アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝 〜覆面の風来坊〜
    〜第3部・第8話 決着と決意と2〜
ミスターT「・・・こんなのが人類を滅ぼすのだからな・・・、馬鹿げた話だ・・・。」
    遠隔・直接操作スイッチを完全に切った核弾頭は沈黙した。所詮は人間が扱ってこそ真価を
   発揮するのが物たる所以だ。単体では何の意味もなさない。
ミスターT「ウインドとダークH、これを丁重に解体して海外に報告してくれ。一連の事態は完全に
      終息したと。」
ウインド「了解です。」
ダークH「ありがとうございました。」
爆弾処理班長「後は我々にお任せ下さい。」
   既に爆弾処理班を待機させていたため、ウインドとダークHの号令で核弾頭の撤去作業を行い
   だした。後の事はプロに任せるとしよう。

ミスターT「流石はレディ・スナイパーだわ。」
ディルヴェズLK「普段からの射撃訓練が役立ちましたよ。」
    背中に担ぐスナイパーライフルが勇ましく見えるディルヴェズLK。身内の中でこういった
   スペシャリストがいる事を本当に誇りに思うわ。
リュリア「ディルLKさんは庁内でも最強の狙撃者として謳われていますよ。今までの国内大会や
     世界大会で優勝するぐらいの腕ですので。」
ミスターT「射撃に関して誰も敵わないわな。」
ディルヴェズLK「ですが・・・私の心を射抜けるのは貴方しかいません・・・。」
ミスターT「ハハッ、確かにな・・・。」
   頬を染めながらも語るディルヴェズLK。それに苦笑いを浮かべるリュリア。この2人も俺の
   大切な妻達なのだから。


    核弾頭の撤去作業をしている中、色々な後始末に追われるウインド達。ここはミッション
   スペシャリストに全て任せよう。

    俺は一服しながら葛西臨海公園内を歩き出した。終わったら連絡を入れて貰う確約をし、
   暫しの散歩に更け込んだ。


    呆気なく終わった核弾頭騒動。明日にはメディアに現状を伝え、疎開していた関東近辺の
   人々も帰路に着くだろう。

    お騒がせなジェリヴァ・アビゲイル一味だったが、この疎開もいざ都市部での大規模なテロ
   行為などがあった時の対処法とも取れる。今回の一件も無駄ではなくなりそうだ。



ミスターT「全てに意味がある、か・・・。」
    海辺に近い海岸で、コートを引いて寝転ぶ。海風が実に清々しい。完全な戒厳令とあって、
   対岸に見える羽田空港は全く稼動していない。何時もは航空機などの騒音がしているのだが、
   今は波打ちや木々が風になびく自然な音しか聞こえなかった。
ミスターT「できる限りの事はした、か・・・。」
   何だかんだで俺1人では解決できなかった。ウインド達やウエスト達の尽力があったればこそ
   成し得た勝利とも言える。その勝利の切っ掛けに一役買えた事にこそ意味があるのだろうな。



ウインド「こちらにいらしたのですか。」
    暫く呆然としていると、ウインドとダークHが現れる。携帯による連絡があると言っていた
   のだが、それすらも聞こえないぐらい呆然としていたようだ。
   傍らに座る2人、その2人の手にソッと手を沿える。そしてその手を優しく胸に抱いた。
ミスターT「感謝するよ。お前達の尽力があったればこそ成し得た勝利だ。」
ダークH「それはありませんよ。マスターが矢面立って彼らを説得したからこそ成し得たものです。
     私達は後から動いたに過ぎません。」
ウインド「最後の最後でマスターに頼ってしまった部分は、私達の未熟さが露呈されたとも言えると
     思います。まだまだですよ。」
   恐縮気味に話すウインドとダークH。胸にある2人の手を抱きながら、それぞれの手の甲に
   優しく口づけをした。それに顔を真っ赤にしている両者である。

ミスターT「色々とありがとうな。これからもよろしく頼むよ。」
ウインド「あ・・当たり前です・・・。」
ダークH「このぐらいで・・・終わったと思わないで下さい・・・。」
    優しい厚意をしただけなのに、耳まで赤くしているウインドとダークH。そんな2人が実に
   可愛らしい。また2人に心から感謝できる自分がいる事にも嬉しく感じてしまう。



    遣る瀬無く本店レミセンへと帰宅した。ゼラエルやベロガヅィーブの一件のように、更に
   厳しいものになると踏んでいたからだ。

    店舗内に戻るとシュームが出迎えてくれた。その彼女を優しく抱き寄せ胸に抱く。それに
   慌てだすのだが、俺が思う心の内を感じ取ったのか大人しくなった。


シューム「・・・落ち着いた?」
ミスターT「・・・ああ。」
    何だかんだで死闘だったのだろう。シュームを胸に抱く事で、急激に疲労感が出始める。
   いくら無力化した核弾頭だといっても、目の前には自分達を死に至らしめる最凶の武器が存在
   していたのだから。
ミスターT「こうしている事は事実なのかね。本当は俺自身は既に死んでいて、望んでいた現実が
      走馬灯のように浮かんでいるのかと思えてしまう。」
シューム「凡人からすれば、貴方が赴いた先は死の淵と言えたでしょう。ですが今こうして貴方は
     私を抱いて下さっている。それは紛れもない現実であり事実です。貴方は勝利したのです
     から。」
ミスターT「・・・そうだな。」
   徐に俺を見上げると、そのまま軽く唇を重ねてくるシューム。濃厚な口づけではなく、ただ
   唇を重ねるだけのものだ。

シューム「お疲れ様でした。」
ミスターT「ありがとう、シューム。」
    口づけを終えると労いの言葉を掛けてくる。そのお返しに優しく抱きしめ返した。彼女の
   大きな心に、心から癒される思いである。



    それから数週間後、関東近辺は普段通りの活気に戻った。都市機能が麻痺してからの回復は
   時間が掛かったが、そこも三島ジェネカンと躯屡聖堕チームの尽力により早期回復が図れた。
   これによって、より一層俺達の見方が変わりだしていた。

    今までは何かとあっては財力の横暴だ・元暴走族のやる事だ、などと批判的な声が挙がって
   いた。しかし今回の一件で流れは一変していった。

    インフルエンザ企業間抗争で矢面に立って戦った事をマスコミが大々的に評価した事に、
   改めて三島ジェネカンと躯屡聖堕チームが評価されだしたのだ。


    これにエリシェやラフィナは泣いて喜んでいた。それにアマギHとユリコYもだ。自分達が
   心身共に捧げて尽力を尽くしてきた事を評価されたのだ。この上ない喜びであろう。

    またウエスト達の工作もあり、後始末的な事態は終息している。いくら社会から認められた
   としても、それが100%とは言い切れないのが実状だ。そこを彼らが上手い具合に調整して
   くれていた。

    嫌な役割でもあり行動であったが、汚れ役は任せろを胸を張っているウエスト達。世界中に
   広がっているネットワークの調停者と言えるだろうか。


    しかし・・・あの核弾頭すらもハッキングの応用で操作できるのだから驚きだ。所詮は最凶
   の武器も精密機器の集合体であり、人がいなければただの道具に過ぎないという事か。

    全ては人に掛かっているという事だろう。恐縮ながらも俺達が周りを支えていってこそ、
   間違った方向に進ませないようにできるのだから。

    そんな役割を少しでも担える事に、俺は心から感謝したい。俺という存在も無駄ではないと
   言えるのだから・・・。



ナツミA「決定打を与えたディルLKさんの評価は凄まじいですよ。」
ミツキ「遠距離からの狙撃でアビゲイルを沈黙わぅ。」
    ようやく調理師免許を取得できたナツミAとミツキ。予てから練習していた手料理を実際に
   本店レミセンにて振舞い出している。まだ味付けなどは完璧ではないが、初心にしては十分な
   出来映えだろう。
   その2人が厨房で悪戦苦闘しながら、ディルヴェズLKの事を語っている。例のアビゲイルの
   狙撃が評価され、何と国家勲章を拝受する事になったというのだ。
ミスターT「1つにのめり込んだら徹底的に挑むからなぁ・・・。彼女の長所と言えば長所だが、
      何だか可哀想な気もする。」
ミツキ「そこは桜梅桃李わぅよ。」
ミスターT「フフッ、そうだな。」
   女性としての力をメキメキと着けていくナツミAとミツキ。幼少の頃からの付き合いである
   ウエスト達は驚嘆していた。戦乙女の如く活躍する姿に恐怖すらも感じると言っている程だ。

ナツミA「次は勉学の道に走らないとね。」
ミツキ「通信教育になるわぅが、基礎たる学力は持っていた方がいいわぅ。」
ミスターT「お前達なら不可能という文字は存在しないさ。」
    調理師免許の次は、通信教育による大学合格だという。勉学に完全に疎い自分にはチンプン
   カンプンの世界だが、この2人なら不可能は一切ない。
ミスターT「これからが勝負さ。」
ミツキ「当たり前わぅ!」
ナツミA「寝込んでいた数十年分、一気に巻き返さないとね。」
   う〜む、娘達以上の覇気が輝かしい。力強く美しい才女とはこの事だろう。そんな2人と知り
   合えて、俺は本当に幸せである。


    その後暫くは慌ただしい日々が続いた。ウインドとダークHは一連の騒動をほぼ無血で鎮圧
   させたとあり、ディルヴェズLKと同じように国家勲章を受けるに至った。

    ほぼ無血というのはアビゲイルの負傷だろう。しかし死には至らないため、殆ど無傷に近い
   扱いのようである。それに相手は間違いなく極悪と言える。このぐらいの傷で済むのなら軽傷
   と言えるのだろうな。


    ちなみに俺の事は一切告げるなと語った。恐縮気味にも今回の決定打は俺自身であるが、
   俺自体は裏方の人間でいい。表立って評価されるような事は一切していない。

    ウインド達がほぼ苦肉の策で投じた“悪人心折”であり、本来はあるべき存在ではないの
   だから。

    その分、身内の関係者にスポットを浴びせるように計らって貰った。その影響で大忙しの
   彼らである。特に先に語ったディルヴェズLKやリュリア、エリシェやラフィナ・アマギHや
   ユリコYもしかりである。


    またこの一件で触発されたのかどうか分からないが、娘達がとある行動に出始めた。それに
   薄々は感じていたが、母親達の方は我が子の成長に大喜びの様子である。

    今正に娘達全員が俺の元に訪れ、緊張した面持ちで訳を語っていた。流石は俺の娘としか
   言い様がない内容である。



エリム「・・・どうでしょうか・・・。」
    普段の気丈な姿は一切ない。目の前の娘達はまるで遊びに行くための許可を求めてくるかの
   ような表情に近い。まあ当の本人達は真剣な心構えなので、遊びの許可という例えは娘達には
   失礼極まりないが。
ミスターT「俺が20歳から27歳まで、日本中を飛び回っていたというのは聞いているよね?」
エリア「あ、はい。お母様から何度も聞かされました。その礎があったからこそ、私達が生まれた
    とも仰っています。」
ミスターT「ならば断る理由なんか存在しないよ。今度はお前達が覆面の風来坊として台頭する番
      だと確信している。思いっ切り戦っておいで。」
エリム&エリア「ありがとうございますっ!」
   感極まって抱き付いてくるエリムとエリア。他の娘達もそうしたかったのだろうが、羞恥心の
   部分からか押し留まっている。この双子がいかに純粋に生きているかがよく分かる。

ミスターT「しかし条件がある。」
    大喜びする娘達に付け加えだした。それに一瞬にして凍り付く彼女達。でもこれだけは必ず
   述べねば意味がない。
ミスターT「俺とは違い女性だ、無理無茶は絶対にしない事。でも、できたら俺と同じ7年ぐらいは
      戦ってきて欲しい。この遠征を自身の一生の宝として刻んでくれ。」
エリム「当たり前です。途中で投げ出しては、元祖覆面の風来坊の娘とは言い切れません。」
エリア「私達なりの戦いになってしまいますが、理はお父さんと全く同じです。」
   エリムとエリアのみ決意を高らかに示すが、他の娘達はただ頷くだけであった。この部分は
   エリシェの娘たる血統と言えるのだろうな。流石であろう。
ミスターT「ならもう何も言うまい。テメェの生き様を、実証を掴んでこい。」
エリム&エリア「了解です、師匠っ!」
   この瞬間から親子を通り越して、師弟関係になったのだろう。エリムとエリアが俺の事を師匠
   と叫んでいた。そんな2人を抱き寄せ、優しく頭を撫でてあげた。


    エリムとエリアは三島ジェネカンのアメリカ支社やロシア支社、更にヨーロッパ支社などに
   修行しに行くとの事だ。更にメアディルのご両親が起業したシェヴィーナ財団にもお世話に
   なるという。

    シュリム・シュリナとラフィカ・ラフィヌは再びイギリスへ行くらしい。ナツミAと共に
   赴いた際に学んだ、看護士と介護士の徹底的な修行を積みに赴くのだという。

    シェラとシェナは国内を転々として、マンガ家としての力を着けたいとの事だ。マンガ家と
   しての本拠地は東京が中心との事なのだが、各地で精力的に活躍しているユーザーさんとの
   コミュニケーションを大切にしたいと語っている。

    エシェアとエシェナも国内の保育園や幼稚園を転々としたいと語っている。地元だけでは
   視野が狭くなるとの事で、地方の風習や育児などを大いに学びたいらしい。

    メルテュアとメルテュナも国内の料理店を修行して回りたいとの事だ。地元のレミセンだけ
   では視野が狭くなるのは言うまでもない。

    最後はリュアとリュオだ。何と俺と同じく国内を旅したいと言ってきた。覆面の風来坊たる
   生き様に一番感銘を受けだしている年代なだけに、勉学そっちのけで挑みたいと豪語した。
   これには止めさせたいと思ったが、この双子を止める術はないだろう。


    エシェラ・ラフィナ・エリシェ・シンシア・シューム・メルデュラ・リュリアの母親達は、
   我が子の旅立ちに喜ぶと同時に悲しんでもいた。現に数年前にシュームが娘達がいないため、
   気が気でなくなっていったのが懐かしい記憶だ。

    だがこの修行の旅路も花嫁修業とも言い換えられる。何時かは親元を離れて旅立っていくの
   だから、このぐらいで悄げていては話にならないだろう。

    ようやく父親としての役目ができたと自負している。彼女達の旅立ちを許可するという部分
   では、母親にはできない大役でもあろう。そして彼女達の本当の父親なのだと改めて痛感して
   いる次第だ。


ミスターT「お前は地元に残るのか。」
ヴェアデュラ「私まで行ったら、お父さん絶対悲しんで寝込みますよ。」
ミスターT「こいつめ・・・。」
    悪態つくヴェアデュラの頭を軽くどつく。それに小さく悲鳴を挙げる彼女。しかし俺の事を
   気に掛けている事は痛烈に理解できる。そのまま彼女の頭を優しく撫でた。
ヴェアデュラ「リュアちゃんとリュオちゃんまで修行に出られるのですから、他の12人の妹達の
       面倒をみないといけませんし。」
ミスターT「いずれ12人も旅に出たいとか言い出すだろうなぁ・・・。」
ヴェアデュラ「そりゃあねぇ・・・お父さんの娘ですし。」
ミスターT「だなぁ・・・。」
   先が思い遣られるといった感じに、ヴェアデュラと同時に溜め息を付いた。それを窺い知って
   同時に笑ってしまう。

ヴェアデュラ「正式に躯屡聖堕チームの代表取締役を担う事になりましたので、直に日本中を飛び
       回る事になります。」
ミスターT「アマギHとユリコYのお墨付きだもんな。真の後継者と言えるわ。」
    挙式を数日後に控えているアマギHとユリコY。その後の格闘術大会に焦点を当てている
   妻達は大張り切りでもある。
ヴェアデュラ「でも短期間の代表取締役だと思います。私はウエストさん達に継がせたいと思って
       いますので。」
ミスターT「そうだな。彼らなら第2のアマギHとして君臨できるだろう。」
   先日の核弾頭事変でもウエスト達は裏方の役割を最大限担い切った。それをアマギH達に評価
   され、いずれは自分達の後継者にしたいと思っているようである。その繋ぎ役として、長女の
   ヴェアデュラが抜擢されたのだ。

ヴェアデュラ「孤児院の運営は数年後にはナツミAさんとミツキさんが担う事になるでしょう。私は
       それぞれの場所のオブザーバーになれれば幸いです。」
ミスターT「・・・あの赤ん坊がなぁ・・・。」
    ヴェアデュラの成長振りに感動し、自然と涙が溢れてくる。ヴァルシェヴラームに義父を
   依頼されてから25年が経過した。あの赤ん坊がこのような立派な人物に至るとはな・・・。
ヴェアデュラ「誰が何と言おうが、私はミスターT=ザ・レミニッセンスの実の娘です。声を高らか
       に言い切りますよ。」
ミスターT「ありがとな・・・。」
   ヴェアデュラを抱き寄せ胸に抱いた。それに心から甘えてくれる彼女。本当に大きく成長して
   くれた。心の底から感謝したい。


    娘達の成長に大きな影響を与えられた。俺の生き様である覆面の風来坊を自分達なりに演じ
   たいというものだ。それが14人の娘達の遠征修行だろう。

    何れ後続の12人の娘達も同じように修行に出たいと言い出すに違いない。何たって俺の
   愛娘達なのだから。

    う〜む・・・彼女達の父親でよかったわ・・・。心から感謝したい・・・。

    第3部・第9話へと続く。

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