、連中を始末するという事が決定打となったのだろう。 冒険者ギルドとしても、自分の手を汚さずに事を終えられたのが大きかったと思われる。 地球は警護者界でも、同じ様相が何度もあった。表向きには護衛などと言った、合法的な 依頼を遂行をする。しかし、裏では対象の抹殺も兼ねている事があった。事故に見せ掛けて、 自然と始末するという流れである。 警護者界では、地球での合法非合法問わず、どんな依頼であろうが受け持っている。更に、 警護者自体がそういった事変に遭遇しても、お咎め無しとされるのが定石である。 一見すれば、悪の極みとも言えるのだが、それが罷り通るのが警護者の存在だ。それだけ、 裏の世界では必須的な存在であると言い切れる。 異世界ベイヌディートでは、恐らく冒険者が警護者に位置付けられるのだろうな。ただし、 警護者界ほど、お咎め無しとされる事はないと思われる。 幾ら冒険者が、世間体の目を掻い潜る事が可能な組織であっても、それが絶対的ではない。 実際問題、愚物冒険者共があの様な末路を辿るに至った。それが何よりの証拠である。 それでも、警護者の様に誰でもなれるという役職ではない。それを踏まえれば、冒険者は 誰でもなれる警護者といった感じだろう。それ故に、あの様な愚物が蔓延るに至るのだ。 今後も、ああいった愚物が必ず出てくる。これは確信論だと言い切れた。俺も一介の警護者 である。この手の流れは、薄々感じ取る事ができた。 中半へと続く。 |
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