アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝9
〜覆面の苦労人〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝9 〜覆面の苦労人〜
    〜第1部・第07話 猫人族の三姉妹1〜
    エルフ族のナーシャと共に、3種の獣の神の探索を開始した俺達。道程は険しくなるかと
   思っていたが、非常に幸先が良いと言うべきか。直ぐに魔獣ミオルディアと会う事ができた。

    詳しい事を伺うと、彼女は遂行者として世上の探索を行っていたようである。これは、他の
   聖獣ティエメドラと神獣ヴィエライトも当てはまると言う。前者は王国に、後者は帝国に潜伏
   しているらしい。

    何か警護者染みた行動をしていると思ったが、これはこれで有りなのだろうな。これらを
   見越して、ティルネアは3人に指令を出したのだろうから。


    そもそも、ナーシャから聞かされるまで、まさか3種の獣の神の遂行者がいるとは思いも
   しなかったが・・・。ティルネアと初対面時に色々と伺ったが、この点の訊きそびれは盲点
   だったとしか言い様がない。

    他方面に遂行者を排出する事で、世上のパワーバランスを調停する。実に理に適った戦略
   だとは思う。だが、せめて早い段階で伝えて欲しかった気がするわ・・・。

    何はともあれ、こうして彼女達と出逢う事ができたのだ。幸運だと言うべきだわな。


    切っ掛けは些細な出来事であろうが、縁がある出逢いは本当に貴重であると言い切りたい。
   こうしたやり取りの積み重ねの先に、ティルネアが望むプラスの力が得られるのだから。

    これは何も、異世界だけの話ではない。地球での警護者としての活動も全く同じである。
   警護者の道に進んで、つくづく良かったと思いたい。



ミオルディア「お主・・・意固地になり過ぎてはおらぬか?」

    ミオルディアと出会って翌日。彼女を探していたナーシャだが、それ以上の使命的一念を
   察知した。そんな俺の一念を察して、ミオルディアの口から本人に伝えられた。

    図星を突かれてシドロモドロのナーシャ。ただ、その使命感は決して悪い事ではない。彼女
   のモチベーションの1つであると思える。だが、それで彼女の自由が潰されては可哀想だ。

ナーシャ「そ・・その・・・。」
ミオルディア「ふむ・・・我はお主にも自由で居て欲しいのだがの・・・。」
ミスターT「まあ何だ、ナーシャの決意は重々承知している。残りの2人を探して、再スタートと
      いこう。」

    ナーシャの何処までも使命感に順ずる姿勢。これは見習わなければならない。当初は魔獣
   ミオルディア達の探索のみだけだった。そこに追加として、遂行者の使命も加算されたのだ。

    遂行者の使命に関しては、俺やミオルディア達が適任だ。非常に烏滸がましいが、俺も絶大
   な戦闘力を与っている手前、遂行者の生き様が実行可能となる。ナーシャの場合は、そこまで
   の力は持っていない。

    ただ、先にも挙げた通り、その心構えは大いに見習うべきだ。下手な遂行者よりも遥かに
   逸材である。この場合は、長期的な目で見た場合の遂行者を担って貰うべきだろうな。


リドネイ「マスター、私も全てが終われば、ナーシャ様と共に遂行者として行動を開始します。」

    落ち込むナーシャの両肩に、ソッと両手を添えるリドネイ。彼女が挙げたのは、全ての行動
   が終わった後の事だ。彼女の言う通り、長寿命たる彼らが適任だろう。

    エルフ族やダークエルフ族は、長寿命で有名な種族。その長生き度は、最強の種族たる竜族
   に匹敵してくる。そんな彼らだからこそ、遂行者の役割を担い易いと言える。この場合は、
   調停者と裁定者であろうか。

    そう、地球での警護者の役割は、調停者と裁定者そのものだ。異世界ベイヌディートでの
   遂行者と何ら変わりない。故に、創生者ティルネアは俺を抜擢してくれたのだろうから。

ミスターT「お前がそう決意したのなら、俺は一切反論はせんよ。」
ティルネア「それこそ、ミオルディア様が仰った通り、リドネイ様の自由を奪う気がします。申し訳
      ない思いです。」
ミオルディア「フフッ、お主達は不器用そのものじゃな。」
ミスターT「ふん、言ってろ。」

    ミオルディアのボヤきに舌打ちして返す。完全に茶化しそのものだが、心から心配している
   一念も感じ取れた。彼女も長寿の種族故に、周りへの気配りは群を抜いている。

    本当に、彼女が言った通り、俺達は不器用な存在だわ。それでも、己が使命を全うすべく、
   今後も奮起していかねばならない。


    ともあれ、次の行動先は王国となる。既に人選は済ませており、後は移動するのみとなる。
   現地へは、俺とリドネイにナーシャ、そしてティルネアの4人で向かう事になった。

    ミオルディアは弟子のトーラと共に、ラフェイドの街を守って貰う事にした。ウェイス達も
   協力を惜しまないと申し出てくれている。他の冒険者達もしかり。

    これには、副ギルドマスターのテネットが絡んでおり、彼女の一声で数多くの冒険者達が
   加勢を申し出てくれている。彼女、今では本ギルドマスターそのものだと思うのだが・・・。
   まあ、彼女も冒険者に返り咲いたため、何れギルドマスターの役職から身を引くだろう。

    それでも、彼女を信頼する冒険者達は数多い。今後も“隠れ”ギルドマスター的な感じで
   活動していくと思われる。


    ちなみに、3種の獣の神となる3人だが、その戦闘力は超絶的である。単騎で国を簡単に
   滅ぼす事ができるほどらしい。それを踏まえれば、彼女達が世上から身を引いていた理由が
   痛感できる。

    そんな3人だからこそ、ティルネアは遂行者の役割を託したのだろうな。彼女達に内在する
   有り余る力、これを誤った方向に使わないために、だ。

    まあ、異世界最強の戦闘力を誇るのは、言うまでもなく創生者ティルネアだ。3人が下手な
   行動をしようが、瞬殺できるぐらいの実力を有しているのだ。博識たる3人が、馬鹿な真似を
   しないのは言うまでもない。

    その彼女から、直々に力を貸して欲しいと言われた俺は、正に変人としか言い様がない。
   それでも、彼女の代理人として動いていく次第である。


    全ての出発準備が整ったので、王国へと向かう事にした。ラフェイドの街からは、馬車で
   数日は掛かる距離である。徒歩なら1週間程度らしい。

    街の外は無法地帯と化している現状、途中で盗賊などの襲撃も十分有り得る。まあその場合
   だが、問答無用で叩き潰すに限る。それに相手が罪人の盗賊なら、野放しにする方が罪だ。

    愚物には容赦なく“引き金を引く”、これでいい。

    中半へと続く。

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