アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝9
〜覆面の苦労人〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝9 〜覆面の苦労人〜
    〜第1部・第06話 聖獣と神獣と魔獣と7〜
テネット「・・・ティルネア様?」

    そんな俺達の会話を伺い、呆然としているテネット。リドネイとナーシャなら、当たり前と
   なる対話に呆然としていた。しまった、と思っても時既に遅し状態である。

    ただし、別段隠し事をする訳ではない。問題があるとすれば、精神体のティルネアをどの様
   に表現するか、であろうか・・・。

    すると、驚愕する出来事が起きた。俺の身体から湧き出たティルネアが、何と精神体を実像
   とさせたのだ。見える者にしか見えない彼女の存在が、まるで肉体を得たかの様な姿で顕現
   されている。

テネット「え・・・まさか・・・。」
ティルネア「初めまして、テネット様。ティルネアと申します。」

    顕現されたティルネアを見つめ、絶句しているテネット。傍らのリドネイとナーシャも、
   絶句までとはいかないが驚愕していた。と言うか、ティルネアの姿を知っている事に驚くしか
   ない。

    この点に関しては、直ぐにリドネイにより補足があった。異世界ベイヌディートでの創生者
   たるティルネアの姿は、方々で目撃されていると言う。彼女の方も、別段隠し立てする事では
   ないらしく、必要に応じて顕現化しているようだ。

    それに、テネットの絶句した姿を見れば、彼女も創生者ティルネアの姿を知っていたのだと
   分かる。伊達に冒険者ギルドの、副ギルドマスターを担っているだけはある。


    テネットが顕現したティルネアと打ち解けるのには、殆ど時間は掛からなかった。過去に
   俺達が、誰かしらと会話をしている雰囲気だったのを察知していたからだとの事だ。

    確かに、俺が物思いに耽っている時は、ティルネアと対話をしている事が多い。念話での
   会話になるので、物思いに耽る姿に見えるのだろうな。

    ちなみに、念話の概念は魔力を用いた手法でも実現できるらしい。ティルネアのは魔力を
   用いるのではなく、生命力に直接語り掛けるものとの事だ。これは彼女に直接伺って分かった
   事である。

    また、魔力の念話は、反魔法効果により打ち消されてしまう。対して、生命力の念話は、
   実質的に阻止する事は不可能らしい。それに、生命力の念話を打ち消す場合は、対話をする
   人物の生命力を切るしかない。つまり、殺害などである。

    生命力の念話はティルネア仕込みだが、ここは魔力の念話も学ぶべきだろう。後で彼女達に
   レクチャーして頂きたい所である。


    しかしまあ、地球では考えられないコミュニケーションツールである。向こうでは通信機構
   により、相手や指令部などと対話をしていた。それが、魔法念話や生命力念話は、通信機構を
   用いなくても対話が可能である。

    顕著なのが、リアルタイムで相手に伝わる事である。地球の通信機構は、どんなに高性能で
   あっても、若干のタイムラグが発生してしまう。ところが、魔法念話と生命力念話は、その
   タイムラグが一切発生しない。

    どんなに距離が離れていようが、必ず相手に通じる。これ程の優れた通信機構が他にある
   だろうか。本当に逸脱した様相である。



テネット「はぁ・・・。」

    探索は続く。パワーベアー達と交戦した場所から、更に森の奥へと踏み入れる。そんな中、
   テネットが深い溜め息を付いている。その彼女の傍らには、顕現化されたティルネアがいる。
   しかも彼女、浮遊した状態だ。

    幾ら顕現化ができても、実体がないため物理的な接点を持つ事ができない。つまり、彼女は
   物を掴む事ができない。それに、重力という概念がないため、こうして浮遊する事ができる。
   更には、風が吹いても飛ばされる事もない。見事なものである。

ミスターT「溜め息ばっかりだな・・・。」
テネット「何故そうして平然としているのやら・・・。」

    テネットの姿を見かねて茶化しを入れてみるが、逆に反論されてしまった。呆れ顔なのが
   何とも言えない。それだけ、現状の様相が信じられないようである。

    まあ、それでも冒険者に返り咲いた彼女としては、これらは許容範囲内だと思われる。世上
   で巻き起こる不可思議な出来事は、どれも新鮮で面白みに溢れているのだから。

    今も冒険者になろうとする人物が非常に多い。それは、テネットの様な探究心に溢れる人物
   がいるからだろうな。地球でも同じ様な感じの冒険者がいるのだから。

ナーシャ「うーむ・・・気配は感じるのですが・・・。」
リドネイ「こちらを警戒して、距離を置いている感じでしょうか・・・。」

    そんなテネットを他所に、ナーシャとリドネイが魔獣を探索している。気配は察知している
   ようだが、今だに姿を現してはくれない。ナーシャがここまでの一念を抱いているなら、相手
   に伝わるとは思うのだが。

    まあ、こればかりはどうしようもない。虱潰しに探すのが無難だろう。それに、相手は獣
   であっても神的存在である。こちらを警戒されても仕方がない。


    しかし、こちらの考えを超越するのが、神的存在なのだろう。突如として、周辺の雰囲気が
   ざわめきだす。それを察知し、一応戦闘態勢に移行した。腰の携帯方天戟を展開し、周囲へと
   意識を向ける。

    他の3人も各獲物を鞘から抜き放ち、周辺を警戒していく。何時でも戦闘ができるように
   構えている。相手の出方次第では、瞬殺される恐れも十分有り得る。

    そんな俺達の前に、ゆっくりと現れる黒い影。そして、放たれるオーラに度肝を抜かれた。
   ブラックハウンドの比ではない。超絶的な力である。それに、その巨体はブラックハウンドを
   遥かに凌駕していた。

    ・・・が、今度は相手が怖じだしている。何事なのかと、その視線の先を見入る。そこには
   空中に浮く創生者ティルネアの姿があった。

    理論的に解釈すれば、聖獣・神獣・魔獣は神的存在でも、創生者には遠く及ばない。その
   創生者たるティルネアが、今正に目の前に顕現している現状。度肝を抜かれるのは言うまでも
   ない。

    後半4へと続く。

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