アルティメット エキサイティングファイターズ 外伝9 〜覆面の苦労人〜 |
アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝9 〜覆面の苦労人〜 〜第1部・第05話 修行と武具作成2〜 テネット「あの・・・ミスターTさんは、何らかの軍隊に所属されているのですか?」 ミスターT「軍隊、か・・・。」 一服しながら思い巡っていると、カウンター越しから語り掛けられた。テネットが挙げた のは、俺の生き様に関してである。規律が取れた言動は、端から見れば軍隊式にも見える。 確かに警護者は、一見すると軍隊そのものだ。しかし、実際は依頼を受けてから動く、傭兵 の様な存在である。軍隊とは掛け離れた、“半”自由な生き様だ。 ミスターT「軍隊ではないが、それに近い存在だろうな。」 テネット「やはり・・・。あまりにも規律が取れていらっしゃいますので・・・。」 ミスターT「そんな大層な存在じゃないよ。俺の生き様は、所詮は人殺しに過ぎない。」 そうボヤきつつ、天井を見入った。警護者の真骨頂は、護衛対象を守るためなら、どんな 障害であろうが排除する事である。それが人であれば、殺害してでも遂行する。 そんな、悪党染みた生き様が、地球では罷り通っている。その様な存在が警護者である。 警護者とは、悪人の真骨頂だと言わざろう得ない。 テネット「ですが・・・迷いを抱いているのも感じられます。」 ミスターT「ハハッ、迷いか。“この道”は、迷い無しには生きていられんよ。」 内情を察知され、小さく笑って見せた。テネットにすら読まれるとなれば、俺の迷いは相当 なものだと言える。しかし、今はまだ“引き金を引ける”状態である。 だが何れ、引き金を引く事に躊躇するようになるだろう。それを踏まえれば、ティルネア より託された遂行者の生き様は、ギリギリの範囲内で遂行可能だと言える。 ミスターT「まあ何だ、今後も己が生き様を貫くまでよ。」 テネット「そうですか・・・。」 素っ気無く締め括ると、怪訝そうな雰囲気を浮かべてくる。彼女も冒険者との事なので、 俺の内情を察知するのは容易であろう。冒険者も警護者も、直感と洞察力がモノを言う職業 だしな。 それでも、俺が定めた生き様なのだ、曲げるつもりは毛頭ない。それに今は、創生者たる ティルネアから重役を託されている。膝を折る事など、できはしないのだから・・・。 今日は休息とあり、それぞれの面々は自由に行動をしている。ウェイス達は大いに休みたい と言っており、詳しい事は後日行うと話していた。 リドネイはトーラと共に、簡単な依頼を攻略しに行った。と言うか、2人とも基礎戦闘力は 強者そのもの。討伐依頼の方が戦闘訓練になるだろう。だが、2人して雑用的な感じの依頼を 受け回っている。 俺はと言うと、冒険者ギルドの屋内や屋外を掃除して回っていた。今はやる事がないため、 この様な雑用が非常にシックリくる。地球では喫茶店の運営がそれで、暇な時は掃除に明け 暮れていたのが日常だ。 ベイヌディートに到来する前にも思っていたが、俺には休息は合わないのかも知れない。 常に何らかの行動をしていなければ、非常に落ち付かないのだ。 屋外を掃除していた際、目の前を泣きながら歩く女の子がいた。掃除を止めて駆け寄ると、 どうやら迷子のようである。その彼女を抱きかかえ、冒険者ギルド内へと向かう。 俺の身形は、見も知らぬ覆面と仮面を着けた変人だ。普通ならば、こんな輩に抱きかかえ られれば、間違いなく大泣きするだろう。ところが、この女の子は何と泣き止んでしまった。 非常に大人しくなったのだ。 そう言えば、過去に身内が言っていた。泣き続けたり、愚図ついていたりする幼子を、ただ 抱きかかえると泣き止ます事ができると。俺自身が無意識で行っているため、そう言われて 初めて知ったのが実状だった。 ミスターT「あー・・・迷子のお嬢さんはどうすれば?」 複数の冒険者の対応が終わった頃を見計らい、カウンターにいるテネットの元へと向かう。 俺の様相に呆気に取られているが、理由を窺い知って笑みを浮かべてきた。 受け付けを他の職員に任せ、こちらへと出てくる彼女。抱きかかえる女の子を、自身の胸へ 迎え入れる。すると何と泣き出してしまう。その様相を見て、俺の方をジト目で見て来た。 直ぐに女の子を受け止めると、案の定泣き止むのである。 ミスターT「・・・俺が親御さんを見つけてくるわ・・・。」 恐ろしいまでのジト目を浮かべつつ、無言で見つめてくるテネット。自分には対応外だと 全てで物語って来る・・・。その様相を見て、俺が女の子を親の元に帰す事を受け持った。 何と言うかまあ、俺は雑用が非常に合うのだと痛感させられたわ・・・。 女の子を抱きかかえつつ、ラフェイドの街を散策する。彼女の母親は直ぐに見つかったの だが、その親も困らせるように泣き出す女の子である・・・。 そこで、彼女が落ち着くまで、母親と共に街中を散歩し続けた。本当に雑用としか言い様が ない。まあ、こうしたノホホンとした雑用も、ある意味休息なのかも知れない。 それに、こちらを新米のギルド職員だと勘違いした母親から、この街に関して色々と伺って 回れた。実際に、この街は初めてだらけだったので、これはこれで非常に有難いものだった。 そうしているうちに、胸の中の女の子はスヤスヤと眠りだした。その様子を母親と共に、 微笑ましい目線で見守り続けた。 最後は、母親と女の子の自宅まで送り届ける。自宅に到着しても、女の子は眠っていた。 俺の胸から母親の胸へと移動しても、静かに眠り続けている。簡単な挨拶をして、その場を 離れた。 ちなみに、2人の自宅は冒険者ギルドの裏手である。それを踏まえると、あの女の子は相当 な冒険をしたのだろう。その小さな冒険心に、心から頭を下げた。 中半2へと続く。 |
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