アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝9
〜覆面の苦労人〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝9 〜覆面の苦労人〜
    〜第1部・第05話 修行と武具作成5〜
ミスターT「・・・修行をするか。テネットさんや、闘技場みたいなのはあるのか?」
テネット「闘技場、ですか・・・。」

    闘技場と言う単語に、表情を曇らせる彼女。詳しい様相を伺うと、闘技場は王都の方に存在
   しているとの事だ。しかし、貴族専門の剣闘士が蔓延っているようで、冒険者や一般人には
   敷居が高いとの事である。

    トランプゲームは一般大衆に向けられた娯楽だが、それ以上のものとなると事情が異なると
   言う。特権階級的な扱いとなり、一般人には手が届かない領域に至るようだ。

    今も地球でも、同じ様な概念が存在している。それを踏まえれば、どの世界に至ろうが全く
   変わらないとしか言い様がない。

ミスターT「はぁ・・・貴族のボンボン共が・・・。」
ウェイス「ハハッ、ミスターもそう言ってくれるのか。」

    ボソッとボヤいた言葉に、一際嬉しそうにするウェイス。初対面時にも、彼は王国に関して
   良い印象を持っていなかった。むしろ真逆の属性たる、帝国の方に良い印象を持っている。

    これに関してだが、ここにいる全員が同じ見解だそうだ。それだけ、現在の王国の運営の
   様相には、ホトホト呆れ返っているようである。

サイジア「逆に、その王国内で孤軍奮闘する貴族がいるそうですよ。」
ウェイス「ああ、一代限りの男爵家か。」
ミスターT「ふむ・・・。」

    貴族に良い印象を持たない一同だが、一代限りの男爵家の話題になると表情が一変した。
   一代限りとなると、その家柄は継承させる事ができないらしい。

    俺には、貴族絡みウンタラは全く分からない。確実に分かるのは、その男爵家が他の貴族の
   中で孤軍奮闘していると言う事実だろう。ティルネアが挙げる、手を差し伸べる存在に該当
   するかも知れない。

ミスターT「次のターゲットは、その面々だな。」
トーラ「私の時と同じ様な感じですね。」
リドネイ「お節介焼きと世話焼きの極みですよ。」
ミスターT「ふん、言ってろ。」

    2人のボヤきに舌打ちをする。彼女達との出逢いの経緯は、正に俺のお節介焼きと世話焼き
   によるものだ。創生者ティルネアより与った使命はあるものの、結果的には俺が関わったの
   だからな。

    それに、その瞬間の助けを求める声は、確かに存在していた。ならば、俺の手が届く範囲内
   であれば、徹底的に手を差し伸べるべきである。それこそが遂行者たる役目であり、警護者
   としての生き様だ。

    ともあれ、次の目標は決まった。そこに向けて、下準備を開始する事にしよう。



    翌日。昇格試験で得られた報酬を元に、武器防具などの見直しを行う事にした。試験自体の
   報酬はウェイス達が該当するが、俺達は追加報酬という形で頂けている。金貨1000枚、
   白銀貨1枚である。この報酬に関しては、俺達全員に頂ける事になった。

    ただ、俺の場合は既に武器防具は地球仕込みの逸品で間に合っている。道具類の購入に必要
   な資金以外は必要ない。そこで、残りの資金を全てリドネイとトーラに渡す事にした。彼女達
   は拒否気味だが、今後を考えれば必要な投資だ。受け取って貰う方がいい。

    先にも挙げたが、そもそも2人の武器は相当な費用が掛かるだろう。特にリドネイの獲物が
   顕著である。日本刀に近い獲物を見つけ出すのがその理由だ。仮にあったとしても、購入する
   事ができるかどうかもある。

    なかったとした場合の問題は、異世界ベイヌディートの技術力を以て、日本刀の模造が可能
   かどうかとなる。可能な限りの技術力を用いて、それに近いものをオーダーメイドで製造して
   貰うしかない。

    今のリドネイの戦闘スタイルが、日本刀の二刀流に近くなっているので、ここは無理をして
   でも入手した方が良いだろう。最悪は、俺が持つ2本の日本刀を使って貰うしかない。

    トーラの場合は、既存品でも問題はないだろう。重量級の獲物であれば、何でも扱えると
   言っている。ただ、できれば逸品を入手できれば幸いだ。


武器屋店主「うーむ・・・これと同じ武器、か・・・。」

    武器屋へと訪れ、手持ちの2つの日本刀を店主に見せる。鞘から刀身を抜き、その様相を
   マジマジと見入っていた。異世界の獲物たる日本刀に、興味津々ではある。だが、そこに込め
   られている技術力には参っているようだ。

    日本の刀鍛冶は結構な日数を掛けなければ、それなりの業物を作る事はできない。これが
   異世界での鍛冶職人となると、はたして模造ができるかどうかとなってくる。

武器屋店主「・・・この素材は、未知の金属なのか?」
ミスターT「一応、そうなるかも知れない。」
武器屋店主「そうなのか・・・。」

    峰の部分を軽く叩きつつ、2つの日本刀の様子を見ている。地球仕様の金属となると、普通
   の鋼鉄となるだろう。しかし、異世界仕様で強化されているとなれば、白銀か黒銀に近い金属
   相当だと思われる。

    と言うか、地球の獲物群は鋼鉄が主流という形になる。一部には、チタンやタングステン
   などの特殊鉱物を使用している。それでも、生産コストを踏まえると割に合わない。

    ただし、身内が製造した携帯兵装は、鋼鉄を極限にまで効率化させた手法を用いている。
   携帯方天戟や携帯十字戟がそれで、格納兵装なのに通常兵装に近い耐久度を叩き出していた。
   見事な業物としか言い様がない。

    ここに、異世界仕様となる魔法能力が加算されるのだ、化け物的な業物になるのも肯ける。
   白銀や黒銀など、全く話にならないレベルだと推測できた。

武器屋店主「・・・予算はどのぐらいまで出せる?」
ミスターT「2本で白銀貨1枚で頼む。」
武器屋店主「そ・・そうか・・・。」

    予算に対して尋ねられたので、その金額を挙げてみた。すると、こちらの言葉に顔を引き
   つらせている。むしろ、瞳の輝きが変わりだしていた。店主の言動からして、模造は不可能
   ではないと思われる。

    だが、その後も日本刀をジッと見入り続ける。それだけ、模造が厳しいという事になるの
   かも知れない。日本の刀鍛冶の技術力の高さを、思い知らされている感じだ。

    中半5へと続く。

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