アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝9
〜覆面の苦労人〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝9 〜覆面の苦労人〜
    〜第1部・第05話 修行と武具作成7〜
    武器防具の選定が終わり、冒険者ギルドへと戻る。雑務に明け暮れるテネットに申し出て、
   訓練場を借りる事にした。テスト試合と言う名の修行である。今回は、実戦さながらの流れを
   取る事にした。

    更に今回は、リドネイ以外にトーラや4人もいる。集団戦闘を踏まえた修行を行う必要が
   ある。先日のパワーベアー達との戦いを考えれば、やっておいて損はない。

    負傷をした場合は、俺の回復魔法で治療が可能だ。危険でない限りの、本気で戦っても良い
   流れとしたい。ただし、攻撃魔法は非常に危険なため、今回は使用しないで行う事にした。

    冒険者稼業では、相手が魔物だけとは限らない。タブーとされるが、冒険者同士での対決も
   十分有り得る。先日の愚物冒険者共の事例がそれだ。

    それに、今後もし戦争の類が起きた場合、こういった修行は必ず役に立ってくる。更には、
   そこには武器以外にも魔法も投じられる。今回の試合は、まだまだヌルい部類に入るしな。

    警護者の生き様でも、同じ様な心構えで行動をしている。特に紛争以上、戦争に近い抗争に
   なるなら、事前に修行をしておいた方が断然良い。


テネット「あの〜・・・私も参戦しても、よろしいでしょうか?」

    その言葉に、一同して呆気に取られた。どうやら、先の昇格試験の様相を伺ってか、彼女の
   冒険者魂に火が着いたようなのだ。その目を見れば、彼女が本気である事を痛感させられる。

ミスターT「ふむ・・・戦闘スタイルは?」
テネット「軽業師的な感じです。」

    そう言いつつ、腰に装備されたダガーを見せてきた。受付嬢には似付かわない、非常に大型
   のダガーだ。それが2本あり、鞘に収められ、ベルトで括り付けられている。

    と言うか、再度俺達の元に訪れた時、彼女の衣服は冒険者風の出で立ちだった。本気モード
   であると物語っている。それに、雰囲気からして相当な手練れだと直感ができた。

ミスターT「了解した。今回は魔法以外の、普通の立ち回りの修行にする。」
ナディト「腕が鳴りますぜぃ!」

    テネット以外は、既に準備万端の状態だ。それと、今回はチーム分けでの対決とした。

    俺はリドネイ・トーラ・テネットと組み、相手はウェイス・サイジア・ナディト・エルフィ
   の4人となる。チームという形なら、ウェイス達の方が断然有利だろう。

    こちらはチームを組んで日が浅く、特にテネットとの共闘に関しては初対面同士となる。
   連携を重視するのなら、非常に不利だと言えるだろう。ブランクがあるとは言うが、それでも
   彼女の基本戦闘力は相当なものだと思われる。

    何はともあれ、今は論より証拠だ。実際に挑んでみて、この目で確認してみるしかない。
   実践ほど有効なものはないのだから。


    そんな中、俺達のテスト試合を聞きつけたのか、ギルドに屯している冒険者達が駆け付けて
   来ている。どうやら、引退者のテネットが冒険者に復帰したと勘違いしたようである。だが、
   当の本人は気にしていない様子だ。

    まあ、彼女自身もまだまだ若い。自身の夢を掴む行動をしても良いだろう。こればかりは、
   異世界の俺には何とも言えない。

    ただ1つだけ言えるのは、周りを不幸にはさせないという事だけだ。ここは今後も貫いて
   いく決意である。



    訓練場で対峙する俺達。その周りは、観戦する冒険者達が見守っている。今回は武器のみの
   応戦式にしているため、被害が拡大する事はないだろう。これに魔法を加えた場合は、悪化
   する恐れがあるのでお勧めできない。

    双方とも、武器を構えつつ静止状態。先の昇格試験の様な、相手から猛攻を加えてくる形
   ではないため、出方を待つ後手側戦法を取らざろう得ない。それは、お互いに拮抗した戦闘力
   を持っている証拠でもある。

    先手を打ったのはテネットだった。両手に持つダガーを構え、相手へと突撃を開始。その
   彼女に追随するのはリドネイ。丁度彼女の真後ろに付く感じで突撃を始めた。

    その2人の時間差攻撃を迎え撃つは、新装備のウェイスとサイジアだ。白銀の大盾を構え、
   テネットとリドネイの猛攻を受け止めようと動き出す。そこに、何とトーラが突撃を開始する
   ではないか。特大剣の二刀流による自重の増加を物ともしない、非常に軽快した動きだ。

    しかも彼女、特大剣を外面向きに構えている。胸を曝け出すかの様な姿は、非常に隙を生む
   体勢だ。だが、その死角をテネットとリドネイが隠しているため、若干隙が相殺されている。


    こちらの4人のうち、3人が突撃を開始した現状。相手側も反撃を開始しだす。ナディトと
   エルフィが俺に向けて動き出してきた。この場合は、突撃した女性陣をウェイスとサイジアに
   任せ、俺にターゲットを切り替えたようである。

    俺へと突撃する2人に、俺はあえて白銀の大盾から手を離す。2人の特性からして、防御に
   回るのは不利である。そこで、腰と背中の格納兵装を展開する事にした。右手に携帯方天戟、
   左手に携帯十字戟を構える。

    ナディトはこちらから正面向かって右側から、エルフィは左側から攻撃を繰り出してきた。
   ナディトの獲物は巨大な槍で、エルフィの獲物は長剣の二刀流。前者は携帯方天戟で、後者は
   携帯十字戟で受け止める方が無難だろう。

    2人の猛攻を2つの携帯兵装で防いでいく。自慢ではないが、俺は対多段戦闘に関しては、
   それなりに定評がある。頭を上手く使うのは苦手だが、こうした複数の相手からの攻撃に対処
   するのは朝飯前だ。

    逆に、ナディトとエルフィや、身内の面々の様な対人戦は非常に苦手だ。特に攻めに入って
   いる人物ほど、戦い難いものはない。俺はとにかく、後手側戦法を取るスタイルなので、攻め
   入るのは非常にやり難い。

    ただし、指令されれば、どんな長時間であろうが“時間稼ぎ”を行う事はできる。


    俺がナディトとエルフィの猛攻を引き付けている間、ウェイスとサイジアは攻め手を欠く
   状態に陥っていた。彼らの合間を見ての反撃は、全てトーラの特大剣で打ち落とされていた。
   そこに、テネットとリドネイの猛攻が突き刺さる。

    2人の猛攻を白銀の大盾で防いでいくが、反撃をする事ができていない。そこにトーラの
   特大剣二刀流による、死角からの一撃だ。俺よりも体躯が良いウェイスとサイジアは、特大剣
   ではあっても回避が非常に困難である。

    そう、テネットとリドネイが盾の効果を殺ぎ落とし、そこにトーラが攻撃を仕掛けたのだ。
   この流れに気付いた時には既に遅く、特大剣二刀流が2人に襲い掛かった。手持ちの武器で
   防ごうとするが、その武器ごと吹き飛ばされてしまう。

    特大剣の質量は、大鎚に匹敵する。その重量武器を防いだだけでも凄いのだが、流石の2人
   も押されてしまう。そして、トドメと言わんばかりの一撃を放つテネットとリドネイ。同時に
   ウェイスとサイジアの喉元に獲物を突き付けた。

    裁定に関しては、自己申告的な感じになる。現状を踏まえれば、ウェイスとサイジアの敗北
   は確定したも当然だろう。それに、2人の方も現状を素直に受け入れ、降参の合図をした。

    それを窺い、次なる目標へと突撃を開始する3人である。

    後半2へと続く。

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