アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝 〜覆面の風来坊〜 〜第3部・第4話 不意の逆襲2〜 アマギH(兄貴、マズい展開になりましたよ。昨日孤児院の方に特殊警察と名乗る人物達が現れ、 シェヴ姉を逮捕し連行したとの事です。先刻の情報は事実でした。) ミスターT「そうか・・・。」 今は陰で動いているアマギH達から携帯で連絡を受けている。ポーカーフェイスが大いに 役立つヴェアデュラの行動があってこそだと言っていた。流石としか言いようがない。 アマギH(卑怯すぎますよ。今更5年前の事変を掘り起こし、陣頭指揮を取っていたシェヴ姉を不当 に逮捕に踏み切った。絶対馬鹿げてます・・・。) ミスターT「今はまだ怒るな、その時じゃない。とりあえずシェヴが拘留された場所の特定と、内部 からの支援を頼む。いくら身体が若々しくても、今年96になる彼女だ。過酷な環境下 では大変な事になりかねない。」 アマギH(了解。いざとなったら俺達が命を張って恩師を救い出しますよ。) ミスターT「ありがとう。でも無理無茶するなよ。」 アマギHとの通話を終える。俺は話題が話題なだけに、本店レミセンの2階に待機している。 店舗は他のレディ・マスターに任せ、俺達家族はそれぞれ独自に動いていた。 ミスターT「なあメルデュラ・・・。」 メルデュラ「何ですか?」 今もネットワークによる情報収集などに明け暮れるメルデュラ。その彼女の傍らで未着火の タバコを銜えながら、呆然と天井を見つめている俺。目の前が真っ白と同時に、何時爆発を 起こしてもおかしくない状態だった。 ミスターT「もし・・・こちらにまで被害が及んだ場合、俺とは関係が一切ないと言い切れよ。この 関係も俺からの一方的な押し付けだと語ってくれ。」 メルデュラ「ですが・・・。」 ミスターT「最悪、命懸けでシェヴを助ける事になるかも知れない。その時お前達を犯罪者の妻達 とは言わせたくないから。」 アマギHが語っていた、命を張って助けるという言葉に同調した。ヴァルシェヴラームの命に 危険が迫っているとあれば、例え彼女の弟子達である警察機構全体を敵に回してでも助ける 覚悟だ。 メルデュラ「大丈夫だとは思いますが・・・。それに逮捕に踏み切るなら、一番厄介物の存在だった 三島ジェネカンや躯屡聖堕チームに矛先を向ける筈です。その方が抗争相手の弱体化が 図れて、結果的に2社の優勢が確定的になりますから。」 ミスターT「確かにそうだな・・・。」 メルデュラ「言わばシェヴ様の不当な逮捕は、間違いなくこちらへの揺さ振りです。目の前が見え なくなった相手を潰す事など容易いもの。私達の出方を見ているのですよ。」 俺を安心させると同時に、今現在の状況分析と手っ取り早い手段を述べだすメルデュラ。 よくよく考えればヴァルシェヴラーム本人を逮捕する意味はない。あるとすれば俺達への揺さ 振りと捉えた方が正しいだろう。 メルデュラ「それにシェヴ様は絶対屈しませんよ。私達の厳しくも心優しい偉大な母なのですから。 獅子は静かに牙や爪を研ぎ澄ませて待つ、私はそう確信してますので。」 ミスターT「ありがとな・・・。」 本職とも言えるコンピューター関連に目覚めたメルデュラは、凄まじいほどの直感と洞察力を 身に着けていた。シュームに匹敵する見定めた千里眼は、確実に物事を捉えているだろう。 彼女の現実面の理論的解釈と労いにより、心が少し楽になっていった。 ウインド「マスター、大丈夫ですか?」 それでも呆然とし続けるのは言うまでもない。メルデュラの情報提供に耳を傾けつつも、 自分を抑えるのに必死であった。そこに警察機構トップのウインドとダークH、そして参謀の リュリアが訪れてきた。彼女達を見つめると、自分の中で抑えていたものが一気に爆発する。 突発的だった。身体が無意識に動いていた。彼女達に一気に詰め寄り、ウインドとダークH の喉元を左右の手で掴み締め上げる。それに驚愕するメルデュラとリュリア。 ミスターT「どの面下げて現れたんだ・・・。お前達はシェヴを恩師と称える弟子だろうに・・・。 それが何だこの一件は・・・、事前に流れは感じていたんじゃないのか・・・。」 自分でも信じられないぐらいの強い殺気と闘気を放出し、ウインドとダークHを凝視する。 それに一瞬にして青褪めて恐怖に慄く2人。傍らにいるリュリアが静止しようとしても、俺の 殺気と闘気が極限に近いため手出しができない。 ミスターT「所詮は官僚主義か・・・。テメェらだけ無事なら周りはどうでもいい・・・。それが 数え切れない師恩を与えてくれたシェヴでさえ裏切るのだからな・・・。返答次第では 命がないと思え・・・。」 俺の強烈極まりないドギツイ殺気と闘気に、涙を流しながら震え上がるウインドとダークH。 あまりにもの恐怖に2人とも失禁してしまい、身体をガクガク震え上がらせていた。それでも 俺の怒りは収まりそうにない・・・。 シューム「馬鹿な事は止めなさいっ!!!」 突然拳が俺の頬を直撃する。その勢いで吹き飛ばされ、一緒にウインドとダークHも飛ば された。床に倒れ込む俺に覆い被さるかのように倒れる2人。その2人を自然的に抱き締め 受け止める動作をしている自分がいた。身体の方は普段の俺であり、心だけが暗黒面に陥って いる状態と言える。 シューム「何を考えているのよ、2人がそんな事する訳ないじゃない。リュリアから聞いているわ、 無力さを噛み締めて我慢し続けていたと。そんな2人を貴方は責めるの?!」 身体は胸の中でただ恐怖で泣き続けるウインドとダークHを抱き締めつつ、心の方は呆然と シュームの言葉を聞き入っていた。ラフィナの時のように、目の前に火花が飛び散っている。 シューム「シェヴ様の不当な逮捕は私達を揺さ振らせようとするもの。その下らない一件で貴方が 原点を見失ったら、私達はどうするのよ・・・。それこそシェヴ様に誓った約束を破る 事になるのよ・・・。」 泣きながらその場に座り、俺の頭を優しく膝に乗せるシューム。今さっき殴り付けた頬を痛々 しそうに撫でてくる。しかし俺の頭は呆然としており、ただ話を聞き入るしかなかった。 シューム「心こそ大切なれ。そして誰彼がどうこうではなく、テメェ自身がどうあるべきか。貴方は 何度も口癖のように言っていた・・・。それを崩そうとするのが奴等なのよ。奴等の策略 に振り回されちゃダメ・・・、自分自身の誓願に耳を傾けて・・・。」 シュームの渾身の説得に、ようやく目が覚めだす。それを窺った彼女が、優しく頭を撫でて くれていた。 間隔空けずにシュームの手を優しく払い、俺は渾身の一撃を自分に放つ。右手握り拳を自分 の顔面に思いっ切り叩き付けた。それにシュームは元より、胸にいるウインドとダークHが 一番驚いている。 ミスターT「・・・ごめんな、ウインド・ダークH。お前達を見た瞬間、目の前が真っ白になった。 気付いたら首を締め上げてもいた。それに怒りに身を任せ続け、思いたくもなかった 事を口にした・・・。この顔面への一撃を以て、詫びに代えさせてくれ・・・。」 相当強い一撃だったのか、鼻がムズムズしだした。右手を遣ると鼻から血が垂れていた。 しかも両鼻からである。それだけ今のは強烈な一撃だったようだ。その在り得ない現状に、 ウインドとダークHは再び怯えだしている。 ミスターT「この傷は気にするな。怒りに身を任せ、無関係だったウインドとダークHを心から怖が らせ悲しませたのだから。このぐらいの傷では代えにも至らないと思う・・・。」 シューム「馬鹿ね、全て知っているわよ。シェヴ様が心から愛して育てた愛娘達なのよ。それこそ 忘恩と言えるわ。2人は身を呈して貴方の怒りを静めたのよ。感謝しなさいね。」 シュームの言葉にウインドとダークHが大泣きしだした。その厳しくも労いがある言葉は、 紛れもないヴァルシェヴラームの言葉そのものだ。今となっては第2の偉大なる母となった 彼女の言葉は、愛弟子達には痛烈に響くのだろうな・・・。 今も泣き続けるウインドとダークHを優しく抱き締め、頭を撫で続けてあげた。無関係の 2人を悲しませてしまったのは、俺の紛れもない罪なのだから・・・。 修羅場と化したコンピュータールームだが、シュームの登場で落ち着きを取り戻した。俺の 暗黒面を改めて窺った周りは、こちらの何げない行動でビクッと震えてしまっている。その 彼女達に精一杯の笑顔で応えると、自然と落ち着きを取り戻していった。 しかし俺の顔を見るや否や、笑い出してしまう彼女達。覆面をした人物が両鼻に塵紙を詰め 止血しているのだ。笑い出してしまうのは言うまでもない。 その後、ウインドとダークHを労う。俺の言動で失禁までしてしまったのだから、衣服の 洗濯をして入浴で身体を流して貰った。付き添いでシュームも入浴してサポートして貰って いる。 あの浴槽に3人入るのは厳しいが、意外と広いので何とかなるだろう。それに非は俺の方に あるのだからな・・・。 ちなみに俺も衣服を着替えた。2人が失禁で汚れた衣服で俺に抱きついていたため、就寝用 のパジャマを纏っている。また今いるのは2階ではなく3階だ。 ダークH「上がりました。」 ウインド「サッパリしました。」 3階の浴室で入浴を終えた3人が出てくる。衣服がまだ乾かないウインドとダークHは、 シュームの下着と衣服を身に纏っている。シューム本人は自前を着用だ。そしてリュリアと シュームは2階へと引き上げていく。おそらく2人に気を利かせたのだろう。 俺はというとソファーに寝っころがり、今も鼻に詰め物をして仰向けで休んでいた。先程の 一撃はかなり強烈だったようである。 ミスターT「大丈夫か?」 ウインド「お陰様で。」 ダークH「色々とご心配をお掛けしました。」 深々と頭を下げだしたウインドとダークHを見て、慌てて起き上がろうとする。しかし朦朧 としていた頭は直ぐには回復せず、そのまま床に落ちてしまった。これには頭を下げていた 2人が一番驚き、咄嗟に俺の身体を支えだしている。 ミスターT「悪いな・・・まだ頭の方は完全じゃないみたいだ・・・。」 ダークH「もう・・・これ以上心配を掛けさせないで下さい・・・。」 ウインド「マスターにご迷惑をお掛けしたのは事実なのですから・・・。」 俺の上半身をウインドが、下半身をダークHが抱きかかえる。そのままソファーに戻そうと したが、何かを思ったのかそのまま寝室の方に運んでいく。これには驚いた・・・。 俺をソファーではなくベッドにしっかりと寝かし付けるウインドとダークH。すると右隣に ウインドが、左隣にダークHが抱き付いて来る。これには更に焦るが、その経緯は何となく 読めてきた。 ミスターT「明日出勤だろうに・・・、こんな所で油売ってどうするんだよ・・・。」 ウインド「本庁の方はリュリアさんとディルヴェズLKさんが引き受けてくれるそうです。」 ダークH「先程の入浴時にシュームさんから貴方と一緒に寝なさいと言われまして・・・。」 予感は的中した。入浴時にシュームから催促を受けたのだと。そうでなければ奥手の2人が 大胆な行動に出る筈がない。彼女に背中を押して貰ったため、この行動に出たのだろうから。 ダークH「恐れ多かったのですが、今回の一件の是非は貴方にあると仰られまして・・・。」 ウインド「今夜は貴方に甘えなさいと・・・。」 シューム「ハハッ、シュームなら言いそうだわ・・・。」 シュームなりの癒しの労いなのだろう。あれだけの恐怖を与えてしまったのだ、俺にも2人を 癒す責任はある。それにウインドとダークHも俺に好意を抱いてくれている。これが最大限の 労いとも言えるだろう。 左右にいる2人を両手で優しく抱き寄せ、静かに胸に頭を乗せた。すると抱き枕に抱きつく かのように、身体を絡ませてくる。 ウインド「何だか・・・皆さんに悪いですよね・・・。」 ミスターT「もう言われ慣れたよ。」 ダークH「でも・・・本当に落ち着きます・・・。」 俺を師匠と言い切る2人故に、このように近くで寄り添う事は考えもしなかっただろう。 それだけに心の内の想いは凄まじいほどに高まっている筈だ。 ダークH「でも・・・改めてマスターのお力を思い知りました。特にそれが怒りに身を任せた状態で あれば、あの格闘術大会以上の殺気と闘気が出ていましたから。」 ウインド「それに何だか心の迷いすらも吹き飛ばして頂いた気がします。」 ミスターT「ああ、それはシュームやリュリアがよく言ってる。その後は例外なく凄まじく据わった 心が手に入るとも言っていたわ。」 俺の言葉にウインドとダークHはウンウン頷いている。今はまだ恐怖の部分が残っていると 思うが、それが収まれば2人にも凄まじい据わった心が目覚めるはずである。 それから俺達は沈黙する。既に時刻は午後10時を回っており、先程の一件で数時間経過 していた。2人を気遣ってくれてか、他の女性陣は一切寝室に入ってこない。 今夜はウインドとダークHと一緒に寝る事になるか。それが俺のせめてもの詫びであろう。 ミスターT「本当にごめんな・・・。」 どれだけ経っただろうか。胸の中で余韻に浸る2人を見て、自然と詫びだした。時が経てば 経つほど罪悪感が大きく募ってくる。 ウインド「何を仰いますか。先程マスターが仰った通り、この一件は薄々は起きるだろうと把握して いました。惰性に流されていたのは私達の方です。」 ダークH「ここにはマスターに謝罪しに来たのです。直後にお叱りを受けたのには驚きましたが、 貴方がお怒りになられるのは十分理解できますから。」 2人同時に俺を見つめて、それぞれ詫びだした。先程の一件は俺の方に非があるというのに。 それでも2人の方はまるで自分が悪いように語り続けた。 ダークH「それに・・・感謝しています。あの激昂は私達への激励とも取れます。そしてシェヴ先輩 を心から慕っていらっしゃる事が痛感できました。」 ウインド「流石先輩の息子さんです。そして永遠の師弟です。師匠のために弟子が奮起する、これが どれだけ素晴らしい事か。」 俺は無意識に2人を強く抱き締める。先程シュームが語っていた、ウインドとダークHは 全て分かっていると。それが今語った事に繋がる。 ヴァルシェヴラームの直系の弟子である2人、理をしっかりと受け継いでいるのだから。 ウインド「とりあえず表の方はお任せを。私達にできる事は何でもする覚悟ですので。」 ダークH「心中の怒りは貴方と同じです。必ずシェヴ先輩を助けましょう。」 ミスターT「ああ、分かった。よろしく頼むよ。」 ゆっくりと起き上がると、俺を支えようとするウインドとダークH。その彼女達に口づけを それぞれにしてあげた。今回の一件の詫びも踏まえ、濃厚な長い口づけをする。 ミスターT「俺にできる詫びはこのぐらいだ、勘弁してくれ。」 濃厚な口づけにより放心状態の2人。そんな2人を再び抱きかかえ、ゆっくりと横になる。 放心状態でも俺に抱き付く所はしっかりしているわ・・・。 ミスターT「これからが勝負だよな・・・。」 色々な意味を込めて語ると、静かに頷くウインドとダークH。その2人の頭を優しく撫でて、 ゆっくり瞳を閉じる。2人の温もりに急激に眠気が襲いだし、そのまま夢の中に吸い込まれて いった。 翌日起床するとウインドとダークHの姿はなかった。シュームの話によると、エラい据わり を見せだしたという。あの激昂も結果的には不安定だった2人を不動のものにしたと言えるの だろうな。そう考えると昨日の一件は間違いではなかったという事になるかな。 しかし2人の部外者たる美女と一夜を共にしたためか、周りの妻達からは殺気に満ちた瞳で 睨まれ続けている。嫉妬感を抱いてくれるのは嬉しいが、こちらの身にもなって欲しいもの だわ・・・。 ともあれ、俺も原点回帰はできた。後は彼女達と共に不当に逮捕されたヴァルシェヴラーム を助ける事が最優先である。そして2社に対して反転攻勢をする時も今だろう。 アマギH「今日、東京拘置所に移送されるそうです。」 ミスターT「小菅のか・・・。」 それから数日後、不当な取り調べを受けていたヴァルシェヴラームが移送されるとの情報を アマギHから聞かされた。以前彼女と一緒に小菅下水処理上の公園で遊んだ憶えがあるが、 まさかその近くに移送されるとは・・・。 ちなみにアマギHとユリコYの2人は本店レミセンに来ており、ここで昼食を取っている。 ユリコY「馬鹿げてますよ。何の罪もないのに逮捕とは・・・。」 ミスターT「シュームも言っていたが、俺達への揺さ振りだ。そこまで相手は心理戦を掛けてきて いると言っていい。」 アマギH「直接対決なら受けて立つんだけどなぁ・・・。」 ミスターT「フフッ、そこは俺も同じよ。」 心理戦などの頭脳を使った戦いが苦手のアマギH。相手とはサシで勝負するのが彼の性格に 合っているだろう。かく言う俺の方も直接対決の方が性分に合うわ。 ミスターT「ところで、式は挙げるのか?」 ユリコY「あ、はい。アマギHとは前々から話し合っていましたので。今回の一件が終わったら、 式を挙げようと思います。」 ミスターT「俺らも心から祝福するよ。青春時代からずっと共に戦ってきた間柄だからな。今度こそ 本当のパートナーとして過ごしていくといい。」 この数十年は躯屡聖堕チームの事で走り回っていた2人。自分達の事より周りの事を最優先 に動いていた。今度はその2人が幸せになる番だ。俺達も心から祝福できる。 ミスターT「俺の方も式を挙げろと周りから強く言われているが、それこそ大変な事になるからな。 そこは妻達も理解してくれているし、今のままでも十分幸せだからね。」 アマギH「兄貴達は夫婦の鑑ですよ。」 ユリコY「私達も先輩のような夫婦になりたいです。」 ミスターT「大丈夫さ、お前達なら周りも羨む程の夫婦になれる。」 今年40代半ばに差し掛かるアマギHとユリコY。10代から付き合いだして今に至るのだ。 そろそろ身を固めてもいいだろう。 俺の方はなぁ・・・12人の・・・いや、13人の妻達がいるからなぁ・・・。これは十分 大問題なんだが・・・。何とも・・・。 リヴュアスと結ばれた辺りから、屋上に建てた小屋で植物の育成をしだした。大工仕事にも 精通しているディルヴェズLKとトモミと一緒に始めたのか切っ掛けだ。いわゆる屋上ハウス とも言える。小屋のスペースも十分あり、ここで寝泊りする事も可能だろう。 完全に非番の今日はガーデニングに勤しむ。娘達もちょくちょく世話をしてくれており、 この屋上は小さな庭園のようだ。 アマギHとユリコYと会話をした後、俺は屋上へ行き植物達の世話に明け暮れる。最近は マンガ家の仕事はシンシア・シェラ・シェナの親子に任せ、俺はその場で苦戦している場所の 助け船として動く事が多い。 殆ど老後の行動に似ているが、ヴァルシェヴラームも同じような行動をしている。何だか 彼女に似てきだしているわ・・・。 シューム「ミスターT君いる?」 ミスターT「どしたん?」 植物達の世話をしているとシュームが訪れる。俺が彼女の方を見つめると、まるで草創期の 乙女のような表情で見つめていた。 ミスターT「何だよ、その乙女チックな表情は・・・。」 シューム「え・・あ・・・いや、貴方の顔が優しさに満ち溢れているから・・・。その・・・改めて 恋心を抱いちゃったと言うか何と言うか・・・。」 作業を中断して水場で手を洗いタオルで拭う。そして俺を見入っていたシュームを優しく抱き 締める。それに一段と赤面した表情で恥らいだした。 ミスターT「花々の世話も大切なものだよ。シェヴが孤児院の庭先を手入れしていたり、ナツミYU が学園の庭園を手入れしているようなものと同じ。その彼女達の生き様を少しでも同調 できればと思ってね。」 シューム「フフッ、貴方らしい・・・。」 胸の中で余韻に浸るシューム。彼女の頭を優しく撫でて、甘い一時を満喫させてあげた。 こういった言動が彼女達の全ての起爆剤となるのだから、俺の存在は大きなものとなっている だろうな。 ミスターT「それで、用事は何だい?」 シューム「あ、そうそう。メアディルちゃんね、この前の一夜で妊娠したそうよ。」 ミスターT「・・・13人目の妻か。それに・・・間違いなく双子の女の子が生まれると・・・。」 薄々は直感していた。シュームが語るには、メアディルが妊娠したとの事である。先々週の 一戦が切っ掛けと言えるだろう。それだけ彼女が俺との子供を熱望した証拠だろうな。 シューム「妊婦期間はここで休んで貰って。代わりに私が社長代行を担うから。」 ミスターT「大丈夫なのか?」 シューム「平気平気、エリムちゃんとエリアちゃんが一緒だもの。」 ミスターT「何ともまぁ・・・。若くとも素晴らしい人材になりつつあるわ。」 まだ成人を迎えていないエリムとエリアだが、その定まった視点は大人顔負けの凄まじさだ。 それにその据わりを見せ出したのは、何と13歳からなのだ。母親のエリシェがいかに優れた 人物であったかが窺える。 シューム「シュリムとシュリナ、それにラフィカちゃんとラフィヌちゃんも一緒にイギリスで介護士 と看護士の実践訓練をしてるし。これからが本当の勝負所よ。」 ミスターT「今後が楽しみだわ。」 色々な意味を込めて語ると、それを分かっていると言わんばかりに甘えてくる。シュームの 見定めた千里眼はヴァルシェヴラームやセルディムカルダートを遥かに超えていると言えた。 そして最近ではヴェアデュラやエリム・エリアが彼女と同じになりつつある。 シュームが願っていた大家族の真骨頂と言えるのだろう。彼女からすればこの上ない嬉しさで 満ち溢れている筈だ。 胸の中で甘えるシュームの顔を優しく持ち上げ、ソッと唇を重ね合わせた。それに同じく 優しくも強く応じてくる彼女。その場の雰囲気により、こちらが何をしたいかを直ぐさま察知 するのだから。 久し振りの濃厚な口づけに我を忘れて貪りだすシューム。まあその部分は何となく分かる。 遠いイギリスに愛娘のシュリムとシュリナが赴いてから半年近い。母親としては身が裂ける 思いの筈だ。その表れがこの口づけだろうから。 ミスターT「今はこれで勘弁してくれ。」 シューム「いえ・・・充分勇気を頂きましたよ・・・。」 本当に驚く限りである。これだけ濃厚で強い口づけをすれば、目の前のシュームと同じく 心ここに非ずという状態に陥るだろう。しかし自分の方は全く何ともないのだから。 やはり13人からの手解きを受け出してから、凄まじい免疫力が備わったと言えるだろうか。 シューム「この優しさを・・慈愛に満ちた敬いを・・・全ての人に向けて下さい。些細な激励でも その人にとっては一生を左右する大きな切っ掛けに至るかも知れません・・・。」 ミスターT「それが俺達の最後の使命だよな・・・。」 改めて自分達の原点を振り返る。先の数十年は妻達との原点を再確認した日々だった。しかし これからは周りの全ての人達との原点を再確認する時だ。胸の中で余韻に浸るシュームも、 俺の言葉に力強く頷いていた。 これからが本当の勝負だ。そして新たな第一歩を踏み出すため、目の前の壁を1つずつ攻略 していこう。 俺達なら不可能な事はない。タブーとされる一夫多妻を現実にしてしまっても、それに一切 流される事なく周りを気遣い続ける。恩師ヴァルシェヴラームが悲願、世界から孤児を無くす 事にも近づければ幸いである。 シュームと再度原点回帰をし、今後の決意を固め合った。 第3部・第5話へと続く。 |
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