〜第01話 辛い過去と罠〜
     ホワイトナイツ 〜白の騎士〜
    〜第1話 辛い過去と罠〜
   (サーリュの視点)
    目の前にあるコードジャックを私の後頭部に刺す。そして徐にデータを閲覧しだした。

    私はサーリュ=ミレヴ。
   幼少の頃、住んでいたシェルターがテロリストに襲撃。重傷を負った私はそれ以来光を失う。
   強化人間手術を施してもらい、可能な限りの視力を取り戻そうとした。

    だが・・・戻らなかった。義眼という方法もあったが、私はこの傷を残したいと思ってる。
   それは・・・あの白と緑のカラーリングをした軽装2脚ACに借りがあるからだ。

    ドールマスター、私の光を奪った憎い敵。あの時シェルターに襲撃をしたのは、他ならぬ奴
   自身だった。私は決して許さない・・・私から光を奪った人形使いを・・・。

技術士「調子はどうだい?」
サーリュ「まあまあね。」
    お抱え技術士、マイレフ=コスム。私の目となって尽くしてくれていて、私が心を許す唯一
   の人物。マネージャーも行ってくれており、非常に大助かりである。
    私はコードジャックによりデータを閲覧すると、それを外す。今しがた依頼が入り、内容文
   に目を通した。
    「襲撃者排除」。ここから北に数時間進んだ場所に無法地帯があるらしい。そこに出没する
   レイヴンを排除して欲しいとの事。その相手だが・・・人形使いの噂もある。
    私は有無を言わずに依頼を受けた。時は来たのだ、復讐の時が。
サーリュ「じゃあ行ってくるわね。」
マイレフ「気を付けてな。」
    私はその場から徐に立ち、近くにあるヘルメットを被る。
   このヘルメットは電気信号を用いて脳に直接その場の画像を送る画期的な物だ。今の私の目と
   なり、大いにサポートしてくれる。
    ガレージに向かうと私の愛機、マスターアックスが出迎えてくれた。赤のカラーリングの
   その機体は、人形使いとは正反対の機体構成。つまりはゴリ押しで攻めるつもりだ。
    タラップを登りACに搭乗。既に遠隔操作にてジェネレーター類を起動していたため、直ぐ
   に行動ができる。
   特殊なヘルメット形状のバイパスを頭に接続すると、全ての電気系統が動き出した。これに
   よって私はACと一体化ができる。まあできるのは視覚のみであるが。
    私は赤い騎士と共に、憎むべき敵がいる場所まで向かっていった。

   (オフェルの視点)
    俺はオフェル=トスク。
   今しがたレイヴンから緊急の依頼が舞い込んできた。クライアントはドールマスター。何でも
   盲目の女性を助けてくれとの事。
   何とその女性は盲目ながらレイヴンをやっているから驚きだ。是非一度会ってみたいものだ。

    俺は愛機クルフォイラーを動かし、目的の場所まで向かった。
   その最中クライアントであるドールマスターと合流、共にサーリュという盲目レイヴンが出現
   するらしい場所まで向かう。
オフェル「何だって赤の他人のあんたが、他のレイヴンを構うんだ?」
ドールマスター「会えば分かる。」
    殆ど無口でぶっきらぼう、そういった印象が好ましい。ドールマスター、不思議な男だ。
   俺がレイヴンになったのは彼に助けられた事が発端。かなりのやり手だとしか言えなかった。
   孤児シェルターを襲う集団のMTを簡単に撃破してしまったのだから。命の恩人の彼には借り
   がある。俺をレイヴンに勧めてくれたのも彼だしな。

ドールマスター「来たぞ。」
    目的地について数時間後、彼のACに装備されている長距離レーダーが機影を捉える。
   こちらが護衛しろと言われた、サーリュの駆るマスターアックスだろう。一応武装を展開し、
   有事に備える。
サーリュ「・・・久し振りだ、人形使い。」
   これが女性の声か。とてもそうは聞こえない。今の彼女はまるで復讐に駆られているようだ。
   復讐・・・、ドールマスターを見て・・・。まさか・・・。
ドールマスター「元気そうで何よりだ。」
サーリュ「当たり前だ。貴様を殺す事を夢見て今日まで生きてきた。私から光を奪い人生を壊し、
     絶望を与えてくれた。・・・許さない、絶対に許さないっ!」
   とりあえずこれからの戦闘が始まる前に、俺は彼女に事の真相を聞き出した。
オフェル「ちょっと待てよサーリュさん。本当に彼があんたの光を奪ったのか?」
サーリュ「・・・誰だ貴様は、邪魔をすれば一緒に殺すぞ。」
   いきり立っているな。まあ仇と思っている者が目の前にいるのだ、それはそれで仕方がない事
   だろう。だが俺は別の面で頭に来た。
オフェル「質問に答えろ馬鹿野郎が。教わらなかったか、人の話は最後まで聞けと。」
サーリュ「私の目的は人形使いを殺す事だけだ。それ以外はどうでもいい。」
オフェル「もしかしたらあんたは誤解している、だがら聞いているんだ。」
サーリュ「・・・何だと、それはどういう意味だ?!」
    俺はサーリュの素性をドールマスターから聞いた時、俺と同じ環境下で育った事を知った。
   つまり孤児シェルターを襲ったMT部隊を倒したACは、彼女の光を奪っていないという事に
   なるかも知れなかった。

    自分が覚えている事の一部始終を彼女に話す。サーリュは真剣に聞き入っている。
サーリュ「・・・となると・・・人形使いは私達を助けてくれたと?」
オフェル「ああ、そうなるな。俺は彼が助けてくれた時の事を鮮明に覚えている。そしてその中で
     目から血を流して助けを求めていた女の子も、僅かながらだが覚えている。」
サーリュ「・・・それが私だというのですか?」
オフェル「孤児シェルター番号、CSIE−22128。あんたがいたシェルター番号だろ?」
サーリュ「・・・ああ、合っている。」
オフェル「あんたは勘違いをしていたんだよ。ドールマスターは俺達を助けてくれた命の恩人。憎い
     敵じゃない。敵はMT部隊を統括していた、マイレフ=コスムという陰険な野郎だ。」
   俺の発言を聞いたサーリュは驚きの声をあげた。どうやら彼女はマイレフと接触があったと
   いう事になる。
    俺はマイレフを倒すためにレイヴンになったとも言っていいだろう。奴こそが俺達を殺そう
   と企てた、真の憎き敵なのだから。
サーリュ「そ・・・そんな・・・マイレフが・・・。」
ドールマスター「お前のパートナー、マイレフ=コスム。奴はあの時MT部隊を統括し、無差別テロ
        を行った。私はそれを阻止するべく、奴らを追っていた。私の知人も、彼によって
        友人を亡くしている。私にとって奴は、倒さなければいけない敵だ。」
サーリュ「そ・・・そんな・・・。」
   驚愕するサーリュ。経緯はどうであれ、彼女とマイレフは知り合いと考えていいだろう。

    直後複数の小型ロケット弾が飛来。俺達の前の地面を破壊する。真実を知ったサーリュ、
   また突然の事態に完全に動転している。
   俺は彼女の側まで愛機を動かすと、攻撃を放った相手の方へ向く。
マイレフ「オールスター勢揃いだな。」
   憎き敵の声が響き、4脚のACが進みこちらに近づいてくる。野郎の愛機、ヴィンチャーだ。
ドールマスター「マイレフ・・・。」
サーリュ「マイレフ、本当なの・・・。私を騙していたの?!」
マイレフ「だから何だってんだ。貴様をここまで育てた恩を忘れたわけではあるまいな。」
オフェル「・・・どこまでも腐った奴だ。貴様が奪ったのは俺達の明るい未来だ。それに俺はとも
     かく、サーリュは光を奪われた。これがどれほどの苦しみだったか・・・貴様には絶対に
     理解できまい!」
マイレフ「当たり前だ。貴様は害虫を殺す事があるだろう。その殺した害虫の数を覚えているのか。
     覚えてはいまい。貴様らもそれに当てはまる。害虫なんだよ、ウジ虫どもが。」
   怒りの限界に来たのか、ドールマスターが愛機のレーザーライフルを射撃。放たれたレーザー
   弾はヴィンチャーの機体へ着弾する。
   しかし直前回避を行ったらしく、致命傷といえる攻撃でも軽傷で済んでいた。
ドールマスター「・・・交わす言葉は要らない。要は害虫の貴様を消せばそれで終わる。」
マイレフ「おっと、今はまだ戦う訳にはいかない。いずれ直接相手をしてやろう。」
   そそくさにその場から去っていくマイレフ。俺達はあえて追わなかった。
    奴は性根が腐った陰険野郎だが、レイヴンの腕は確かだ。それにアリーナでトップランクに
   位置するのが奴自身である。悔しいが今は我慢するしかない。

   (ドールマスターの視点)
    その後、私のガレージに2人を招いた。マイレフの事だ、こちらをマークしているだろう。
   それに今のサーリュには落ち着く場所が必要だ。今までの現実とギャップが激しすぎて、混乱
   を起こしているのが分かる。
サーリュ「・・・・・。」
    黙ったまま何も話さないサーリュ。愛機から降りた時、彼女は見るからに異様なヘルメット
   を着用していた。そのヘルメットを外した時、私達は愕然とした。
    目の部分が両方とも塞がれており、完全に眼球がない事が分かった。あったとしても普通の
   人間のとは違い、機能はしてないだろう。
   しかし彼女の行動は松葉杖などを全く使用しないで動いている。長年盲目で暮らしていたため
   だろうか、そういった生活に慣れてしまったのであろう。
サーリュ「・・・私は・・・これからどうしたらいいのでしょうか。」
オフェル「決まってらぁ、マイレフをぶっ潰す。」
サーリュ「・・・ですが・・・。」
   オフェルが決意新たに語る。真の元凶が分かった以上、それを目標にするのは当たり前だ。
   しかしサーリュはどこか決断が鈍っている。おそらく私の事を気にしているのだろう。
ドールマスター「私の事は気にするな。今お前が生きている事が一番幸せだ。大変だが精一杯生きる
        んだ。」
サーリュ「・・・ごめんなさい、・・・ありがとう・・ありがとう・・・。」
   涙は見られないが、声が潤んでいる。おそらく彼女は盲目になって以来、久し振りに泣いた
   のであろう。光を奪われた日から感動するという事を体験していなかったようだ。

オフェル「サーリュさん、今度は俺があんたの目になる。」
サーリュ「・・・私は1人で十分です。」
オフェル「あんたには姉がいただろ、レーナ=ミレヴという姉が。」
サーリュ「ど・・・どうしてそれを・・・。」
    驚いた表情をするサーリュ。眼球がないため驚きの表情は幾分違和感があるが、それでも
   雰囲気がそれを物語っていた。
オフェル「・・・彼女は俺を庇って死んだんだ。MTの銃弾の薬莢が俺にぶつかろうとした時、身を
     挺して守ってくれた。薬莢はミーナさんの後頭部に当たり即死だった。」
サーリュ「そ・・そんな・・・姉は・・・死んだのですか・・・。マイレフは姉はドールマスター
     さんに連れ去られたと言っていました・・・。」
オフェル「・・・あの野郎、自分が殺したも同じなのに・・・。」
   オフェルはサーリュの隣に座り、その小さな手を握りしめる。彼女の手は傷だらけであった。
   おそらくはあの時に付いた傷であろう。
オフェル「守らせて下さい。レーナさんが自分を守ったように、今度は俺があんたを守る。この命は
     レーナさんがいなかったらないものなんだからな。」
サーリュ「オフェルさん・・・。」
   徐に小さな手でオフェルの顔を触れるサーリュ。彼女なりの感謝の意なのであろう。
ドールマスター「暫くはここを使え。私がいる限りはマイレフは近づけないだろう。」
サーリュ「・・・もし・・もし・・・来た場合は?」
   どうやらマイレフに裏切られた形が余程効いたのだろう。不安が声に色濃く現れていた。
ドールマスター「オフェルが守ってくれる。それでも苦しい場合は、ここにメールを送れ。内容は
        助けてくれと書くんだ。」
    私も彼に助けられた事があった。かつてナインボールがイレギュラーを抹消しに来た時、
   共に戦ったレイヴン・・・風の剣士。
   それに風の剣士の分身とも言える風の女傑。彼らが動けば、難なく退ける事ができるだろう。
    しかしそれは奥の手にしろと、2人に強く話した。
   常識では考えられないが、何でも2人は大破壊以前の人間らしい。彼らが表だって行動すれば
   ナインボールなどの目標となる。それに関わった人物もマークされる。
   いわば彼らに助けを呼ぶ事は、敵にマークされるという事になる。諸刃の剣、これが一番当て
   はまるだろう。

    その後私は2人を残し行動を開始した。目的はマイレフの奴を追う事だ。俺は俺なりに奴を
   倒さなければ気が済まない。2人には悪いが、見つけ次第殺す。それが今の俺の目的だ。
〜キャラクター&機体投稿者〜
パペットマンさん

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

戻る