〜第08話 因縁の出会い〜
     バニッシュブレイダー 〜見えざる悪魔〜
    〜第8話 因縁の出会い〜
   (クスィーの視点)
   もうどのぐらいだろうか、犬猿の仲とも言えるレイヴンを探して旅を繰り返しているのは。
   俺はクスィー。愛機のライトニングショットを駆る姿は、黒い閃光と言われている。俺が探し
   続けているレイヴン、エグザイル。何でもフォックスというレイヴンに依頼を受け、4人もの
   レイヴンを瞬殺したと言われている。実にあいつらしい。
   以前は共闘などをして生活資金を稼いでいたが、とある大喧嘩でチームは解散。今はお互い
   目の敵となっている。だが奴の腕は凄まじく、俺以上の実力者でもある。
   しかし孤独を好む彼に仲間はいない。強くなるために孤独を選んでしまった可哀想な奴だ。
ネヴァ「今回の依頼はこれよ。」
   今俺はネヴァ=リンシアというやり手女性レイヴンに依頼を受けた。彼女は何でも企業を裏
   から操れるほどの力を持つ者らしい。今時珍しいがそういったスキルを持つ者は確実に生きて
   いける。俺やエグザイルとは違い、未来を約束されていた。
ネヴァ「ターゲットは最近力を持ちすぎているグングニル社。何でも伝説のレイヴンが専属に護衛を
    しているというわ。そこの戦力を調査してきてほしい。」
クスィー「もし迎撃してきた場合は?」
ネヴァ「伝説のレイヴンよ。どれほどかは知らないけど、触らぬ神に祟りなし。あとは貴方次第。」
クスィー「了解した。」
   俺は社長室から出ると、大型ガレージへと向かう。何の因がら伝説のレイヴンがいる企業を
   視察しなければいけないんだろうな。まあ要らぬ詮索はなし。とにかく依頼を果たすまでだ。
   ガレージに到着すると、俺は愛機ライトニングショットに乗り込む。そして一路ネヴァが指定
   した、グングニル社へと向かった。

   (エグザイルの視点)
   フォックスの野郎、何故にグングニル社を守れという依頼なんか出したんだ。全く馬鹿のやる
   事は理解できん。しかし・・・金になるのなら、俺は喜んで攻めてくる奴をぶっ殺す。
エグザイル「・・・妙な気分だ。なにか懐かしい気もするが・・・。」
   今朝起床してから、ずっとこの調子だ。まるで過去にあった奴が現れる前触れのようだ。
レイヴン「そんなに気になるのか?」
エグザイル「まあな。」
   フォックスはご丁寧に連れをご用意してくれた。かつて実在したレイヴンの名を使っている、
   エーアストという奴だ。機体名も同じく、アンファングMK−Vと謳っている。腕前は俺と
   互角に近い、何となく分かる。まあ、俺の行動を邪魔しなければ問題はない。

エーアスト「・・・来たぞ。」
   何十分ぐらい経っただろうか。エーアストが内部通信を通して敵の接近の促した。荒野を走り
   抜けながら進む漆黒のAC・・・。いや・・・まさかあれは・・・。
エグザイル「・・・ハハッ、妙な気分な訳だ。因縁の相手が来やがった。」
クスィー「その声は・・・エグザイルかっ!」
   内部通信から懐かしい声が流れてくる。俺は先方の話を相手に向けて通達した。当然の如く、
   奴から返ってきた。今日はついている、奴と戦えるのだからな。
   俺とエーアストは崖の上からクスィーを見下ろす。クスィーは一定距離を保ったまま、同じく
   こちらを見上げている。
エグザイル「エーアスト、手を出すなよ。奴とは俺が戦う。他にイレギュラーが現れたら、そっちを
      やってくれ。」
エーアスト「了解した。」
   俺は愛機のブースターを咆哮させ、崖から降りた。当然武装は解除のままだ。奴もそうして
   いる。野郎とは正々堂々とやり合いたいしな。
   再び一定距離を保ち、俺とクスィーは対峙した。
クスィー「元気そうだな。」
エグザイル「お前もな。」
クスィー「グングニル社に雇われたのか?」
エグザイル「まあそんなところだ。だが依頼主はむかつく野郎でな、別に守らなくてもいい。しかし
      お前とは戦わせてもらうぞ。」
クスィー「俺はグングニル社を視察しに来た。お前と戦いに来た訳じゃない。だが・・・こうなった
     以上は、戦闘は引けないな。」
エグザイル「当たり前だ。」
   心が躍っている。今日の日を夢見て俺は戦い続けてきた。相手の生死はどうでもいい、用は
   奴を倒せればそれでいい。
   しかし・・・現実はそうは甘くはなかった。

   (エーアストの視点)
   突如警告のアラームが鳴り響いた。レーダーを見ると2・30体の機影が映し出されている。
   エグザイルとクスィーの対峙を面白そうに見つめていたのが不覚だった。
エーアスト「エグザイルとクスィーとやら、レーダーに反応だ。」
   俺は2人の間に愛機を割り込ませ、対決を制した。今対決などしている場合ではない。逆に
   やられる可能性がある。
クスィー「お前達の増援か?」
エグザイル「馬鹿言うな。俺もエーアストもそんな事はしていない。第一フォックスが2人でいいと
      言っていたんだ。連れてくる筈がないだろう。」
フォックス「そうだな。増援は頼んでいない。俺が貴様らを消す事にしたんだよ。」
   フォックスの声が内部スピーカーから流れてくる。まさかフォックスは最初からこのつもりで
   俺達を派遣したのか。
エーアスト「フォックス、どういうつもりだっ!」
フォックス「どうもこうもない。貴様らを消すのが俺の仕事。」
エグザイル「仕事とぬかしたな、じゃあクライアントは誰だ?」
フォックス「ネヴァという女だ。グングニルという企業は存在しない。貴様らイレギュラーを排除
      するためにわざわざ仕込んだ罠なんだよ。」
クスィー「排除と言ったな。俺達のどこがイレギュラーなんだ?」
フォックス「力を持ち過ぎている点だ。ターウェンもルクビュも全てそうだ。」
エーアスト「ハスラー・ワンにでもなった気だな。」
   正しくその通りかも知れない。増援で駆け付けたフォックス以外のお供のAC、これは一時期
   復活が噂された伝説のACナインボールに酷使している。だがオリジナルではなく、奴なりの
   アレンジといったところか。それに見知らぬACも混ざっている。どうやらそれ以外のお供も
   連れてきたようだ。

   (クスィーの視点)
フォックス「行けナインボール・クロウスナイパー、奴らを殺せ!!!」
   簡易版ナインボールと量産ACのクロウスナイパーが一斉に動き出した。目標は俺達3人の
   排除だろう。
クスィー「エグザイル・エーアスト、ここは共闘といこうじゃないか。」
エーアスト「了解した。降りかかる火の粉は払い除ける。」
エグザイル「しゃあねぇ〜な・・・、今は休戦にしてやる。」
   それなりの腕を持つレイヴンなら、お互いの身の危険を察知した場合共闘と取る場合が多い。
   つまりはお互い手駒を増やそうと相手を利用するのだ。まあ生きていればそれ自体が強さの
   証であり、今の世界唯一の真実でもある。こういった行動は当たり前であろう。
エグザイル「っしゃぁ!」
   オーバードブーストの火力を纏い、エグザイルオブアリーナがナインボールに突撃する。目の
   前まで接近すると、最強のレーザーブレードを発生させコアユニットを貫く。突然の奴の行動
   にナインボールとクロウスナイパーは対処が仕切れていない。おそらくはどれも人工知能を
   搭載された、単なる駒にしかすぎないようだ。
エーアスト「数で押してくる。散開はするな!」
クスィー「心得ている。」
   以外に戦術分析などが上手いエーアスト。奴はリーダーには打って付けかも知れない。まあ
   俺とエグザイルはただ単に敵をなぎ倒していく方が気が楽だ。
   俺はブースターダッシュを繰り返し、クロウスナイパーの間をかいくぐる。そしてレーザー
   ブレードの斬撃や、グレネードライフルの射撃で破壊していった。
   一方のエグザイルは相変わらずナインボールばかりを攻めている。まあ奴ほどの腕を持って
   すれば、人工知能など簡単に撃破できるだろう。
   エーアストは戦術を練りながら、俺達のサポートに回ってくれている。ここでも思ったが、
   やはり奴は戦略者だ。そして以外にも面倒見がいい。敵にした場合、かなりの厄介な奴になる
   だろう。

   残り数体になった時、突如エグザイルの機体に散弾が降り注ぐ。俺はレーダーを見つめると、
   急速に接近する機影があった。そちらの方へ向こうとするエグザイルだが、ACが思うように
   動いていない。
レイヴン「イレギュラー要素は排除する。」
クスィー「エグザイル気をつけろ、奴のリニアキャノンは特殊弾型だ。」
   敵さんは行動を押さえるために、弾丸にガムのような粘着物を使用していたようだ。それが
   AC表面に付着して、思うように行動ができないのだろう。
エグザイル「分かってる!」
   だが機体はビクともしない。これは俺の読みが甘かったのかも知れない・・・。
レイヴン「消えてもらおう。」
   敵レイヴンがエグザイルの機体に隣接し、レーザーブレードを繰り出そうとしている。俺は
   すぐさま愛機を突撃させ、エグザイルの援護に回った。しかしその直後とんでもない事態が
   起こった。
   今まさに斬撃を繰り出そうとしている敵AC、そこに体当たりを繰り出してきた奴がいた。
   緑色の重装甲ACが敵をなぎ倒し、エグザイルオブアリーナを持ち上げ離脱していく。そこに
   間隔空けずにグレネード弾が着弾する。後方から接近してきた軽装2足ACが放ったものだ。

   (エグザイルの視点)
   信じられん。ここまで単細胞な奴がいるとは。しかし助かった事に変わりはない。それに、
   後続のACは・・・。
ルクビュ「危なかったねエグザイル。」
エグザイル「ルクビュか?」
バジョン「全く・・・俺に似て猪突猛進だなあんたは。しかしその男意気、気に入ったぜっ!」
ルクビュ「はいはい、バジョンは熱血漢の男だからね。」
   バジョン=グラヴァリスだと・・・、まさかアイズレイクターの彼がなぜここに・・・。
   子供を養うので引退したと聞いていたが、まさか奴に助けられるとはな。
レイヴン「来たか・・・。」
ルクビュ「?!・・・その声は・・・、ま・・まさか・・・。」
エグザイル「知り合いなのか?」
マリア「・・・ターウェンさんなのですか?!」
   後方から見知らぬACが接近、一同に聞こえるよう内部通信を使用して話した。
   ターウェン、確かルクビュが殺した相方だった気が・・・。生きていたのか・・・。
フォックス「ターウェンだと思うか。そいつはありとあらゆる人物の肉声を真似し、姿も変装して
      相手を騙すレイヴン。その名もドッペルゲンガーだ。」
ルクビュ「・・・・・。」
   ルクビュが全く話さなくなる。おそらくは相手の事を思っているに違いない。それは間違え
   れば彼女が敵になりかねないという事だ。しかしそんな考えを、バジョンは全く違う答えで
   返した。
バジョン「あ〜あ・・・知らねぇぞ・・・。」
   バジョンがそう話した直後、ルクビュはオーバードブーストを発動。凄まじい火力を纏い、
   ドッペルゲンガーへ突撃していく。
   同じく併行して、後から駆け付けたフロート型ACが援護射撃を行う。ブースターダッシュを
   共に両肩のリニアキャノンを放ち、こちらは実弾でドッペルゲンガーの機体を足止めした。
ルクビュ「・・・・・。」
   ルクビュは機体をドッペルゲンガーのACに隣接させると、ゼロ距離射撃にてグレネード
   ライフルを放つ。放たれたグレネード弾は相手ACのコアユニットに直撃、第1装甲を完全に
   破壊した。そこに間隔空けずにレーザーブレードが突き刺された。
   そう・・・何の迷いもなく行動に出たようである。直後奴のACは大爆発を巻き起こし飛散
   した。
   爆炎が止んだ中には、ルクビュのACが悠然と立ち続けている。
ルクビュ「・・・・・彼は帰ってこない。貴様等みたいなクズに彼を語る資格などないっ!」
   突如怒濤の発言を叫んだルクビュ。その殺気ある発言に、俺は珍しく心の底から驚いた。
フォックス「やはりコピーでは無駄だったか。まあいい、イレギュラーが増えた事だ。この辺りで
      撤退するとしよう。」
   その後フォックスの野郎の声がしなくなった。近くにACがいた形跡はなく、今の声は外部
   通信を通して流れていたのだろうか。
   とにかく言える事は、不意の来訪者によってこの場を切り抜けたと言う事だな。

   (マリアの視点)
ネヴァ「ですから・・・貴方にそんな依頼は出していないって言っているのですよ。」
   私達は再びネヴァさんのいるオフィスへと向かいました。今回の一件でエグザイルさん・
   エーアストさん・クスィーさんはかなり怒っています。
   まあ自分達をイレギュラーとして排除しようとしたのですから、怒るのは当たり前ですね。
クスィー「しかし私は貴方からグングニル社を視察するように依頼を受けたのですよ。」
ルクビュ「待ったクスィーさん。さっきのドッペルの能力、覚えてる?」
クスィー「・・・声や姿を真似するという事、ですよね。」
バジョン「つまりはアレがネヴァ嬢に成り代わっていたという事だ。」
   納得したように3人は大人しくなりました。フォックスが連れている者は異常者ばかりです。
   それを知っている彼らだからこそ、直ぐに納得できたのでしょう。
イレイザー「我々は裏から企業を操る事はしている。しかしそれは少しでも地上や地下、そして火星
      を復興させるために行っている。それを理解して頂きたい。」
マリア「最終的な目的は、やはりそこなのですね。」
ネヴァ「そうです。多少なりとも汚い行動を取っても、今後のためです。我々は恥じてはいません。
    むしろ誇りに思っています。」
クスィー「・・・了解しました。」
   その後ネヴァさんは3人に100000コームを提供。彼女なりの詫びのようです。
   でもさすがですね、簡単に300000コームもの大金を用意できるのは。しかしその資金は
   何らかの裏がありそうです。ネヴァ=リンシア、正しく策女ですね。
   ・・・そういえばターウェンさんが生前、「借金は必ず返す」といっていました。もう叶う
   事ではありませんが、私はもう一度ターウェンさんにお会いしたい。頑なな心に光明をさして
   くれたあの人に。グレイファイターと一部のレイヴンから避けられていた私を、しっかり
   生きろと話して下された。
   ・・・フフッ、ルクビュさんが好かれるわけですね。私も何となく気になっているようです。

   (バジョンの視点)
   ネヴァ嬢のオフィスから出発した俺様達は、アリーナのガレージへと向かった。あそこが一番
   気が楽だし、色々な情報が入手できる。エーアストの奴は報酬を貰うと、とっとと退散して
   しまった。まあレイヴンらしい行動と言えば合っているが。
エグザイル「とんだ収入だったな。」
クスィー「まあな。」
   アリーナのガレージにて機体修理を待っている俺様達。その最中、エグザイルとクスィーが
   明るく語り合っている。因縁や犬猿の仲だとかぬかしているが、結構仲がいいじゃないか。
   まあ犬猿といっても、おそらくライバルみたいなものだろう。ライバル視をしているからこそ
   助け合えるのだろうな。
ルクビュ「これからどうするの?」
エグザイル「他人と手を組むのは性に合わんし、面倒な事は大嫌いだ。しかし・・・あの陰険野郎の
      フォックスをこの手でぶちのめさないと気が済まん。それに野郎はあんたを狙っている
      ようだしな。あんたといればフォックスが湧いて出てくるだろう。しばらくの間、一緒
      に行動する。」
ルクビュ「珍しい〜、あんたがそう言うなんて。」
エグザイル「まあな・・・、戯れ言の一つだ。」
ルクビュ「でもね〜・・・私がフォックスを寄せ付ける餌ってのが気に食わない。」
エグザイル「・・・言い過ぎた、すまない。」
   二児の父親である俺様には分かる。どういった経歴でなったかまでは知らないが、エグザイル
   の奴ルクビュに惚れてるな。
   まあそれもそうだろう、嬢ちゃんは類を見ないほどの美女。大抵の野郎はクラクラッとくる
   のが当たり前だ。俺様も家内がいなかったら口説いているな。
クスィー「俺は別ルートから奴らの足を掴んでみる。ここまで馬鹿にされたんじゃあ、何か仕返しを
     しないと気が済まない。」
ルクビュ「マリアさんは?」
マリア「孤児院の事もありますから戻ります。また何かありましたらご連絡下さい。」
バジョン「しかし・・・あのグレイファイターと会えるなんてな。一時期噂された、女レイヴンで
     孤児となった子供の面倒を見ている変わり者と。」
   俺様がそう話すと、マリア嬢は不愉快そうな表情を浮かべる。ある意味馬鹿にしている発言に
   聞こえなくもない。しかしその後俺様の率直な意見を述べた。
バジョン「しかし俺様は賛同するぜ。俺様も二児の父親だしな。この前家内が死んじまってから、
     子供の事をよく考えるようになった。今は信頼ある娘に預けてあるから安心だがな。」
マリア「そうだったのですか・・・。」
   案の定マリアは表情を和らげる。当然だ、彼女を貶す発言はしていない。そこに至るまでの
   通過発言だからな。
バジョン「子供を産めなくなってしまった女性もいるという事、忘れるなよマリア嬢。」
マリア「はい。」
   (マリアの視点)
   その後バジョンさんはガレージを後にしました。何でもアリーナに出場するのが日課だとか。
   それにしても、子供を産めなくなった女性・・・。もしかしたらバジョンさんのお子さんを
   預かり育てている女性、もしかしたらそういった経歴があるのかも知れません。
メカニック「クスィーさん・マリアさん、メンテ終了しやしたぜ。」
クスィー「了解した。」
マリア「では私も戻ります。またお会いしましょう。」
   私とクスィーさんはガレージを後にしました。ルクビュさんとエグザイルさんは、これから
   フォックスを探しに行くとの事です。
   でもフォックスも何故にここまで敵を作るのでしょうか。そこまでして何の得があるのか。
   私には理解できません。いや・・・理解したくない。
   ・・・ターウェンさん、貴方ならどうしますか。最後までフォックスを追いますか・・・。
〜キャラクター&機体投稿者〜
クスィー殿 ナパーム殿 フォルテ殿 トーン殿 渋谷無双殿 パペットマン殿 ナグツァート殿

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