アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝 〜覆面の風来坊〜
    〜第1部・第5話 花火大会1〜
    7月末。より一層暑さを増した。周りは夏真っ盛りで、薄着の人々が目立つ。やはり野郎の
   性から、女性の薄着には目を奪われるが。何とも・・・。


    早い夏休みに入ったエシェラ達高校陣。今年の暮は受験で来年は大学生だというのに、遊び
   まくっているのは参りもの。しかし陰では勉強をしているようだ。
   ナツミYUが語るには、彼女達の実力は学年トップクラスだという。実に怖ろしい・・・。

    ラフィナ達は学年が学年だけに勉強に勤しんでいる。まだ遊べる時期だというのに、それを
   返上してまで己のスキル向上を目指す。エシェラと同じく、彼女も学年でトップクラスの実力
   だという。この2人は陰の功労者とも言うべきか、いや・・・素直に努力家で済ませよう。



ミスターT「・・・見事な穴だな。」
    4月下旬に起きた躯屡聖堕事変。その最中にゼラエルの射撃によって肩に矢が放たれた。
   身体の方は大丈夫だが、一張羅のコートに穴が空いている。貫通していたため、前後に見事な
   傷が付いた。損害賠償請求すればよかったな・・・。
トーマスC「それなら行き付けのクリーニング屋に出せばいい。俺の古い親しい友人だから、直ぐに
      直してくれるよ。」
ミスターT「冬までに直しておくか。」
   夏日強い中、春や秋に着るコートを持つ。それ持って指定されたクリーニング店に向かう。
   にしても暑いわ・・・。37度ぐらいはあるんじゃないだろうか・・・。


    東京に戻ってから4ヶ月。あっと言う間に過ぎ去った。この約120日は激動の日々だな。
   俺の人生の中で一番波乱があり感動もあった。そしてこれからも続くのだろう・・・。

    俺なりの生き様は十分刻めている。俺が俺でいられるというのは、実に幸せな事である。
   それも全ては周りがあるからだ。俺1人では何もできない。

    これからも周りを支えていこう。それこそが俺の第2の人生とも言える生き様なのだから。



リュリア「こんにちわぁ!」
    コートの修復とクリーニングを依頼して戻る。その帰りに公園へと足を運んだ。7年間の
   殆どを歩行で動いていたため、動かなくなると身体が怠くなる。適度な運動も必要だ。
   その公園でシュームの娘、リュリアと会った。養子縁組をすればエシェラの妹になるのだが。
   まあそこまで気にする必要はないだろう。
ミスターT「よう、元気かい?」
リュリア「うん〜、元気だよ〜。お兄ちゃんは、肩の方は治ったの〜?」
ミスターT「この通りだよ。」
   そう言うと彼女を右腕で抱きかかえ、負傷していた肩に乗せる。少し違和感があるが、これは
   慣れない刺激に対するものだろう。
リュリア「うわぁ〜い。」
ミスターT「お母さんと一緒じゃないのか?」
リュリア「私だけだよ〜。ここまで1人で来たの〜。」
ミスターT「偉いな。」
リュリア「エヘヘッ。」
   ターリュとミュックといい勝負だが、やはりリュリアの方が幼く感じる。双子の方は年上な
   だけに、しっかりとしているのがよく分かる。
リュリア「ねぇねぇ、エシェラお姉ちゃんがお兄ちゃんの事心配してたよ〜。」
ミスターT「ああ、肩の事か。」
リュリア「後で言っておくね〜、乗っかって暴れても大丈夫だったって〜。」
   変な意味で嫉妬されそうで怖いが、そこは多めに見て欲しいもの。肩に乗りながら大はしゃぎ
   するリュリア、心が洗われるようだ。この小さな天使に感謝しよう。



シューム「すみません、ご迷惑をお掛けしたようで・・・。」
ミスターT「気にしない気にしない、可愛いものですよ。」
    あれからリュリアに散々引っ張られ、背中に背負っていたら寝てしまう。そのままエシェラ
   の自宅へと戻り、心地良く寝ている天使を送りに行った。
   母親の胸の中に移動したリュリア。一瞬起きたが相当眠たそうで、そのまま寝続けてた。
シューム「エシェラちゃんが言う通り、本当に不思議な感じがする。この子、なかなか心を許さない
     のよ。」
ミスターT「変革は変わりたいと思った瞬間から変わります。リュリア君がそう思っているのなら、
      必ず変わっていきますよ。」
シューム「フフッ、そうね。」
   肝っ玉母さんの別の一面を見た気がする。エシェラが言うには、シュームもまた男性に気を
   許さないという事だ。ナツミYUと同じく、ワイルドウーマンの色が濃い。

シューム「ねぇ・・・エシェラちゃんが飽きたら、私と付き合わない?」
ミスターT「な・・何を言い出すんですか・・・。」
シューム「同じ年代だし気が合うのよ。私だったら一生飽きさせない自信があるけど、どう?」
    色気づいた流し目を送り俺を見る。怖ろしいまでの魅力だ、吸い取られそうな感じがする。
   それに返答次第では大変な事になりかねない・・・、実に困った・・・。
ミスターT「・・・一応・・保留という事で・・・。」
シューム「フフッ、期待しちゃうわよ・・・。」
   う〜む・・・今はこうしか言えないだろう。おそらく彼女の胸中に抱く一念は計り知れない。
   俺が彼女の背中を支えられるかどうか、またその資格があるかどうか。今後の俺の厚意次第と
   いう事になるだろうな・・・。


エシェラ「母さぁ〜ん、な〜にやってるのかなぁ〜?」
    シュームとのやり取りを何とか凌いだが、直後凄まじい殺気を感じた。それは俺の背後から
   放たれているものだった。何時の間にか背後にエシェラが、隣にはラフィナもいる。顔を引き
   つらせながら苦笑いをし、物凄い形相で睨んでいる。助かった事には変わりないのだが、この
   シチュエーションは非常に嫌な予感がする。
シューム「エシェラちゃんもラフィナちゃんも、もっと積極的にアタックしないとダメ。これだけの
     魅力ある男性、そうそう現れるものじゃないわ。」
エシェラ「だからといって母さんがアプローチしてどうするのよっ!」
シューム「あら、私もまだまだヤレるわよ。それに彼の方だって随分とご無沙汰じゃないかしら。」
   この美丈夫は恐ろしい事をポンポンと口にする。まるで血に飢えた野獣そのものだ。対する
   エシェラとラフィナは、今の発言で赤面しまくってる。ここが大人と子供の差なんだろうな。
シューム「まあ今のは冗談にせよ、その前のは本当の事よ。若い時にしか青春できないんだから。
     君も躊躇ってないで、2人をしっかり癒してあげなさいな。」
ミスターT「ハハッ・・・。」
   ナツミYUの酔った時の雰囲気と似てる。いや、これは素なのだろうか。でもシュームの言葉
   には一理ある。今その瞬間を大切に、二度と戻ってこないのだから・・・。



    喫茶店へと引き上げる。エシェラとラフィナは食事に誘いたかったらしい。その探索中に
   リュリアを背負った俺を目撃し、こっそり跡を付けて来たようだ。
エシェラ「本当にごめんなさい、母が失礼な事を・・・。」
   恐縮気味に詫びるエシェラ。ワイルドな叔母には参りものだろう。でもどこか嬉しそうにニヤ
   ついているのは気のせいだろうか。ラフィナもどことなく微笑んでいるようにも見える。
ミスターT「リュリア君も大きくなったら、シュームさんのようになりそうで怖い。」
エシェラ「アハハッ、確かに・・・。って、話を逸らさないでよっ!」
ミスターT「わりぃ・・・。」
ラフィナ「私の母もシュームさんのようだったら楽しいのですが。」
エシェラ「どこが楽しいのですかっ!」
   意外な事を喋りだしたラフィナに、エシェラはとにかく慌ててる。身内の事なだけに、その
   度合いは大きくなる一方だ。
ラフィナ「私以上に大人しすぎるのです。最近は私も明るくなったと父に言われますが、母はずっと
     物静かで。」
ミスターT「ふむ、そうか。そういう女性も好みだな。」
ラフィナ「・・・物静かな女性の方が好きなのですか。」
   おいおい、何か勘違いしだしてる。そういった人もいいという凡例を挙げただけで、絶対的に
   好みだとは言っていない。・・・ああ、今の2人は爆発寸前の核爆弾という事か。

ミスターT「まあ何だ、エシェラもラフィナも個性があっていいよ。自分は自分、他人は他人。個性
      がなく全員統一されていたら、これほどつまらない世の中などない。」
エシェラ「それはまあ確かにそうですが・・・。」
    シュームにはシュームの、エシェラやラフィナには2人に合った生き様がある。それを無理
   矢理抑え付ける事はよろしくない。
ミスターT「君達は君達らしく、ありのままの姿で。そんな君達が好きだよ。」
ラフィナ「もうっ・・・。」
エシェラ「お・・煽てたって何もしないわよ・・・。」
   ハハッ、赤くなった。頬を染めながら反論している。だが心中は嬉しさが一杯だろう。そんな
   2人を見ている俺の方も嬉しくなる。

    持ちつ持たれつ、癒し癒されてか。何とも・・・。でも心から感謝する、ありがとう。



    翌日。午前中はどんより曇り空だったが、午後からは晴れてきた。凄まじいまでの蒸し風呂
   状態。今年は例年を上回り猛暑の連続だ。

    昨日エシェラとラフィナが食事に誘ったのは意味があった。それは今日開催される、河川敷
   での花火大会に来て欲しいとの事だ。これには何度か赴いた事があるが、対岸沿いの河川敷の
   方が人が少なくて見やすい。その事を述べると、いい場所があると2人に案内された。



    今いる場所は大企業・三島ジェネラルカンパニーが所有する高層ビル。地元にある駅ビルの
   反対側、丁度勤め先の喫茶店の2ブロック先に位置する。

    地上30階・地下10階という、都心に存在する高層ビルと同じだ。耐震強度を極限にまで
   高めた建築方法で、その技術は世界中からも注目を浴びている。


    しかし近隣の日照時間の問題が出てきそうだが、面白い事に全て計算され尽くしている。
   それに日陰になってしまう場所にはマンション側にミラー板を配置。その先にソーラーパネル
   を置いて対処もしている。

    所謂太陽光発電だが、これでも十分罷り通るほどのレベルだから驚きだ。まあこれだけの
   設備を無償提供してくれた事も、周りの住人が納得できる内容なのだろうから。


    自分達の利益優先ではなく、周りへの配慮を第一をする。これが三島ジェネラルカンパニー
   の運営方針だという。本当に心から脱帽してしまうわ・・・。



ミスターT「・・・これは確かに絶景か。」
ラフィナ「凄いですよね、最初遊びに来た時は驚きました。」
    驚くのはそれだ。世界最大の大企業が所有するマンションに普通に赴けるという事だろう。
   何でこうも簡単に入れたのか不思議でならない。

エシェラ「紹介します。こちらがビルのオーナーの娘で社長令嬢のエリシェさん。」
エリシェ「初めましてミスターT様、三島エリシェと申します。」
    エシェラが紹介するはエリシェ、エシェラと殆ど同じ水色髪の女の子。またラフィナよりも
   長髪で、間違いなくお嬢様に見える。しかし・・・様はないだろ様は・・・。


エリシェ「お話は窺っております。暴走集団と忌み嫌われていた躯屡聖堕の方々を善道へと更生し、
     多大なる社会貢献をした事。これは私達にとっても大変嬉しい限りです。」
    年齢はエシェラよりも1つ年下なのだが、この大人の雰囲気は凄まじすぎる。かといって
   背伸びをしている訳ではなく、素の彼女がそうさせるのだろう。間違いなく猛者だ。
ミスターT「お嬢も財閥の運営に携わっているので?」
エリシェ「いいえ。私は学問に励みながら、今は自らの鍛錬を行っています。実際に運営に携わる
     のは、後数年先の事ですから。」
   なるほど、徹底教育による己の確立か。そうでなければ幼子には厳しすぎる現実だ。それでも
   心は据わっている。これは自発的に動いている証拠だろう。

ラフィナ「エリシェさんのお父様とお母様、凄い優しいですよ。私の両親も助けて頂きました。」
エシェラ「私の両親も生前に助けて貰ったのです。それ以来のお付き合いですよ。」
エリシェ「私達の悲願は、全世界の人々の幸せの確立。そのために大企業を設立し、今に至ります。
     人を助ける事に目標を定め、進んでいく所存です。」
    己の理想とする生き様か。それでいて絶大な力を持つ。これなら悲願は間違いなく達成する
   だろう。色々と問題があるだろうが、心さえ据わっていれば達成できない事はない。

ミスターT「ありがとな、みんなを助けてくれて。」
    礼を述べられるとアタフタしだすエリシェ。どうやら今まで行動はしたが、感謝をされた事
   は全くない様子だ。これだけ努力しているのに外面的感謝をされないとは・・・。
エリシェ「あの・・・その・・・、何と言ったらいいのか・・・。」
ミスターT「こういう場合は笑顔で、ありがとうだよ。」
エリシェ「あ・・はいっ!」
   何だ、しっかりと子供心があるじゃないか。これも両親や周りの環境に影響され、本当の自分
   を押さえ込んでいるのだろう。可哀想に・・・。



エリシェ「買い物に出掛けて参ります。暫くお待ち下さい。」
エシェラ「代わりに行きましょうか?」
エリシェ「いえ、運動不足になってしまいますので。」
    やっぱり女の子だ。言葉は大人言葉が目立つが、行動はまだまだ子供。運動不足という意味
   合いは、動きたいという事になる。
   更には手提げバッグを持参して部屋を出て行く。アレだ、エコバッグによるエコにも貢献して
   いる。どうしてこうも機転が利くのか、2人も見習って欲しいものだ。
エシェラ「何か言いました?」
ミスターT「い・・いや、何も・・・。」
   うわっ、心中の愚痴を鋭く見抜いてきた。流石女性だ、怖ろしく直感が優れている・・・。
   野郎からは考えられないほどの第6感であろう・・・。

    後半へと続く。

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