アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝9
〜覆面の苦労人〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝9 〜覆面の苦労人〜
    〜第1部・第05話 修行と武具作成4〜
テネット「そ・・そう言えば、ミスターTさんの獲物は特別仕様なのですか?」
ミスターT「ああ、この2つか。」

    コーヒーを啜り終え、腰と背中の携帯兵装を展開させる。腰は携帯方天戟が、背中は携帯
   十字戟が格納配置されている。絶対にそこにないような獲物が現れて、周りにいる面々は驚愕
   していた。

リドネイ「何度見ても、不思議としか言い様がありませんよね。」
ミスターT「格納式なのに、強度は通常式と何ら変わらないしな。」

    本当にそう思う。過去に仕込み刀の例を挙げたのだが、本来の姿を改変すると弱体化しかね
   ない。仕込み刀の強度では、通常の日本刀には到底敵わないからだ。

    それと同じ意味合いで、携帯方天戟と携帯十字戟は、当初に製造した通常兵装より脆弱な
   仕様となっている。それでも、その脆弱さを打ち消したのが、今の俺が持つ獲物群である。

    特に、この異世界ベイヌディートに到来してからは、その強度を如実に感じている。携帯式
   なのに、通常式以上の強度を誇っているのだ。実際にスピードハウンド達と対峙した際、その
   様な業物に化けている事に驚いた。

    これに関しては、創生者ティルネアが異世界仕様であると断言してくれた。どうやら、魔力
   が獲物自体の強度を底上げしているようなのだ。


    魔力に関してだが、この異世界ベイヌディートには、万物の属性と同じく内在している力の
   1つとの事だ。反魔力的な力は構築できるらしいが、抜本的に魔力を失わせる事は不可能との
   事である。つまり、異世界の何処に行こうが、魔力は潤沢に備わっている。

    ティルネアが挙げた異世界仕様とは、地球で製造した業物に、異世界の魔力が付与されたと
   取って良いだろう。自然的に付与されたとあれば、その強度は白銀は無論、黒銀と互角か超越
   する可能性もある。

    下手をしたら、各作品で有名な聖剣や魔剣、仕舞いには神剣にすら匹敵する獲物となる。
   地球では量産品の携帯兵装だが、異世界では伝説的な獲物に化けるのだから恐ろしい話だ。

    ともあれ、俺の獲物事情に関しては、携帯方天戟に携帯十字戟があれば申し分ない。他は
   何れリドネイより返却される、通常日本刀に太刀型日本刀があれば問題ないだろう。


トーラ「ほほ、これは扱い易いですね。」

    彼女の声で我に返る。そちらを見ると、2つの携帯兵装を軽々と振るっていた。流石としか
   言い様がない。まあ、重量級の特大剣を軽々と振るうのだから、携帯兵装など普通の重量の剣
   程度でしかないだろう。

    しかし、俺達の誰よりも小柄な彼女が、重量兵装を振り回す姿には驚愕させられる。見た目
   に騙される典型的な例と言えるだろう。まあ、これも異世界仕様だと言えばそれまでだが。

トーラ「何時も、この様な獲物を使われているのですか?」
ミスターT「いや、特殊兵装の類だから、まだまだ腕は未熟よ。むしろ、プロレス技の方が性分に
      合うわ。」

    こちらの言葉に首を傾げる一同。異世界には、プロレスことプロレスリングの概念は存在
   していないようだ。ただ、肉弾戦を主体とする格闘技は存在しているようである。

    俺の警護者での生き様でも、主軸は肉弾戦による近接戦術である。重火器などは、相手が
   同じ獲物を使った際の相殺技として使うに過ぎない。最後は殴り合いによる解決が無難だ。

    だが、異世界ではその仕様は非常に厳しいと思われる。人型の種族であれば、肉弾戦は十分
   通用するだろう。しかし、スピードハウンドなどの獣型の魔物には通用しない。そこは獲物を
   使うしかないだろうな。

ウェイス「プロレス・・か、何か響きが良い感じだ・・・。」
サイジア「身体の内から、力が湧き上がる感じですよね・・・。」

    プロレスと言う単語を聞いた2人が、自然とそこに回帰していった。そう、地球でも全く
   同じ身形の身内2人が、過去に全く同じ言葉を言った事が脳裏に蘇る。本当に、不思議な縁
   としか言い様がない。

ミスターT「武器や魔法が使えなくなった場合、最後は己の肉体が武器になるしな。近接格闘技は
      覚えておいて損ではないよ。」
ナディト「良いですね!」
エルフィ「機会があれば、是非ともトライしてみますよ。」

    ウェイスとサイジアと同じく、ナディトとエルフィもプロレスの概念に魅入られたようだ。
   こちらも、地球での身内の2人と全く同じ言動である。身形も気質も、あの4人に本当に良く
   似ているわ・・・。

    まあでも、実際問題は身内達には遠く及ばないだろう。冒険者としては、ウェイス達の方が
   上手だが、プロレス馬鹿としての気質は身内達に絶対に勝てない。

    特に身内の中の“3人”は、間違いなく逸脱した力を誇っている。俺も用いる事ができる、
   “力の出し加減の触り”がそれだ。身内の4人ですら、その力を繰り出す事ができないしな。


    この異世界で、俺の力が何処まで通用するかは、まだまだ検証段階ではある。創生者たる
   ティルネアより与った力を含めても、それが何処まで通用するかは不明だ。

    しかし、何度も挙げるが、超絶的な力を持ったとしても、決して傲ってはならない。傲りの
   先にあるのは、明確なる破滅そのものだ。それに、俺自身で勝ち得て来た業物でもないのも
   確かである。

    周りあっての己自身、それを決して忘れてはならない。そして、それらの力を何のために
   使うのか、これも決して忘れてはならない。

    警護者の異名は、調停者である。一歩踏み込めば、裁定者となる場合もある。だが、それら
   の役割にも傲りを持ってはならない。

    何事も、絶え間ない努力の先に至る力の数々だ。それを踏まえれば、俺もまだまだ未熟で
   あると痛感せざろう得ない。

    中半4へと続く。

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