| 〜第01話 何かを掴む〜 |
| フラッシュバスター 〜閃光の矢〜 〜第1話 何かを掴む〜 (イシュタルの視点) あたいはイシュタル。雷神と言われ、アリーナのレイヴンからは恐れられている。でも私は その名前が気に入らない。まるであたいを避けているかのような言い方に聞こえる。 普通の私生活では何でもないんだがね・・・。 あたいがレイヴンになったのは今から5年前、ちょうど14の時だ。よく覚えてはいないが、 何でも風の剣士に助けられたそうだ。あの伝説のレイヴンがあたいを助けてくれるなんて。 当然レイヴンになった切っ掛けは彼。しかし超えなければいけない壁でもある。 愛機のライトニングホワイト。あたいがこう名付けたのはいずれ対戦するであろう風の剣士に 威圧を込めてだ。風とくれば相反するのは雷。誰が決めたんだが分からないが、彼と対戦でき るのであれば喜んでトールと名乗ろう。 メカニック「後は30分後です。」 イシュタル「了解した。」 先ほどあたいのACをご丁寧に分解していった輩がいた。そこまでする奴が普通いるかね。 まったく・・・ムシャクシャする・・・。 レイヴン「あの〜・・・。」 イシュタル「何だいっ!」 不意に声を掛けてくる者がいた。しかし今のあたいに話しかけてくる人物はある意味無謀だ。 腸が煮えくり返る思いで、その怒りを話しかけてきた人物にぶつけた。相手は激怒の発言に 驚き、その場に尻餅をついてしまう。 イシュタル「あ・・・わりぃ・・・。」 あたいは相手に手を差しのべ、その場から立たせてあげる。今の怒濤の叫びに驚いた相手は、 今だこちらを怖そうな表情で見つめている。 イシュタル「すまない。今さっきある事でムシャクシャしていて・・・。」 レイヴン「いえ・・・いいのです。いきなり話しかけられれば、誰だって今のような対応を取ります から。」 相手は女性レイヴンか。その身なりを見れば直ぐに分かる。パイロットスーツを身に纏い、 腰にはホルスターを下げている。 イシュタル「あたいはイシュタル=ハルヴァーム。あんたは?」 レイヴン「キュミア=ヴォーリルムと言います。」 あたいはその場で話も何だと思い、彼女を連れて近くのベンチに腰をかける。その一連の行動 を見ると、座り方から何からお嬢様風のキュミア。しかしあたいはおっさんみたいにドッカリ と座る。自分で言うのも何だが・・・、全くもって女らしさがないね。 (キュミアの視点) 不思議な方ですね。私の死んだ母とそっくりです。私は生まれた時からこのような性格では なかったようです。イシュタルさんと同じ悪い性格だったようでした。時が経つに連れてその 性格は丸みを帯びだし、今ではお嬢様と言われるほどにまでなりました。まあ自分がそれを 望んで行ったわけではないのですが。 イシュタル「それで、あたいに用とは?」 キュミア「はい。ウイングマンの依頼をお願い致します。」 私は詳しいミッション内容をイシュタルさんに聞かせました。 「地上輸送路警護」、今回私が受けた依頼です。一定時間置きに出没する所属不明のMTを 全て撃破して欲しいというものです。以外と簡単そうに思えますが、クライアントから驚く べき発言が加えられたのでした。 イシュタル「敵勢力にACらしき機体が2体・・・か。」 キュミア「はい。私一人で済ませようと思ったのですが、相手のレイヴンはかなりの手練れのよう です。依頼を受けた後、誰か一緒に戦ってくれるレイヴンを探していたのですが。」 イシュタル「その相手が私だったという訳か。」 断りの姿勢は見られないですが、どこか渋り気味の様子なイシュタルさん。私は間隔空けずに その事を問い質してみました。 キュミア「なにかご不満があるのですか?」 イシュタル「え、あ・・そういう意味じゃないわよ。別に勢力が隠されているかと思ったんだけど。 考え過ぎかな。」 キュミア「と言いますと?」 イシュタル「一定時間置きに出没する所属不明MT。それらを護衛するAC2機。となると、他に リーダー的存在の相手がいてもおかしくはないかと思ったのよ。」 キュミア「つまりは・・・束ねる存在、と言う事ですか?」 イシュタル「そうね。」 凄い・・・。あの一瞬でここまで考えていたとは。私はイシュタルさんを疑う事しか考えられ なかった。・・・実に恥ずかしいですね。 イシュタル「了解キュミア、一緒にぶちのめしましょう。」 キュミア「ありがとうございます!」 あっさりウイングマンの依頼が取れた自分でした。しかしこの出会いが長いお付き合いになる とは思いもしませんでした。 (イシュタルの視点) あたいとキュミアは早速作戦会議をした。ACが2機もいてなおかつ、手練れであればそれ なりの対処をした方がいい。人間死んでしまったらなんにもならないんだから・・・。 レイヴン「ちょっとそこのお2人さん、何か困っているのか?」 不意に話しかける人物がいた。あたいはそういった不意の行動には凄く敏感で、その後の応対 は凄まじい行動を取る。ものの数秒でホルスターから銃を引き抜くと、相手の顔に向ける。 当然相手は驚く。こうでもしないと腸が煮えくり返りそうだからだ。 イシュタル「何か用?」 レイヴン「う・・い・いや・・・、困ってそうだったから・・・話しかけたんだ・・・。」 イシュタル「今度からは気をつけな。寛大じゃなかったら、引き金を引いていたかもよ。」 レイヴン「き・・肝に銘じとくよ・・・。」 イシュタル「了解。」 あたいは拳銃を下ろすとホルスターへと戻した。今の一連の行動を見ていたキュミアも相手と 同様に驚いており、唖然とした表情であたいを見つめる。 イシュタル「それで、何のご用かしら?」 レイヴン「まずは・・自己紹介だな。俺はアルタイル。」 キュミア「キュミア=ヴォーリルムと申します。こちらはイシュタル=ハルヴァームさん、今回私の ウイングマンになって頂いた方です。」 イシュタル「よろしく。」 (アルタイルの視点) 本当に焦った。まさか出会い頭に拳銃を突きつけてくるとは・・・。しかし俺も馬鹿だよな。 いきなり話しかければ誰だって驚き良からぬ行動に走る。イシュタルの行動はある意味正当 防衛であり、俺は撃たれてもおかしくない立場だった。 その後キュミアが依頼内容を述べてきた。その内容を聞いた時、無意識に心の底から喜んだ。 俺はどちらかというとテロリストや良からぬ輩を排除する側になりたいと思っている。しかし 実際は逆の立場になりやすいのが実情だった。なりたくもない破壊者になり、無差別破壊を 繰り返した。それ以降からミッションに出撃しなくなった。アリーナならそういった事はない からな。 アルタイル「了解した。俺でできる事があれば何でも言ってくれ。」 イシュタル「やけに感際だってない?」 アルタイル「破壊や殺戮といった依頼じゃなかったのが嬉しい。実際にはそういった感情は必要ない と思うが。」 キュミア「優しいのですね、アルタイルさんは。」 アルタイル「フッ、よせやい。優しくなんかない。逆に非情と言われ続けたからな。」 イシュタル「あんたなら信用できそうね。」 (イシュタルの視点) 直感した。アルタイルは歓喜を求めているのだと。その歓喜自体がどのような概念を持って いるかは分からないと思っていたが、今の発言を聞いたら悪人じゃない。外面はクールに 決めているが、内面は熱い心を持っている。いや・・・求めているのかも知れない。 アルタイル「それで、ミッション開始時間は何時なんだ?」 キュミア「あと2時間ぐらいです。今から現地に向かえば丁度間に合うぐらいでしょうか。」 イシュタル「しかし・・・作戦開始時間が正確すぎる気がするんだがね・・・。」 アルタイル「気にしない気にしない。何かあったらその時で対処すればいいさ。」 さすがヒールを演じていただけの事はあるわ。先の事を今考えるよりは、後に起きた場合に のみ対処すればいい。アルタイルの考え方は実に現実的だ。 私達3人はガレージへと向かい、愛機に搭乗。その後作戦指定区域まで向かっていった。 (キュミアの視点) どれぐらい進んだでしょうか。辺りはかつて起こった戦場の爪痕が数多くあり、それらはただ 無造作にそのままの形で放置されている。AC・MTのパーツであろう破片、建築物の残骸 など。 3機のACがブースターダッシュにて進む最中、前方から明かりが見えだしました。おそらく 敵側のものでしょう。 アルタイル「作戦はどうするんだい?」 イシュタル「先にMT部隊を破壊した方が後々楽だろうね。護衛のAC2機とリーダーACが出現 したら、MT部隊とは別の場所に誘い出した方がいい。こちらの方が不利になる。」 アルタイル「了解。」 キュミア「では行きましょう。」 私達はいつでも攻撃できるよう武装をセットし、そのまま相手先へ向かっていきました。実を 言うと、私は今回が初陣でした。正直言って心から怖いです。しかしここまで来てしまったら 戦うしかないでしょう。 テロリスト1「敵襲だ・・・。」 (イシュタルの視点) 敵側が仲間側に通信を入れる前に、あたいは愛機ライトニングホワイトのブレード攻撃で破壊 する。キュミアとアルタイルも次々とMTを破壊していった。だが今思ったが、2人の機体 には近接戦闘兵器のレーザーブレードが装備されていない。その代わりイクシードオービット が装備されている。決め手となる兵器があまりなく、長期戦になった場合はこちら側が不利に なりかねない。 アルタイル「スクータムC型だ。シールドがあるためかなりのダメージを与えないと破壊できない。 密着して破壊した方が効率が良さそうだ。」 キュミア「了解です。」 イシュタル「2人共、背後に回られた時はイクシードを使いな。長期戦だからといって出し惜しみ すると、とんでもない事になるからな。」 アルタイル「心得ているぜ!」 ブースターダッシュ時の姿勢から両肩兵器のリニアキャノンを構えながら敵目掛けて放つ。 彼は強化人間だね。こういったイレギュラー的行動を行うのはそれしかない。だがこちらが 断然有利になる事に変わりはない。放たれたレーザー弾は光の矢となり、密集するスクータム C3体を一気に破壊した。 キュミア「アルタイルさん、強力兵器の多用は禁物です。敵ACがいる事を忘れないで下さい。」 アルタイル「数発ならいいだろ。こう敵が多くちゃあ・・・使わざろうえない。」 今までのテロリストとは違う。こいつらは連携プレイを行ってくる。リーダーか誰かにしこ たま鍛え上げられたようだ。しかし相手はMT、ACには敵わないのが当たり前だ。私達は 慎重に1機ずつ相手を倒していく。 レイヴン1「邪魔をするな!」 突如怒濤の叫びが聞こえ、あたいの機体に夥しいミサイルが飛来。不意の攻撃だったため、 放たれたミサイルの大多数を受けてしまった。衝撃で左肩のプラズマキャノンがジョイント ごともげ落ち、勢いよく地面へと突き刺さる。 アルタイル「貴様らが護衛のレイヴンか。」 レイヴン2「だったら何なんだ。」 キュミア「倒させてもらいます。」 レイヴン2「貴様らに何ができる、逆に返り討ちにしてやるよっ!」 アルタイル「やってみなっ!」 アルタイルの機体オリハルコン・サードはその場に跳躍し、残り少ない両肩のリニアキャノン を放つ。しかし相手は見切っているかの如く回避し、エクステンションの連動ミサイルと両肩 の垂直発射ミサイルを立て続けに放つ。ちょうど上空にいたアルタイルは、それらミサイルを 受けてしまい失速。勢いよく地面へと激突した。その衝撃で両肩のリニアキャノンが地面へと ぶつかり、砲身が完全に曲がってしまった。これではたとえ残弾が残っていても、とても発射 できそうではない。 レイヴン1「相手をしっかり見定めな。今のは明らかに無謀だ。」 アルタイル「ヘッ、だろうな。」 レイヴン2「止めだ!」 もう1機のACがアルタイルに止めを刺そうと接近する。だがその前後に使えなくなった両肩 のリニアキャノンを投棄し、すぐ隣にあるあたいのプラズマキャノンを装備した。その手際の 良さは凄まじく、一連の動作を慣れている事がよく分かった。この時あたいは直感した。彼は これを想定した行動を取ったのだと。相手の装備を見極め、どういった攻撃を繰り出すのかを 知っていたのだ。いや未来予想の可能性もあるが、この瞬時の手際の良さは凄いものがある。 装備したプラズマキャノンをチャージを待たずして放ち、接近するACを迎撃した。距離が 近かったため、放たれたプラズマ弾は相手のヘッドパーツを吹き飛ばす。 レイヴン2「な・・・なにっ?!」 アルタイル「その言葉、そっくり返す。見極めてなかったのは貴様らの方だ。」 レイヴン2「ク・・・クソッ・・・。」 リーダー「撤退だ、2人共戻れ。」 突如女性の声が聞こえる。その声からしてかなりの据わった人物らしく、全く動ぜず発言を してきた。 レイヴン2「し・・・しかし・・・。」 リーダー「今はここでやられるわけにはいかない。所詮奴らは手駒に過ぎない。放っておけ。」 レイヴン1「了解。」 ほぼ無傷のACが大破したACを誘導し、その場から去っていく。あたい達はこれ以上深追い する事を止め、去っていくのを見送った。 リーダー「貴様、何という?」 イシュタル「イシュタル=ハルヴァームよ。あんたこそ誰?」 リーダー「レミアス=バラシュイヴ。いずれ会う事になるだろう。」 その後レミアスの声が聞こえなくなり、辺りは静寂に包まれた。一面にはスクータムCの 残骸が散乱しており、本題のテロリストは壊滅していた。しかし根元であるレミアス達は 逃げてしまい、いずれ相見える事になるだろう。 キュミア「上手かったですね、装備交換。」 アルタイル「勝つためならどんな手段も取らないと、卑怯な事以外は。」 イシュタル「レイヴンの鏡よあんたは。」 (キュミアの視点) ガレージに戻った私達は、クライアントに現状を報告しました。敵リーダーを取り逃した事に 関しては関与せず、とにかくテロリスト集団を撃破した事だけを褒めてくれました。所詮、 私達は企業の手駒に過ぎません。こういった事で些細なトラブルを起こすのは無駄な行為。 報酬をナーヴからの通信で受け取ると、すぐに連絡を打ち切りました。 キュミア「お2人はこれからどうなされるのですか?」 アルタイル「俺は戦場へ戻る。今の戦いで何か掴めた気がする。もう一度端から見直すとしよう。」 キュミア「イシュタルさんは?」 イシュタル「さっき再びウイングマンの依頼が入った。すぐにそれをこなすよ。」 キュミア「また何かありましたら、よろしくお願いします。」 アルタイル「了解、じゃあな。」 アルタイルさんは修復を終えた愛機に乗り込み、ガレージを後にしました。イシュタルさんも 同じく修復した愛機に乗り込み、次の依頼へと向かわれました。私は2人を見送ると、愛機と 共にアリーナへと向かいました。アルタイルさんの発言と同じく、私も何かを掴めた様子。 それを確認するべく、アリーナへと出場します。お2人とは再び出会いそうです。 |
| 〜キャラクター&機体投稿者〜 キッドさん |
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