| 〜第02話 魔神の鎧〜 |
| バニッシュブレイダー 〜見えざる悪魔〜 〜第2話 魔神の鎧〜 (ターウェンの視点) ターウェン「デマかせだったか・・・。」 俺はコクピット内で苦笑した。 先程メールで依頼が舞い込んできた。その内容は遺跡奪回という全く変わった依頼である。 はっきり言って火星進出までしている人類が、何故に遺跡を奪回しなくてはいけないのか。 俺は最初から嫌な予感がしていた。案の定目的地には遺跡どころか、予期せぬ出来事が待ち 構えていた。 レイヴン「そう、貴様を殺せという依頼が本命。」 遺跡の入口らしき場所には、ACが待ち構えていた。紫色のカラーリングをした重装甲機体、 今のブリューウェアの武装からしたら撃破できるかどうかは分からない。 ターウェン「聞かせろ、誰からの差し金だ?」 レイヴン「フォックスという奴からの依頼だ。何でも貴様を大変恨んでいるらしい。」 ターウェン「あいつか・・・。だがおかしいな、奴は俺を殺したがっていた筈。なのに何故自分から 出向かない。」 レイヴン「さあな、そこまでは知らん。おや・・・。」 相手のレイヴンは何かに気付いたらしく、会話を中断する。それは俺にも分かった。何故なら 俺の愛機のコクピットモニターにもう1機の機体らしき点が映し出されていたからだ。その 移動速度からすると・・・もしかしたら。 ルクビュ「はいはいは〜い、私も参戦するわよ〜。」 ルクビュだ。何であいつがここに・・・。だが助かった事には変わりない。俺は彼女も差し金 かと思ったが、猪突猛進の彼女がそんな面倒くさい事に手を貸さないと確信ができた。 レイヴン「増援か、手の込んだ事を。」 ルクビュ「フフ、私と先輩のターウェンを殺れるかしら?」 レイヴン「ほぉ・・・三つ巴か、面白い。」 ルクビュらしい。俺はとんでもない人物に見込まれたものだ。実に先が思いやられる・・・。 だが相手レイヴンは武装を解除すると、俺とルクビュに通信を入れてくる。 レイヴン「やはり相手が悪すぎる、ここは一旦引く事にする。次に会う時は容赦はしない。」 紫色のACはオーバードブーストを発動、凄まじい速度で俺達の前から姿を消した。 ルクビュ「フフッ、ホンと怖くなって逃げ出したくせに。」 ターウェン「ありがとよルクビュ。おかげで助かったぜ。」 ルクビュ「この貸しは高いわよ。」 笑いながらそう話す。まったく、ルクビュの思考は先が読めない。だが助かった事に変わりは なかった。 ルクビュ「ところで、ここに何の用があったの?」 ターウェン「デマかせだ、何もない。」 ルクビュ「でもここの遺跡の地下から微弱ながら、エネルギー波が感じ取れるわよ。」 ターウェン「確かめてみるか?」 ルクビュ「もちろん、ただし報酬の50%ね。」 ターウェン「フッ、分かった。」 俺は先程のレイヴンと対峙する前に、前払いで10万コームを受け取っていた。もしかしたら ルクビュはこの事を知っていたのか、またはメカニック長から聞き出したのか。何にしても 5万コームでルクビュが雇えるんだ、良しとしよう。 そう俺は別の敵がいる事を直感していたのだ。先程のレイヴンはまるでこの事を知っていて、 俺達にここに入れと言わんばかりでいたようである。俺とルクビュは愛機を遺跡内部へ侵入 させる。先頭は俺が進み、殿は彼女がナビゲーションなどを務めるように指示をした。 ルクビュ「ここの様子を見る限りだと、まだ使われているみたい・・・。」 ターウェン「・・・・・。」 人が入った形跡が各所に見られる。人工的に崩壊を防ぐ工夫がされているようだ。だが一体 何の為に・・・。俺達は慎重に愛機を進ませる。 ターウェン「これは・・・。」 俺は最下層となる大きな部屋に出て驚愕した。そこは何かを作っていた後がそのまま残されて いたのだ。この規模からすると、大型MTを製造していたのか。 ルクビュ「何なの・・・ここは・・・。」 ターウェン「気をつけろよルクビュ、嫌な予感がする。」 直後俺のACにレーザーの雨が降り注ぐ。俺は愛機を入口地点まで引かせる。当然後方には トールサンダーがおり、彼女諸共後ろへ強引に下げた。 ルクビュ「いったぁ〜・・・何なのよもうっ!」 ターウェン「それはこっちが知りたい。」 レーダーには何も映っていないが何かがいる。低い地鳴りと共に、何かが進む音が聞こえた。 俺は思い切ってブリューウェアを内部へ突入、右腕主力武器のレーザーライフルを構えた。 遅れてトールサンダーも俺の後方へ進み出る。 ターウェン「・・・こ・これは・・・。」 ルクビュ「ディソーダー?!」 こちらのACの数十倍近い巨大さのディソーダー。なぜディソーダーと分かったかと言うと、 俺のFCSが相手にロックオンできないからだ。 ブリューウェアのヘッドパーツにはバイオセンサーがついていない。俺はそう直感できた。 相手はこちらを敵とみなし、凄まじい攻撃を繰り出してきた。エネルギー弾・グレネード弾・ ミサイルなど、ありとあらゆる攻撃が俺とルクビュを襲う。 ターウェン「散開するぞ、左右から攻撃だ!」 ルクビュ「了解!」 俺は目視でレーザー弾を直撃させる。右肩武器の8連装ミサイルランチャーはロックオンが できないからロックはできず、右腕武器のレーザーライフルと左肩武器のレーザーキャノンが 唯一の武器となる。まあレーザーブレードがあるから無力化する事はないが。 一方ルクビュの方は正確にロックオンして右腕武器を射撃しているのが伺える。そういえば トールサンダーのヘッドパーツはバイオセンサー搭載型だったな。俺のACも搭載型のヘッド パーツにすればよかった。 左右からの2機のACによる猛攻に、さすがの大型ディソーダーも対処ができなかった。次々 に繰り出される攻撃に、6本ある脚部のうち3本が粉々に吹き飛ぶ。半分となった脚部はその 巨大な身体を支える事ができず、大音響と共にその場に転倒した。 俺はブリューウェアに左肩キャノンの発射体勢を取らせると、最大までチャージを開始する。 ターウェン「止めを刺すぞ。奴の胸の部分に火力を集中させてくれ!」 ルクビュ「分かった!」 トールサンダーはこちらが最大チャージを待っているのに気付くと、先にレーザー弾を放ち だす。ほぼ動けない状態の大型ディソーダーは、トールサンダーの電撃のような猛攻に成す 術がない。 そこにレーザーキャノンの最大チャージングが完了し、トールサンダー離脱後に高圧縮された レーザー弾を大型ディソーダーの胸部に放つ。放たれた高圧縮レーザー弾は大型ディソーダー の胸部を貫き、後方の壁に着弾。壁の爆発と共に大型ディソーダーも大爆発を巻き起こし、 粉々に飛散した。 その間地下工場に轟いていた凄まじい爆音や破壊音は、大型ディソーダーの爆発と共に止む。 ルクビュ「ふう〜っ・・・。」 ターウェン「終わったな。」 ルクビュ「それにしてもアレは何だったのよ。」 ターウェン「それは俺も聞きたい。」 俺はブリューウェアをレーザーキャノン発射体制から解除させると、レーダーを見つめる。 これ以上の戦闘が続けば、こちらもやられる可能性が高い。だがレーダーには近付く点が あった。そして内部通信を通して聞き覚えのある声が響く。 レイヴン「ほぉ・・・アレを消すとはな。さすが俺を復讐だてる事だけある。」 先程遺跡入口で会った紫色の重装甲ACだ。そして今の発言から、相手の素性が解かった。 ターウェン「フォックス。」 フォックス「久し振りだな。」 ルクビュ「やっぱ知り合いだったんだ、悪い意味でのね。」 フォックス「女連れとは暢気なものだな。」 ルクビュ「余計なお世話よ。それにさっき遺跡入口で会ったのなら、こっちを覚えていても不思議 じゃないのに。」 ルクビュはフォックスの性格を知らなかったな。俺は奴について簡単に話しだす。 ターウェン「こいつは多重人格。今がフォックス、さっき会った時がリーブリルと成り切っている フォックスだ。」 ルクビュ「なんか厄介そうね。」 フォックス「とにかく、死んでもらおう。」 ルクビュ「ヘヘッ、殺せるかしらね。」 トールサンダーはフォックスのACマッドアーマーに、レーザーライフルを向ける。俺も レーザーライフルをマッドアーマーに向け、緊迫した雰囲気が流れた。 だが再び地響きと共に地下から何かが向かって来る音がする。俺は8連装ミサイルランチャー を解放、全48発のミサイルが辺りへばら撒かれる。その大多数はマッドアーマーに放った。 ターウェン「逃げるぞルクビュ!」 ルクビュ「え・戦わないの?」 疑問ながらもルクビュは俺の後を付いて来る。臨機応変の判断はレイヴンにとって必要不可欠 なもの。ルクビュはさすが歴戦のレイヴンといった所か。 俺とルクビュは急いで遺跡内から脱出した。 ルクビュ「もう追って来ないでしょう・・・。」 ターウェン「いや・・・俺が遺跡から出たのは、戦いやすい場所へ誘い出すためだ。」 直後遺跡は崩壊し、内部からマッドアーマーと先程撃破した大型ディソーダーが現れた。 フォックス「逃げられると思ったのか?」 ターウェン「いや、その逆だ。」 俺はそう話と、ブリューウェアをマッドアーマーに突撃させる。 マッドアーマーの主力兵器は連射が利くマシンガン、そして追尾性能に優れた拡散ミサイルと 破壊力重視の中型ミサイルだ。だが俺のブリューウェアにはミサイル迎撃装置がある。多少の ミサイルの被弾なら大丈夫であろう。むしろ接近戦を挑んだ方が、弾数重視のマシンガンを 使わざろうえない。そうなれば俺の機体でも撃破は可能だ。 ターウェン「ルクビュはディソーダーを撃破してくれ、俺はフォックスを叩く。」 ルクビュ「任せて。」 トールサンダーは大型ディソーダーに突撃していった。遠距離戦より接近戦を挑んだ方が、 彼女にとっては戦いやすいであろう。この時ばかりは猪突猛進の性格が大きく輝いている。 俺はブリューウェアをマッドアーマーと一定距離を保ちながら、旋回を繰り返す。その間に 射撃はするが、エネルギー兵器使用中でのブースターダッシュはジェネレーターに負担を 掛ける。相手の一瞬の隙を見ながら、的確な射撃を繰り返した。 一方のマッドアーマーの方はマシンガンを連射しての弾幕張りだ。甚大な被害ではないが、 数撃ちゃ当たるを繰り返してきては分が悪い。それに相手ACは重装甲、しかも殆ど無傷だ。 俺のブリューウェアはさっきの大型ディソーダーとの戦いでダメージを負っている。一方の ルクビュの方も軽装ACだからかなりの被害が出始めている。このままでは先に彼女の方が やられるだろう。 ・・・まったくもって珍しい。俺が他人の心配をするなど、しかも彼女はいずれ敵になるかも 知れない人物。もっとも俺も人間、そういった感情が出てもおかしくない。むしろ自然な方 ではないか。今の世界がそういった感情を押し殺している、自分さえよければそれでいいと。 俺にはできない、見殺しにする事など・・・。 ルクビュ「しまった・・・。」 突如内部通信を通してルクビュの舌打ち声が聞こえた。俺はトールサンダーの方を見つめる。 その瞬間大型ディソーダーの巨大ビーム砲がコクピットへ狙いを定めていた。あんなのを直撃 したら、今のトールサンダーでは即死だ。 俺はマッドアーマーの攻撃を無視すると、レーザーキャノンの発射体勢に移る。今までの行動 でジェネレーターの容量はまだ半分近くしか回復していないが、俺は全エネルギーをレーザー 弾として大型ディソーダーの頭部へ放つ。放たれたレーザー弾は今まさにトールサンダーへ 大型ビーム砲を発射しようとしていた、大型ディソーダーの頭部に直撃する。頭部はレーザー 弾の着弾で粉々に吹き飛び、大型ディソーダーは沈黙した。 ルクビュ「た・・・助かった・・・。」 安堵の声がコクピット内部のスピーカーから聞こえた。だが俺はマッドアーマーに無防備な 状態を曝け出していた。当然マッドアーマーはこのチャンスに全火力をブリューウェアに集中 させてきた。両肩の拡散ミサイルと中型ミサイルを全弾、そしてマシンガンを連射してくる。 放たれた複数のミサイルは、ブリューウェアのミサイル迎撃装置より多かった。迎撃ミサイル が出尽くすと、残りの夥しいミサイルが俺の機体を襲う。 凄まじい衝撃がブリューウェアを揺さ振った。これらのミサイルは、両肩武器を大破させ頭部 と脚部を破壊。ブリューウェアは地面へ転倒した。 その衝撃で俺はコンソールに両目を強くぶつけ、気が遠くなっていくのを感じる。 ルクビュ「ターウェン!」 フォックス「馬鹿な奴だ、他人を庇うとは。」 内部通信からルクビュの大声が響く。その声で俺は意識を取り戻した。直後両目に凄まじい 激痛が走る、この痛みは尋常じゃない。 フォックス「止めだ、死ね。」 フォックスからの通信、俺は死を直感した。だが直後夥しいミサイルがマッドアーマーを 襲った。俺はヘッドアイが大破したためコンソールから映像が流れてくる事はないが、外から 聞こえてくるミサイル音がそれを直感させた。それに目を開けようとしても激痛が走り、目の 前が真っ黒だ。これは失明しているかもな・・・。 レイヴン「全く・・・私の名前を語るとは最低ねあんた。それと私の可愛い愛機まで真似するとは、 なめんじゃねぇよっ!!!」 この声、リーブリルか。いや・・・女性の声だ。奴は女性なのか・・・それとも・・・。 フォックス「貴様か、リーブリル。」 ルクビュ「え、ちょっと待ってよ。あんたがリーブリルじゃないの?!」 リーブリル「冗談でしょ、私がリーブリル。こいつはフォックスというケチな男よ。」 フォックス「・・・これは分が悪い。今度は本当に撤退しよう。さらばだターウェン。」 マッドアーマーの偽物はオーバードブーストを発動。その場から離脱していった。 俺は本当のリーブリルによって救われた。ルクビュを救い、リーブリルに救われるとは。だが ルクビュを助けた代償が両目とはな。皮肉なものだ・・・。 暫くするとACの歩行音が聞こえてきた。この足軽はトールサンダーか。歩行音が止むと、 機体を揺さぶるような激しい金属音がする。どうやら電気系統が停止したブリューウェアの コクピットハッチを無理矢理抉じ開けてるようだ。トールサンダーにより半壊したコクピット ハッチが開き、外の陽光が俺を照らす。だが俺には光が分からなかった。 どうやら先ほどの推測は正しかった。今の衝撃で両目を失明したようだ。 ルクビュ「大丈夫ターウェン?!」 ターウェン「お前なのかルクビュ?」 俺はコクピットハッチ側に手を差し伸べる。全く光が分からない。俺の右手をルクビュが握り しめる。この手触りは彼女のようだ。 ルクビュ「しっかりして!」 ターウェン「今の衝撃で・・・両目がやられたらしい。光が全く分からない。」 ルクビュ「そんな・・・。」 リーブリル「大丈夫?」 ルクビュの後ろの方から声がした。おそらくリーブリル本人だろう。肉声がするという事は、 彼女は外に出ているという事か。 ターウェン「さっきはありがとよ。おかげで助かったぜ・・・。」 リーブリル「そんな状態でよく言えるわよ。」 ルクビュ「とにかく病院へ。リーブリル、彼のACをガレージまで運んで。」 リーブリル「分かったわ。ターウェンには借りがあるからね。」 俺はルクビュに担がれると、トールサンダーのコクピットへ乗せられた。 その直後俺は安心をしたんだろうな、完全に意識が遠のいていった。だがルクビュの俺の手を 握る暖かみだけは、気絶してもなお感じる事ができた。 この先俺はどうなるんだろう・・・。 |
| 〜キャラクター&機体投稿者〜 トーン殿 ラーク殿 |
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